柿の葉日記

主にテレビドラマ「あばれはっちゃく」について語る個人ブログです。国際放映、テレビ朝日とは一切関係がありません。

引っ越し完了

やっと

住んでいたアパートの取り壊しが決まり、立ち退きを言われ引っ越し先を探して、およそ半年。

ようやく引っ越しが完了しました。

新居はとても狭い物件になりましたが、なんとか立ち退き予定ギリギリで引っ越しが出来て良かったです。

それまでは、取り壊される前に引っ越しできるのか不安でしたが、今はホッとしています。

それから、郵便局への転送届、転居届やら銀行や運転免許の住所更新等の手続きをして、せせこましく飛び回っていました。

他にネットのアマゾン、楽天などの住所変更にも追われていました。

もろもろの事務手続きも終わって、ようやく安心して年越しが出来る状態になってきました。

年越しの前にクリスマスがありますね。

なんだか、今年は世界は新型コロナに振り回され、私は立ち退き要請、引っ越しなどがあり個人的にも目まぐるしく生活環境が変わりました。

今年は常に何かに追われているような一年でした。

狭いなりに

新居はかなり狭く、備え付けのコンロに当たるのが卓上のIHクッキングヒーターなので、台所からリビングに移動可能。

冬にはリビングに卓上コンロを持って来て鍋をするのに最適だなって思います。

っていうか、台所もリビングも猫の額ほどの狭さなので、工夫して狭い部屋を有効利用していかないといけなくなりました。

なんとか、それなりに、寝れる場所とDVDが見られる場所、こうしてブログが更新できる環境は整いましたので、おいおい『男!あばれはっちゃく』の視聴感想も復活していこうなかって思います。

とはいえ、年末。

今度は年の瀬に追われ、再開は年明けになるかもしれません。

でも、今年も後2週間ですが、出来る時間が確保出来たら、不定期に感想記事を書いているかもしれません。

とりあえずは、引っ越しが片付いたご報告でした。

 

赤ひげ3 最終回感想

 

赤ひげ

最終回だけ見ました。

部屋探しで忙しく、また、現在はテレビ視聴をする習慣が殆どなく、チェック不足でした。

『赤ひげ2』のおよねの代わりに、つぐみ(優希美青さん)がいて、また、赤ひげは誤解されて憎まれているのが分かると、相手のことを思っていたり、自分の感情や事情を話さない(話せない・相手を思って)赤ひげ先生の不器用さを感じて、見ながら赤ひげの不器用さは相変わらずだなって感じました。

およねがつぐみに変わった以外は前回と見慣れた小石川のメンバーだったので、相変わらずというか、お久しぶりという印象でした。

自己満足

相手を思って身を引いたというのが、今回の話で大きなキーワードのように思いました。つぐみの母にしても、赤ひげにしても、今回の話を動かすきっかけになったゲストのお絹にしてもです。

だからこそなんでしょうか、勝手だなって感じるもののつぐみの言葉は心にきました。

それが、最後の方で赤ひげのつぐみへの謝罪の言葉に入っていて、相手の為を思っての行動って結局は自己満足なんだなって思って。

ただ、身を引いた相手の感情を思いやるということも必要だなってのがあって、どちらも人の心って想像することは出来ても、本当の感情や気持ちって相手に聞かない限り分からないじゃないですか。

聞いても、はぐらかしたり、誤魔化したり、本音と違うことを答えたりして、本当のことって当事者以外には分からない。

それを自分の主観や経験だけで、相手の立場や状況に思いを馳せることなく、自分の感情優先で考えてしまうと、どちらも自己満足、自分勝手で我儘な見方や考え方しか出来なくなってしまうのではないかって思いました。

想像力、相手を思いやること、相手の立場に思いを馳せる事って、とても難しくて、それが見当違いや的外れになってしまうから、誤解やすれ違いが起きてしまう。

そこに人間ドラマが生まれるのだろうけど、なんか、こうか細く心優しい人達が傷つけあって悲しむ姿というのは、見ていて辛いものがありますね。

だからこそ、誤解がとけたり、和解出来た場面が印象に残る、そんな感じがします。

過去について話す場面が多く、回想シーンが多かった印象がありました。

全体的に暗くおとなしめな印象があったかな。

途中まではその回想シーンが多かったのがちょっと不満で、その回想シーンの時代がメインの赤ひげの若い頃の時代の『赤ひげ』が見たかったなって気持ちもあったんですが、お絹がきてから後の展開は、この今の赤ひげの時の話だから良かったのかなって思えたりしました。

似た立場

とても静かで淡々としていて、あまり多くは語らないけれども、態度や雰囲気で鬱屈とした寂しさとか報われなさを出していたつぐみは、結構、感情を出していたおよねとは違う態度ではあったものの、似たような感じを受けて、それがつぐみが前回のおよねの立場にいたからなのか分かりませんが、そんな感じを受けたのは、赤ひげに対して信頼をしていいのか、憎んでいいのか迷いがおよねにもつぐみにもあったからかなって思いました。

私は『赤ひげ2』から見ているので、一番最初は知らないのですが、『赤ひげ』シリーズは、およねやつぐみのような立場の人がきて、赤ひげという人間を信頼と不信の中で見つめ、それを通して保本達が医師として人として成長していく物語なのかなって思いました。

また、弱い立場の人達を通して、貧困や人や親と子の関係を見つめ直す話でもあり、なんだか切なく悲しくなって、人はいつの時代も必死に生きてきたんだってことを知り、こう自分も頑張ろうって思えます。

描かれる時代は江戸時代だけども、そういう人の営みや感情、人間関係は現代に通じるからこそ、少し悲しく寂しく、切なく、共感出来るのでしょうね。

父ちゃんの名声

どこで

『男!あばれはっちゃく』15話に登場した伊奈勝平が父ちゃんの名前を間違える場面。

「長治(ちょうじ)」と「ちゅうじ」と間違える場面なんですが、特に伊奈勝平は父ちゃんの名前の漢字、表記、文字を見ている場面ってないんですよね。

邦彦の父親の佐藤部長と女性社員の会話のやり取りを聞いて父ちゃんの知り合いだと話しだしている。

単に聞き間違いかなって思って見ても、佐藤部長は父ちゃんのフルネームを出していないし、確か「桜間君」と呼んでいるので、「長治(ちょうじ)」と「ちゅうじ」と聞き間違えるタイミングってないんですよね。

もしかして父ちゃんは有名人?

「桜間」と聞いて、父ちゃんの名前を間違ったとはいえ出してきた伊奈勝平は間違えて覚えていただけで、「桜間長治」という人物を噂では知っていたのではないかって思ったんですね。

「桜間長治」という名の評判の良い大工が存在しているって知っていて、どこかでその名前の表記を見ていて、「桜間ちょうじ」と間違えて覚えていたと考えられます。

父ちゃんは、佐藤部長が引き抜いた存在です。つまりヘッドハンティングされた人材。

群馬の大工を東京の会社の部長が引き抜いてくるということは、その界隈で父ちゃんは名の知れた大工だということ。

おそらく「群馬の大工の桜間長治」の名は業界で轟いていて、伊奈勝平もダイクノンを作る際にその名を耳にしたり、目にしたことがあって、この「桜間長治」という名のブランドの高さを知っていて利用したのではないかって思うんです。

父ちゃんは腕のいい大工

父ちゃんが大工であるというのは、原作からの設定ですが、ドラマは少しずつ扱いが違っています。初代『俺はあばれはっちゃく』では、父ちゃんはてるほ曰く、「半分サラリーマン、半分大工」という変な設定。大工でありながら、駅前スーパー株式会社に勤めているサラリーマン。スーパーの中の内装などを手掛けています。こういうのを手掛ける大工さんを内装大工、造作大工などと呼ぶそうです。

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初代の父ちゃんは駅前スーパー株式会社の社内に店内の内装を手掛ける部署があった。2代目の父ちゃんの会社は『ちとせ美工(株)』は、内装、外装、デパートのディスプレイ、施工、デザインを行う建設会社、工務店であることから、会社員で大工であっても、初代の駅前スーパーに勤めていながら大工よりも不自然ではない印象になりました。

3代目『熱血あばれはっちゃく』の父ちゃんは大工は大工でも宮大工で、宮大工というと神社やお寺などを建てる、補修する大工で、また伝統的な昔からの技術を使うようなので、微妙に初代や2代目の父ちゃんが持っていた技能とは違う技能や知識がより必要なのかなって思ったりしました。

初代から父ちゃんが腕のいい大工だというのは、長太郎の自慢でそれを裏付ける話もあって(『俺はあばれはっちゃく』37話「父ちゃん社長だ」脚本・安藤豊弘さん、山際永三監督)、2代目になると佐藤部長からの引き抜きや伊奈勝平が間違っていたとはいえ、父ちゃんの名前を知っていてそれに乗っかるだけの信頼度があるということが分かると、いかに父ちゃんが優れた大工、名の知れた大工だってことが分かって、それが視聴者に浸透していったんだなって感じました。

3代目の宮大工になると、そこに伝統が入ってきて凄みを感じます。

父ちゃんが大工設定なのは、4代目『痛快あばれはっちゃく』までで、5代目『逆転あばれはっちゃく』の父ちゃんの職業は、動物園の飼育員に変わります。

最終作・5代目でダイクノン

父ちゃんは大工という印象が強いだけに、5代目で父ちゃんの職業が変わったのや、呼び方が「父ちゃん」から「父さん」になったのは、かなり印象が変わりましたね。

演じられているのは同じ東野英心さんなのに、これまでの父ちゃんの印象も多少残っているのに不思議な感覚でした。

私は5代目はDVD化されてから見ているので、シリーズの中で一番印象が薄く、また、父ちゃんの職業も大工のイメージが強いので、飼育員の父ちゃんの印象がないのですが、5代目でとうとう、ダイクノンになってしまったんだなって思うと、全然関係がないのに、2代目の15話のダイクノンが予言のように見えてしまう、思えてしまうってのも面白い見方をしたなって思ったりもします。

決まる

 

やっと

引っ越し先が決まり安堵している柿の葉です。ほっとして、『男!あばれはっちゃく』の感想記事を再開しました。

記事の形式

また、形式は変えていくかもしれません。それから、感想記事では書ききれない、書いた後で気づいた点についてのツッコミとか疑問とかは別記事で小ネタのように書いていこうかなって思っています。

感想記事に追記でもいいと思っいたこともあって、誤字脱字直しやら、何回か読み直すと意味が通じにくい部分や、言い回しを変えたりするついでにしてたんですが、どうも、記事が無駄に長くなるので、別記事にした方がいいかなって思いました。

特に決まりもない、個人の趣味の感想ブログや考察、妄想ブログなので、流動的に変化していくと思います。

あくまで私の感想だったり、作品や出演者、スタッフに関して調べたことから、いろいろと関連付けて、ああだ、こうだと書いているので、見当違いなことを書くこともあるかもしれませんが、そんなとこも含めて、こんな見方をしている人間もいるんだな、自分とは違うけどとか、うん、そこだけは同意とかっていうのも含めて、作品を楽しむ参考になっていたらいいなって思っています。

興味が広がったら楽しい

私が原作者の『あばれはっちゃく』以外の作品や、出演者の他の出演作品、スタッフが関わった作品を出来る範囲で紹介しているのは、『あばれはっちゃく』に関わった人達が『あばれはっちゃく』の世界だけの人ではないことを知って、その人達の関連性や他の作品で見せる別の顔を知っていって、より『あばれはっちゃく』をより楽しめているので、その楽しみをこのブログを読んでくださる人にも体験してもらえたら嬉しいなっていう思いがあります。

当然、同時代に別作品、別番組で活躍しているのを知っていて、同じように関連付けて楽しんでいる人がいて、私の知らないことを教えてもらったりして楽しくて面白いと感じています。出演者だけでなく、プロデューサー、監督や脚本家、制作会社や放送局に関して調べてその人脈を知っていくと、人間関係の繋がりが見えて、その繋がりの縁が作品に集結していったのかという思いを馳せることも出来て深い楽しみの入り口に来た気がします。

気長に

引っ越し先が決まった後も、引っ越しの日程やら他にもやらないといけないことがあるので、更新は不定期で連続で更新できる日があれば、何日か、何週間か開く日もありますが、気長にお付き合い願えれば嬉しいです。

もうすぐ12月。新型コロナ禍の中、冬がやってきますが、体に気をつけて新型コロナにもインフルエンザにもその他の事故や病気にも気をつけてお過ごしください。

では、また。

『男!あばれはっちゃく』15話「何でも切るゾ」感想

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『男!あばれはっちゃく』15話より

1980年6月28日放送・脚本・市川靖さん・松生秀二監督

疑惑があるのにお人好しな人達

今回は初っ端から怪しい雰囲気が漂っていた話。もう、既に人の良すぎるいつもの人達が騙されるんじゃないか、詐欺にあうのではないかというのが漂っていました。

父ちゃんが大阪に出張中に父ちゃんの知り合いだという伊奈勝平という人物が登場して、特許申請中の大工道具ダイクノンを売りにきます。

それにしても父ちゃん(大工)のいない間に「ダイクノン」大工いらずの意味のある道具を売りにくる奴が出てくるとは、車に書かれた文字「大工いらず」の文字も父ちゃん不要って言ってるみたいで嫌でした。

この伊奈勝平という人、最初から父ちゃんの名前を出してきたのではなく、父ちゃんの会社に売りに来た時に、邦彦の父親と女子社員の会話を聞いて、父ちゃんの知り合いだと言ってくるんです。

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『男!あばれはっちゃく』15話より

でも、この時に父ちゃんの名前を「ちゅうじ」って間違えているんですよね。

あれ?父ちゃんの名前って「ちゅうじ」じゃなくて、「長治(ちょうじ)」じゃないの?って思うんですけども、邦彦の父親の佐藤部長がそこを咎めないですよ。

だから、あれ?父ちゃんの名前って「長治」と書いて「ちゅうじ」って読むのが正しかったのって混乱しちゃいました。オープニングで父ちゃんの名前はちゃんと「長治」ってあるんですが、読み仮名がある訳ではないですからね。

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『男!あばれはっちゃく』オープニングより

それでも、前回でお祖父ちゃんが「ちょうじ君」って父ちゃんのことを呼んでいるし、これまでもドラマを見ていたら分かる事なんで、佐藤部長の対応に惑わされるものの、父ちゃんの知り合いと言いながら、この伊奈勝平という人は怪しいなって感じる訳です。

それに、佐藤部長はこの伊奈勝平を桜間家に連れて行くんですけど、母ちゃんの反応も悪い。どうやら母ちゃんは伊奈勝平を知らない様子。それでも、母ちゃんは自分が知らない父ちゃんの仕事の知り合いだと思っちゃう。

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『男!あばれはっちゃく』15話より

この佐藤部長が伊奈勝平を連れてきた少し前に、ドンペイの散歩から帰って来た長太郎が縁側を壊しています。信一郎に咎められて、長太郎は父ちゃんの大工道具を持ち出して修理を始めていて、そこに伊奈勝平がきてダイクノンを使って縁側を直してしまいます。

連れてきた佐藤部長は仕事があるからと既に帰っているんですね。もう、佐藤部長は伊奈勝平を桜間家に連れてきただけ。会社でいろいろと伊奈勝平の話を聞いて、信用できる人物だと佐藤部長はニコニコと話していたけれども、なんかこう人が良すぎないかって思ったし、そもそも父ちゃんの名前を間違えているのに、なんで信用しているのって思ってしまった。

もしかして、佐藤部長はものすごいうっかりさんなのではないか、と思ったりして。しかし、世の中には佐藤部長を上回るお人よしな人達が存在していた!それが桜間家。

なんで、縁側を直して父ちゃんの知り合いだからと言うだけで、面識のなかった伊奈勝平を家に泊めるの?しかも父ちゃんの席に座らせるって、それはちょっとどうなのよって思いました。

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『男!あばれはっちゃく』15話より

この後に出張先の父ちゃんから電話がかかってきます。で、父ちゃんが大阪にいるっていうのを出すのに使われたのが、受話器から聞こえてくる『大阪で生まれた女』。

『大阪で生まれた女』は1979年にショーケンが出した歌ですよね。特に大阪を代表する風景が出てくるでもなく、父ちゃんのいる居酒屋のような場所が出てくるだけでした。

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『男!あばれはっちゃく』15話より

で、父ちゃんからの電話でこの伊奈勝平の正体が分かるかなって思ったら、店内BGMが大きすぎて会話がまともに成立せず、伊奈勝平の正体は不明のまま。父ちゃんの知り合いということで、そのまま桜間家に泊ってしまいました。

佐藤部長も桜間家もお人よしが過ぎる気がする。とはいえ、これは私の話なんですが、小学生の頃に両親が留守の時(父は会社、母はパート)にミシンの訪問販売のおばさんがきて、お話を聞くのに家に上げてしまったことがあって、パートから戻ってきた母にそのことを話したら、こっぴどく怒られた経験があるんですよね。

だから、父ちゃんが留守にしていても、母ちゃんがいて伊奈勝平を泊めるなんてのは、ちょっと驚いてしまいました。

子どもの頃は、佐藤部長の信頼と父ちゃんの知り合いだから泊ることになったのかなって思ったりもしたんですけど、自分が同じような事をして物凄く母親に叱られた経験があって、大人になって見返すと、そこら中に伊奈勝平は信用が出来ない人物だというのが散りばめられているって分かるし、父ちゃんとの電話がまともにできないのも、長太郎達が騙される下準備が整ってきたって感じるんですよね。

ドラマの中では、伊奈勝平をこの段階では信じている人の方が多いんですが、唯一、カヨちゃんだけが、指摘しているんです。

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『男!あばれはっちゃく』15話より

「おじさんの知り合いに発明家がいるなんて、嘘っみたい」

 カヨちゃん、鋭いなって。けど、このカヨちゃんの言葉って、父ちゃんに対しても少し失礼なんですよね。次に、母ちゃんに窘められているから、カヨちゃんの失礼発言にも感じられる。最初にこの話を見た時には、この後者の失礼発言として受け入れているから、父ちゃんの名前を間違えているのにっていうので、信用はないけれども、伊奈勝平が受け入れられているのもいいのかなって思ってみてしまうという。

今、見返すと疑惑があるのにここまで信用していいのって思うですけど、子どもの頃はこの時点では自分も母ちゃん達と同じだったなって。

叱るには理由がある

父ちゃんがいない時に限って、父ちゃんを必要とする用事が舞い込んでくる。長太郎はみゆきちゃんからクーラーの取り付けを父ちゃんにお願いしたいと頼んでくるし、長太郎の家にクリーニングの服を取りに来た和美ちゃんのママが網戸の取り付けを父ちゃんに頼んできます。

で、これを伊奈勝平がダイクノンで代行してしまうんですが、その前に、和美ちゃんのママが桜間家に来ている時に、長太郎が帰ってきていつもの通りにランドセルを投げるですね、これが見事に和美ちゃんのママに命中するんです。

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『男!あばれはっちゃく』15話より

これを見て、この話の冒頭で父ちゃんが大阪に出張するというとこで、家に帰って来た長太郎が投げたランドセルが父ちゃんに当たってしまう場面があるんですが、それを思い出したんです。

で、この時に父ちゃんが長太郎に言った言葉も思い出して、ああ、父ちゃんの言ったとおりになったなって思って。父ちゃんが叱った時は、もちろん、ランドセルが当たって痛かったのもあるんだろうけど、母ちゃんのお店から帰ってきてその時にお店の中に向かってランドセルを投げるのは危険だって事を長太郎に教えていたんだなって思ったわけです。

長太郎は気にしていないし、たいていはカヨちゃんが受けとめるから長太郎はあんまり父ちゃんの言葉が届いていないし、注意をして謝ってもランドセル投げを中々やめないんですけど、なんかこう注意するには、それなりの理由があってするんだって、和美ちゃんのママが父ちゃんと同じ被害にあった時に思いましたね。

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『男!あばれはっちゃく』15話より

ダイクノンを売って大騒ぎ

みゆきちゃんの家のクーラーを取り付けて、和美ちゃんの家の網戸を取り付けて信頼を得た伊奈勝平。

ダイクノンの値段を聞いてきたみゆきちゃんのママに対しての伊奈勝平の返答に不気味さを感じました。

「まず、特許が下りれば3万円はくだらないでしょうね。ま、今の段階では宣伝を兼ねまして、5千円でお分けしております。はい」 

 先に3万円って言葉を聞いた後だと、5千円ってすごく安く感じますよね。和美ちゃんのママはそれでダイクノンを買ってしまうし。

長太郎はダイクノンをもっと売る為に、みゆきちゃん達と一緒になってダイクノンの路上販売を始めて売ってしまう。そこに寺山先生がくるものの、寺山先生は注意するでなく、ダイクノンの性能を聞いて寺山先生もダイクノンを買ってしまうという。

もう、佐藤部長、桜間家だけでなく、寺山先生まで警戒心なさすぎと言いますか、みんな騙されやすい人達なのではないか心配になってしまいます。

で、ダイクノンは全部売れるんですが、この後でダイクノンを買った寺山先生が説明書のないダイクノンが使えないってことで困っている様子が出てくるんです。

さらに桜間家にはダイクノンを持った人達が詰めかけて母ちゃんを責め立てています。

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『男!あばれはっちゃく』15話より

人をかき分けて長太郎が母ちゃんの元へくる様子が見えます。怒鳴り込んできた母親を止めに来ている和美ちゃんが健気ですね。長太郎の母ちゃんに対する優しさもそうなんですけど、和美ちゃんが母親をフォローする姿も健気で。きっと怒り狂って長太郎の家に行く母親を和美ちゃんは追いかけて止めに来たんだろうなって思うと、これまで長太郎を否定していた和美ちゃんが自分の母親の立場ではなく、長太郎側の立場にここにいるってことが嬉しかったな。

その前に学校で長太郎がみゆきちゃんからクーラーの取り付けを頼まれる時に、長太郎は洋一と邦彦と楽しく校庭でボール遊びをしているんですが、この場面でも長太郎は既に友達として受け入れられていたんだなって感じがして、それこそ2話とか、4話とか、8話とかを見ていると、長太郎が受け入れられたんだって感じがして、私はこの話の本筋とは別のところで、良かったなって思っていました。

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『男!あばれはっちゃく』15話より

騙されたと思ったら

さて、話を戻して。説明書もなく、使えないダイクノンの返品騒ぎでようやく伊奈勝平に騙されたと知る桜目家の人達。

そこへタイミングよく父ちゃんが出張から帰ってきます。もう、帰って来た父ちゃんの姿は安心感よりも怖さを感じました。もうすっかり長太郎と母ちゃん達の立場になってしまっているんですね。

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『男!あばれはっちゃく』15話より

ダイクノンの返品の山、父ちゃんのいない間に起きた事を知って、父ちゃんは母ちゃんに怒ります。長太郎は伊奈勝平を連れてきた佐藤部長を責めますが、信一郎はダイクノンを売るのを思いついた長太郎のせいにします。結局、長太郎のせいにされちゃうのかと理不尽に感じながらも、父ちゃんは母ちゃんにも怒るし、この後に来た佐藤部長にも怒るので、それでいいかなって。

父ちゃんが帰ってきて、問題の伊奈勝平がダイクノンの説明書を持ってやってきます。ここで初対面の父ちゃんと伊奈勝平。父ちゃんに気づくまでの伊奈勝平の態度と父ちゃんの怒りを爆発するまでの間が面白かったですね。

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『男!あばれはっちゃく』15話より

伊奈勝平は退散して、父ちゃんは伊奈勝平が持ってきた説明書をぶちまけるんですが、この後で佐藤部長が新聞を持ってやってくるんです。事情を知った父ちゃんは佐藤部長がダイクノンを買ってしまった事と自分の名前を間違えて覚えていた事に怒るんです、で、この時点で本当に父ちゃんがいないとみんなダメだなって思って、人の良いみんなが伊奈勝平に騙された話だと思ったら、佐藤部長は伊奈勝平のような優秀な人材を逃してしまったと嘆いていて、話がかみ合わない。

佐藤部長が持ってきた新聞を見ると、なんとダイクノンの特許申請がとれたという新聞記事が伊奈勝平の写真つきであるんです。

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『男!あばれはっちゃく』15話より

ええ、どう見ても詐欺師に騙された話だと思ったのに違うの!!って思いました。だって、怪しい様子は散りばめられていたし、最後に戻ってきた父ちゃんの怒りで反省して簡単に人を信じてはいけないという教訓かと思えばそうではなかったという大どんでん返し。

いや、それでも知り合いでもない父ちゃんの知り合いだって語ったのは嘘だし、父ちゃんと対面しても誰だか分からなかったし、だいたい父ちゃんの名前を間違えている人を信用する佐藤部長ってどうなのって思うところもあった。

これは詐欺の話だと思ってもおかしくない。佐藤部長が新聞を持ってくる前に、詐欺の話だと思っていた話の風向きが変わったかなって感じた前兆はあって、それが伊奈勝平が持ってきた説明書。

でも、その後で父ちゃんを見ても父ちゃんが誰だか分からない伊奈勝平を見て、やっぱり父ちゃんの知り合いだって言うのは嘘だったんだって思ったところへの、佐藤部長の新聞があって、二転三転して、結局、詐欺ではなくて、単なるうっかりさん達の話だったのかって。それでも、伊奈勝平が嘘つきであったのは変わらないですけどね。

なんだか、狐に包まれたような話でした。最後に父ちゃんに言われて長太郎がぶちまけた説明書を集めてそこに寺山先生がきて、長太郎が説明書を投げて、いつものように「暴れるぞ」って決め台詞で落ちるかと思ったら、父ちゃんの声が飛んできてそれをとめたのが面白かったです。

この最後の締め方も含めて、予想を裏切る展開が印象に残る話でした。

ゲスト出演者

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『男!あばれはっちゃく』15話より

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『痛快あばれはっちゃく』2話より

伊奈勝平役:沼田爆さん

1940年2月22日生まれ。劇団四季退団後、ドラマや映画、吹き替え、リポーターとして活躍。

沼田爆さんは、4代目『痛快あばれはっちゃく』で父ちゃんの会社の専務のいっぺいとして『あばれはっちゃく』シリーズに再登場しています。

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『男!あばれはっちゃく』15話より

ダイクノンを返品にきた女性(画面向かって右側の女性)役:上野綾子さん。

画面向かって右側の女性が上野綾子さんです。上野さんは1930年7月31日生まれ。東京都出身。

あばれはっちゃく』シリーズでもお馴染みの山際永三監督の映画監督デビュー作『狂熱の果て』(1961年・11月1日公開・大宝)に出演されています。他に『男はつらいよ寅次郎恋歌』(1971年・11月20日公開・松竹)にも出演。また、『男!あばれはっちゃく』21話に再登場されています。

『狂熱の果て』はついにDVD化されて見る事が出来るので、ぜひ、興味のある方は見てくださいね。 

狂熱の果て [DVD]

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  • 発売日: 2020/07/03
  • メディア: DVD
 

 

不甲斐ない管理人の柿の葉に愛の手を

15話のオープニングにはあと2人の女優の方の名前があります。

それが清水和子さんと蛭田幸子さんです。

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『男!あばれはっちゃく』15話オープニングより

清水和子さん

先に上野綾子さんの次にある清水和子さんについて。清水和子さんは、『男!あばれはっちゃく』18話にも再登場されていて、18話も確認してみました。15話と18話で同じ役者の方(演じている役は違うと思われる)が以下の画像の方です。

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『男!あばれはっちゃく』15話より

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『男!あばれはっちゃく』18話より

15話では上野綾子さんの隣にいる女性、18話に登場する女性と同じ(画面向かって右、女性の左目)目の下に黒子が確認出来ました。

もしも上記の方が清水和子さんだとすると、清水さんは劇団若草に所属されていたと思われます。1956年9月16日公開日活映画『隣の嫁』(監督・堀池清)に小手たけ子役で出演されています。また、『特別機動捜査隊』(1961年10月11日~1977年3月30日・NET(現・テレビ朝日))311話(1967年10月11日放送)に里子役で出演されています。

清水和子さんが劇団若草所属だと推定したのは、下記のリンクのキャストに清水和子さんの名前があり、そこに(若草)とあったために判断しました。

www.nikkatsu.com

また、同じく1957年1月15日公開の日活映画『孤獨の人』のキャストの中にも清水和子さんの名前があります。 

www.nikkatsu.com

 清水和子さんのドラマ経歴を調べていくと、1962年NHKドラマ『テレビ指定席 祝福』にもキャスト名があります。

1956年から活動されていたとして、『男!あばれはっちゃく』に出演された1980年には、24年のキャリアになっていると思いますが、子役として活動されていれば、年齢的にも問題がないように思えます。

ただ、ちょっと上記の方が調べた清水和子さんである自信があまりありません。

 

蛭田幸子さん

最後に蛭田幸子さんについて。15話に出演した方で他に台詞があったのが、ちとせ美工の女性社員とダイクノンを返品に来た和美ちゃんのママの隣にいた女性です。

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『男!あばれはっちゃく』15話より

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『男!あばれはっちゃく』15話より

こちらの2人は明らかに別の女性なのですが、オープニングに表示されたレギュラー、準レギュラー以外の役者名は4人(沼田爆さん、上野綾子さん、清水和子さん、蛭田幸子さん)。画像で紹介している人数は5人になり、数が合いません。

恐らく、どちらかが蛭田幸子さんだと思われます。蛭田幸子さんの名前で検索すると『UFO大戦争戦え!レッドタイガー』(1978年・テレビ東京)の2話に出演されていたことが分かりました。『UFO大戦争戦え!レッドタイガー』は、『あばれはっちゃく』のプロデューサーの鍛冶昇さんや、『あばれはっちゃく』シリーズの監督の1人松生秀二監督が監督して作品に参加されていました。

 

清水和子さんと蛭田幸子さんに関しての情報に自信がありません。不甲斐ない管理人の柿の葉を助けてくださる方、大歓迎です。

『男!あばれはっちゃく』14話「遊びは天才」感想

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『男!あばれはっちゃく』14話より

 1980年6月21日放送・脚本・三宅直子さん、山際永三監督

おはじき効果

国語の授業が終わって長太郎は外に遊びにいこうとするものの、クラスメイトは殆ど席を立たず、近い席同士でおしゃべりしたりおはじきをして遊んだりしています。

邦彦にいたっては次の授業の予習を始める始末。

おはじきをして遊んでいるのは、みゆきちゃんと弘子ちゃん、和美ちゃん達なんですが、この3人以外でも、今回の話の中では、おはじきをして遊んでいる子達が多くて、長太郎がしたい遊びと対照的な扱いになっているのが面白かったです。

今回も前回に引き続いて監督は山際監督なのですが、おはじきを印象付けるために、おはじきだけをクローズアップして映しています。

この先でも、おはじきが出てきますが、やはり印象に残るようにおはじきが抜き取られています。これが見ていてとても心に引っかかる演出になっていると感じました。

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『男!あばれはっちゃく』14話より

寺山先生に言われて外に出たみゆきちゃん達は、外でもおはじきをしていて、そこ、外に出た意味!って思っていたら、長太郎がきて私が思っていたツッコミを入れてくれました。ナイス!長太郎。

おはじきが抜き取られて映される場面に心が引っ掛かると書きましたが、長太郎が段ボールで土手滑りをしていた時にも、おはじきで遊んでいる子達が出てきます。でも、長太郎が楽しそうに遊んでいるのが気になって、おはじきを置き去りにして長太郎のとこに集まってくるのです。

この時にそこに置き去りにされたおはじきの映像が入るのですが、それを見てなんとも淋しい気持ちになりました。自分で遊び道具を作ったり、一見、ゴミに見える物を活用して遊び道具にして、体を動かして遊んでいる人の遊びに気を取られて、自分達が遊んでいた遊び道具を置き去りにしていて、そこに残された遊び道具のおはじきがなんだか可哀相に見えたのです。

下の画像が置き去りにされたおはじきの映像です。

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『男!あばれはっちゃく』14話より

教室でみゆきちゃん達が遊んでいたおはじきの場面と置き去りにされたおはじきの場面では印象が違いました。子どもの遊びとして機能していたおはじきと子どもに見捨てられたおはじきを見せることで、子ども心の移ろいを表現しているように思えました。

また、アバンタイトルを含めてみると、アバンタイトルで長太郎、みゆきちゃん、洋一、邦彦、弘子ちゃん、和美ちゃん達が外で体を動かして遊んでいるので、アバンタイトルでは長太郎と遊んでいたいつもの面子が、本編で外で遊ぼうと誘う長太郎を迷惑に思っているのも対照的に感じました。

アバンタイトルで先に外で体を動かして遊んでいる長太郎達を見ているだけに、本編ではいつ一緒に遊ぶことになるのかなって思いながら見ました。

映像や先にアバンタイトルの話を見てそんなことを思いながら見ていて、それが私の心を揺り動かしているのかなって考えたりもしました。

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『男!あばれはっちゃく』14話アバンタイトルより

 

洋一の父親の嘆き巻き込まれた母ちゃん

この先でおはじきだけでなく、体を動かさない遊びが出てきます。それが漫画だったり、インベーダーゲームだったり、お手玉だったりと新旧関係なく出てきて面白く、一方で長太郎の遊びは、一見ゴミになってしまった物を活用して遊び道具に使い体を動かして遊んでいます。長太郎は土手滑りの前に洋一の母親からもらった縄を利用してターザンごっこをして遊んでいます。

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『男!あばれはっちゃく』14話より

 遊びの新旧ではなく、体を大きく動かすか動かさないかで遊びを分けている。書店とゲーム機のあるお店の場面で洋一の父親が登場してきますが、洋一の父親は漫画だけを楽しみにしている自分の息子やインベーダーゲームで遊んでいる若者を見て嘆いています。

この後、洋一の父親は長太郎の家の理容室に行き、そこで母ちゃんが長太郎が遊びの天才だと聞きます。母ちゃんが長太郎を遊びの天才と称する前の段階で、長太郎がいろいろと工夫して遊んでいる姿があるので、母ちゃんの言葉に頷きました。

この話では外で体を動かす遊びと部屋の中で済む遊びに分け、さらに長太郎の遊びの中に自分で遊び道具を調達するだけでなく、自分の手で工作して作り出す要素が入れられています。この長太郎の自分で遊びを考えて、道具を作って遊ぶ、何もないところから作り出す遊び、なんでもないゴミに見えるもの、遊び道具には使えない物を遊び道具にする発想力はとても高いです。

それだけでなく、初代『俺はあばれはっちゃく』から見ていると、長太郎の遊びやいたずらに対して発想力が高いという認識がファンの中に育っています。2代目長太郎は母ちゃんから「遊びの天才」と言われましたが、初代長太郎も『俺はあばれはっちゃく』13話「暴れキューピッド」(脚本・市川靖さん・川島啓志監督)で佐々木先生から「遊びの天才」と言われています。

初代13話は長太郎の遊びがメインではなかったものの、他の話でいろいろな遊びやいたずらがアバンタイトル、本編を含めて登場してきたので、初代長太郎は遊び(いたずらも含む)の発想力が高い印象が残っているところでの、2代目のこの14話なので、余計に母ちゃんの言葉に強く共感ができました。こうした影響を視聴者に与えることが出来るのはシリーズだからこそ出来るものだと思いました。

また、初代を見ていなくても、この話だけで説得力を持たせ、共感できるように話が作られ、単独で見ても共感出来るのもさすがだと思います。

長太郎が遊びの天才だと聞いた洋一の父親は、今度の町内のこども会の企画を長太郎に考えてもらうように町内会で母ちゃんにお願いをします。

この町内会で司会をした洋一の父親が母ちゃんや長太郎を持ち上げるので、みゆきちゃんのママが面白くない顔をし、言葉では母ちゃんを持ち上げているものの、みゆきちゃんのママに加担して、嫌味っぽく母ちゃんに面倒を押し付けている弘子ちゃんのママとと和美ちゃんのママ。悪気がなくおだてる洋一の母親の中で、母ちゃんが居心地悪そうにしている姿がいたたまれませんでした。

こんな場面、初代『俺はあばれはっちゃく』29話「燃えろママゴン」でもありましたね。この時の脚本も今回と同じ三宅直子さんでした。(監督は松生監督)やはり、三宅直子さんの脚本は母ちゃんが話の中心になる話が多いように感じます。町内会や学校のPTAでの人間関係の中で面倒な要件を押し付けられたり、人付き合いのストレスを受けたりと母ちゃんの苦労が見られます。

長太郎の遊びの発想力をメインにしながらも、母ちゃんの立場にもスポットライトを当てる三宅さんの脚本。大人になってみると、母ちゃんの立場での人付き合いの大変さにハラハラしてしまいました。

危険な遊び

体を動かして遊んだり、遊び道具を作るとなると、怪我をするリスクが増えていきます。今回は、遊びの中で怪我をしたり、遊び道具を作る中で怪我をする場面はなかったのですが、見ていて危ないなって思う場面がありました。それは、町内会のメンバー洋一の父親、みゆきちゃんのママ、弘子ちゃんのママ、和美ちゃんのママが理容サクラマに来て、母ちゃんに町内こども会の企画案を聞きに来た時に、割りばし鉄砲を作っていた長太郎が母ちゃんをいじめに来たと思って、割りばし鉄砲でみゆきちゃんのママたちを撃った場面です。

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『男!あばれはっちゃく』14話より

ちなみに母ちゃんを除く全員に命中しています。もしも目に当たってしまえば大惨事です。長太郎は出てきて抗議をし、みゆきちゃん達のママと揉めますが、洋一の父親が間に入り、また母ちゃんとカヨちゃんでさらに攻撃をしようとした長太郎を取り押さえます。

母ちゃんを思う長太郎の行動なのですが、これは少し危険に感じました。洋一の父親達は帰ってしまいます。帰ってしまったメンバーは、みゆきちゃんの病院の家の前で町内こども会の企画を読書会と決めてしまいます。その時、家から出てきたみゆきちゃんにみゆきちゃんのママが読書会のことを伝えるのですが、みゆきちゃんは不満を口にします。

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『男!あばれはっちゃく』14話より

それは、母ちゃんやカヨちゃんのアイディアをそれは去年にやったとかダメ出しをしながら、みゆきちゃん達のママが出した企画も前と同じだったからです。この時にみゆきちゃんがおはじきを持っているんですが、ここでも外に遊びに出ながら、おはじき遊びをしているみゆきちゃんが出てきて、どれだけおはじき遊びが好きなんだろうかと思いました。

ひょっとしたら、弘子ちゃんや和美ちゃんの家で遊ぶ可能性もあるかもしれないと思ったところで、ちゃんと外でおはじきをしているみゆきちゃん達の姿。ある意味、これはこれですごいと思います。それだけ、おはじき遊びが好きってことですよね。私自身も子どもの頃に長太郎のように外で体を動かす遊びだけでなく、ビー玉遊びで遊んでいたので、みゆきちゃん達の気持ちも分からなくもないし、安全に遊べる場所の少ない東京では動きの小さい遊びを選択してしまうのもあるかなって思ったりもしました。

進歩していく遊びと遊び道具作り

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『男!あばれはっちゃく』14話より

さて、外でおはじきで遊んでいるところに、竹馬に乗った長太郎が登場してきています。この前に長太郎は、熊田道場に行って和尚さんから竹を譲ってもらっています。その竹を使って竹馬を作って登場してきたのです。

竹馬を作った事を聞いたみゆきちゃんが長太郎を褒め称えます。信じらない邦彦も熊田道場に行って和尚さんから話を聞いて信じます。そして、自分達で竹馬を作り、他にも竹筒の水鉄砲や竹トンボを作ることに。

長太郎が竹で遊び道具を作る前に、割りばし鉄砲を作るのが入ることで、段々と複雑な遊び道具を自作している段階が見られて、竹馬や竹筒の水鉄砲、竹トンボに発展していくだなって思いました。

町内会の企画について長太郎が母ちゃんから話を聞いて、洋一の父親達が来るまでの間に長太郎もいろいろとアイディアを出してはいたのですが(木登りとか大食い大会とか)、みゆきちゃん達に木登りのアイディアを否定され、母ちゃんに大食い大会を否定されてしまっています。

それでも、洋一の父親達が帰った後で、長太郎は熊田道場で竹を見つけて、竹馬を作ることを思いつくのです。

なんというか、無理に考えるよりも、長太郎は遊び道具になる物を見つけると、それを利用した遊びを思いつくタイプなんだなって思いました。

長太郎の作った遊び道具も最初のターザンごっこの道具から、割りばし鉄砲、竹馬、竹筒の水鉄砲、竹トンボと複雑になっていて、工作や技術の要素が増えていきます。

体を動かす運動の部分と、道具を使用して手先を利用して遊び道具を作る工作、技術の部分が加わっていく。道具を生み出すというのは、人間が生きていくうえで必要な経験で生活の中で生かされていくものだと思うので、遊びの中にも生きていくうえでの大事な要素が入っているんだなって思いました。

面白いと感じるものに流れていく子ども

長太郎の遊びを否定していたみゆきちゃん達も、最終的には長太郎の遊びを受け入れ、自分達で貼り紙をして、親たちが決めた読書会に対抗しています。

遊び道具を作る事も含めて遊びとして受け入れている。結局は、自分達が興味を持ってやってみて楽しいと思える遊びや娯楽に素直に流れていんだってことが、みゆきちゃん達の態度から感じました。

アバンタイトル通りに長太郎がみゆきちゃん達と遊べて良かったと思いました。

しかし、こうして記事に書いて振り返って見ると、置き去りにされたおはじきの映像が思い出されて、子どもの心の移ろいの無情を感じて、物寂しく思う気持ちも出てしまいました。

子どもは興味がない事は、どんなに為になると押し付けてやらせても、その人に身につかないけれど、興味を持ってやったことは身について楽しい思い出になっていく。そんな経験が自分にもあったなってことを思い出す話でした。

この竹馬の大逆転で母ちゃんも立つ瀬があったし、ちゃっかりと「ちとせ町こども会々場」の看板を持って来て、長太郎達が集まっていた熊田道場をこども会々場にした洋一の父親のちゃっかりさ。

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『男!あばれはっちゃく』14話より

 先に駆けつけたみゆきちゃんのママ達は長太郎達に竹筒の水鉄砲の洗礼を受けてしまいましたが、最終的には子どもも大人も楽しくこども会が出来て良かったかな、と。

子ども視点と大人になってからの視点

長太郎が割りばし鉄砲で洋一の父親やみゆきちゃんのママ、弘子ちゃんのママ、和美ちゃんのママ達を攻撃したのだけはどうかと思うけど、そこはしっかり母ちゃんとカヨちゃんが止めに入り、長太郎に頭を下げさせたりしていたので、長太郎の遊び方が全て正しいという訳でもなく、危険な遊び方は騒ぎになって、自分の正しいと思っている主張も受け入れてもらえないのがちゃんと示されているからこそ、私は『あばれはっちゃく』が好きなんだなって再確認しました。

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『男!あばれはっちゃく』14話より

長太郎が攻撃をしたのも、割りばし鉄砲の後で暴れたのも、みゆきちゃんのママ達の言動にも問題があるということは分かるので、割りばし鉄砲で撃つことも暴力も褒められた事ではないけれども、無闇やたらに暴力をするのではなく、それをするに至る原因があるということも含めて、人をましてや大人が子どもを暴力に駆り立てる原因を作ってはいけないんだってことが、大人になって見直すと伝わってきます。

あばれはっちゃく』シリーズの面白さは、子どもの頃に見ていた時と大人になってこうしてDVDで見返した時に子ども視点と大人になった視点で違う見方や感想を持つことが出来る事です。

前回も書きましたが、こうした見方が出来る作品の表面だけを見て否定するのは、やはり勿体ないと私は思います。

ゲスト出演者

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『男!あばれはっちゃく』14話より

 まことの母親役:原田千枝子さん

長太郎がターザンごっこを小さい子達に教えていた時に駆けつけた女性。イラストのあるTシャツを着ている子どもを「まことちゃん」と呼んで駆けつけているので、おそらくそのまことの母親だと思われます。

14話のオープニングで表示された出演者の中で、これまで出てこなかった出演者は原田さんだけでしたので、消去法で上記の方を原田さんと断定しました。

原田さんは1950年8月8日生まれ。あ、誕生日が私と同じだ。高校時代に日活にスカウトされて、1969年に映画デビューされます。1978年にフリーになり、多くの作品で活躍。『大江戸捜査網』(1970年~1984年)に多数ゲスト出演、『太陽にほえろ!』(1972年~1986年)にも多数ゲスト出演、『仮面ライダーアギト』(2001年)11話三浦智子の母役、『重版出来』(2016年)3話壬生平太の母役などを演じています。

『男!あばれはっちゃく』13話「決斗!ジジババ」感想

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『男!あばれはっちゃく』13話より

1980年6月14日放送・脚本・山根優一郎さん、山際永三監督

手法を変えて

まだ本格復帰ではありませんが、時間や精神的な余裕があるときに『男!あばれはっちゃく』の各話の感想を書いてきます。

そこで、これまで書いてきた1話~12話の感想記事のスタイルと変えて再開します。1話~12話までは、アバンタイトル感想、本編感想、まとめのスタイルでしたが、それをやめて全体の感想、話の中で気づいたこと、発見したことを思いつくまま書き連ねていこうと思います。本放送当時の放映日の更新にはなりませんが、またお付き合い願いましたらよろしくお願いします。

今日から少しずつの再開、まずは続きの13話から。

本放映の放送日は1980年6月14日でした。今日が11月22日なので、いや5ヵ月と1週間も開きましたね。ちなみに1980年11月22日は35話「返せ!自転車」でした。

本来なら35話について書く日ですが、これまで中断していた続きで13話の感想になります。

長太郎の祖父ちゃん登場

この話で長太郎のお祖父ちゃんが初登場しますね、初代『俺はあばれはっちゃく』23話「たなばた幽霊」に出演した柳谷寛さんが長太郎のお祖父ちゃんになって、『あばれはっちゃく』シリーズに戻ってきました!

このお祖父ちゃん、長太郎の母方のお祖父ちゃんなので、長太郎の母方の従姉であるカヨちゃんにとっても血の繋がったお祖父ちゃんになるんですね。

で、お祖父ちゃんは自分のことを「さの げんのすけ」と名乗っているので、母ちゃんの旧姓が「さの」だって分かります。母ちゃん、結婚前は「さの和子」さんだったんですね。ちなみにお祖父ちゃんの名前の漢字はドラマの中では分かりませんでしたので、平仮名表記にしてあります。

長太郎はお祖父ちゃんが来ることを寺山先生やみゆきちゃん達に話して、その時にお祖父ちゃんが「馬庭念流」の剣道の先生だって話しているんですが、この馬庭念流って本当に実在する剣道の流派なんで驚きました。

www.city.takasaki.gunma.jp

それから、お祖父ちゃんがこの場面で歌った歌も実在している歌です。『不識庵機山を撃つの図に題す』正確には詩吟ですね。

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『男!あばれはっちゃく』13話より

 

川中島(不識庵機山を撃つの図に題す)

川中島(不識庵機山を撃つの図に題す)

  • 発売日: 2013/12/18
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

それから、長太郎とお祖父ちゃんがお風呂で歌ったドリフターズの『いい湯だな』 。もう、『あばれはっちゃく』の後はTBSの『8時だよ!全員集合』を見ていた人も多いと思うんですが、その前に『あばれはっちゃく』の裏番組(関西地区は除く)の『大橋巨泉クイズダービー』を見ている家庭も多かった中で、終わった後に始まるとはいえ、ライバル局の看板番組でお馴染みの歌を歌うなんて、チャレンジャーだなって思いましたね。ま、それだけ当時はみんなが知っていた歌でしたものね。

で、2代目に限らず『あばれはっちゃく』って、初代の記事でも書いてきたんですが、調べてみると実際に存在している文化とかが話の中に組み込まれていて、話の中で大なり小なりしっかり生かされているんですよね。だから、本当に自分達の現実と同じ現実の世界なんだなって子どもの頃は錯覚していましたよ、私は。

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山中恒先生の本

実在しているといえば、13話では他にゲストキャラの「まつやま あきお」が読んでいた本です。

この本は今回の話に効果的に印象的な小道具として使われています。

本のタイトルは『リボンのムツ五郎』。このタイトルを見て分かる人は分かりますよね。気づいた人もいると思います。『リボンのムツ五郎』は『あばれはっちゃく』の原作者である山中恒先生の作品です。

恥ずかしい事に私は『リボンのムツ五郎』を未読なので、今回の話の面白さを現段階ではちゃんと理解していないと思っています。

長太郎があきおとぶつかって知り合う場面で、あきおが読んでいた本が地面に落ちるのですが、この時に本の後ろにある本の中身が見えて本のシリーズ作品表が見えます。これが山中恒先生の作品の一覧表になっていて、そこにはちゃんと『あばれはっちゃく』もあるんです。

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『男!あばれはっちゃく』13話より

あきおは長太郎のことを「あばれはっちゃく」ってすぐに呼んでいましたが、もちろん、長太郎が学校内で「あばれはっちゃく」として有名で他のクラス(あきおは5年2組、長太郎は5年3組)まで名前が轟いているんだって解釈もあるんですけど、この一覧表の場面を見ると、あきおがドラマの中で読んでいたのは『リボンのムツ五郎』だったけども、優等生のあきおはそれ以外の山中仁児童よみものシリーズを読んでいて、『あばれはっちゃく』も読んでいたんじゃないかなって思っちゃうですよね。それで、長太郎は「あばれはっちゃく」だって知っていたとか。

そんなメタ的なことを考えてしまいました。

 体が弱いと祖母に過保護に育てられたあきおは、長太郎とお祖父ちゃんに鍛えてもらうことになるんですが、この時に有名な寺山修司さんの評論集『書を捨てよ町へ出よう』(1967年出版・1971年映画化・脚本・監督寺山修司さん)をアレンジした言葉をお祖父ちゃんがあきおに言っています。

書を捨てよ、町へ出よう (角川文庫)

書を捨てよ、町へ出よう (角川文庫)

 

 

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『男!あばれはっちゃく』13話より

「書を捨て野にいでよ」 

ってね。

あ、その前にお祖父ちゃんのランドセル投げも見る事が出来ます。

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『男!あばれはっちゃく』13話より

さて、あきおが読んでいた『リボンのムツ五郎』この本が小道具としてメタ的に使われているだけでなく、この「書を捨てよ」の言葉にかかって、この話のテーマを効果的に見せる小道具になっていると感じました。実はお祖父ちゃんがあきおに「書を捨てよ」と言う前に意図しないであきおは既に「書」を捨てているんですね。

それが下の引用画像。

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『男!あばれはっちゃく』13話より

それまで常に本を持って読んでいたあきおにとって大事な本が落ちたまま。この本になくなったことに気づくことなく、また話の終わりで回収されることなく13話は終わっています。映像の中で、あきおにとって大事な本という印象がついていただけに本がなくなった事に気づかないことや、取り戻した描写がないのが不自然に感じました。本のことを少し置いておきます。

あきおの頼みであきおを鍛えることにしたお祖父ちゃんは座布団で頭を保護した長太郎に反撃させずにあきおに頭を叩かせるのですが、我慢が出来なくなった長太郎が反撃して、あきおをやっつけたことであきおの祖母の怒りをかって、怒鳴り込まれます。長太郎とお祖父ちゃんが大好きなあきおはそんな祖母に反発してしまい、あきおの祖母は長太郎のお祖父ちゃんに決斗を挑むことに発展します。

長太郎のお祖父ちゃんが馬庭念流ならば、あきおの祖母は長刀。あきおの家は四国丸亀藩江戸家老の血筋だそうです。少し話の時間を巻き戻してみると、あきおが無理やり病院に連れていかれる場面があるのですが、この場面は長太郎と長太郎のお祖父ちゃんが遭遇でもあります。そこで、あきおの祖母が言っているんです。

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『男!あばれはっちゃく』13話より

「世が世なら、四国、丸亀藩江戸家老の血を引く孫ですぞ」

四国の丸亀藩ということで、現在の香川県のことでしょうね。

さて、なぜ、病院に連れて行かれる事になったかといえば、その前に長太郎があきおとぶつかって腕に痣が出来てしまったからなんですね。

ここで、本の話題に戻ります。この上記の引用画像を見るとあきおは、ここでも『リボンのムツ五郎』を大事に持っています。初登場の時にも『リボンのムツ五郎』を読んでいて、あきおにとって『リボンのムツ五郎』が大事な本だって印象が強く残るんです。

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『男!あばれはっちゃく』13話より

それなのに、あきおは『リボンのムツ五郎』を落としたことに気づかず、後で探したりしない。それがとても不思議でした。

この疑問に関しては、長太郎のお祖父ちゃんとあきおの祖母の対決の成り行きを見ていくと次第に私なりの回答が出てきました。

長太郎のお祖父ちゃんとあきおの祖母が決斗して、それぞれにいい闘いをするんですが、最後には長太郎とあきおの戦いに。その前に長太郎とあきおが目くばせをしていて、長太郎とあきおの間には誤解も恨みもないってことが伝わってくるんです。

あきおは自分の意思を祖母に伝えていますし、長太郎やお祖父ちゃんを悪くいってません。ただ、祖母に聞かれて素直にありのままに話して、それを聞いた祖母が勝手に怒って長太郎とお祖父ちゃんを恨んでしまうのですね。それでも、あきおも自分のために祖母が決斗までしているのを見ていると、やはり祖母の側に立つことになる。そこに、あきおの優しさを感じました。長太郎の方もそれが分かったからこそ、あきおとの戦いの前に目くばせをしたんだなって思うんですよね。これは私の想像なんですけど、先に長太郎のお祖父ちゃんが胸を抑えて苦しんで、とどめを刺されそうになった時に長太郎がお祖父ちゃんを庇うんですが、あきおもそれで自分の祖母を庇って長太郎の前に立ちはだかるんです。

この孫二人のそれぞれの祖父、祖母に対する思いやり、優しさが感じられる場面はとても素敵だなって感じました。

で、本を大事にしていたあきおが本を探さなかった理由についての私なりの解釈なんですが、本を友にしていたあきおが結果的に書を捨てた形で、自分の意思を貫き、本ではなく現実の世界で、祖母に自分は体が弱いだけの人間ではないと証明したことを象徴したのかなって思ったんです。

このことで祖母と和解して、孫達に助けられたことで長太郎のお祖父ちゃんとあきおの祖母も和解出来た。本の世界も素敵だけど、自分達がそれぞれ主人公で生きている現実世界で行動を起こすことが自分達の生きている世界を広げるんだってことがこの13話のテーマだったのかなって私は勝手に思っています。

山際永三監督が作る印象・山根優一郎さんが生み出す話

『リボンのムツ五郎』はあきおと常にあったという印象を視聴者につけ、それが捨てられた場面をしっかりと焼き付けて見せている。これは、この13話の監督である山際永三監督の手法だと思います。本の世界から出て現実の世界に向き合ったあきおを『リボンのムツ五郎』の本と言う小道具を印象的に見せることで表現したと思いました。

その後で「書を捨てよ」という言葉が長太郎のお祖父ちゃんから出てくる山根さんの脚本。この脚本の言葉が、山際監督の『リボンのムツ五郎』の映像での見せ方によってしっかりと生きています。

しかもその小道具に使ったのが『あばれはっちゃく』の原作者の山中恒先生の『リボンのムツ五郎』あきおが大切にして愛読していた『リボンのムツ五郎』の内容が分かればもっと深くこの13話を楽しめ、理解出来ると思いました。ああ、この本も読まなければ。

リボンのムツ五郎 (山中恒児童よみもの選集 8)

リボンのムツ五郎 (山中恒児童よみもの選集 8)

  • 作者:山中 恒
  • 発売日: 1977/10/15
  • メディア: 単行本

追記

調べて『リボンのムツ五郎』のあらすじが分かりました。

小牧むつ子は女番長。5年生になり新任の佐藤先生の影響で女らしくなるものの、男番長の牛島清吉は先生の手先と馬鹿にする。ここに番長同士の対決が始まる

なんか、この13話のジジババ対決の小学生版みたいだと思いませんか。原作のあばれはっちゃく』と初代『俺はあばれはっちゃく』にも女番長のタマエが出てきて長太郎とやりあう(ドラマはちょっと違うけど)がありましたね。それを思い出しました。

『リボンムツ五郎』は家の光協会『こどもの光』に連載された作品でした。

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 これは私の贔屓になっちゃうんですが、『あばれはっちゃく』シリーズの最初を飾った山際監督、山根脚本っていうのは(初代『俺はあばれはっちゃく』1話のこと)やはり見ていて見応えがあって、印象に残る映像や言葉、話展開、人が動くことで話が完結する流れが自然でシリーズの話の中でも一際光っていると思います。

山際監督は、松竹出身の山根さんは真面目で、市川靖さんの破天荒な脚本の方が好きだと話されていましたが、山根さんの真面目さが破天荒な長太郎の行動をただの暴力的な乱暴者にしていなくて、山際監督の映像が山根さんの真面目さを打ち破る形になって相乗効果が出たのかなって私は勝手に思ったりしています。

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現在の価値観による評価に思う事

初代のいたずらが度が過ぎる、シリーズが進むにつれておとなしくなっていった、おとなしくなった方が良いと思う人もいるだろうし、シリーズ中も世間に次第に合わせて演出や長太郎のいたずらを抑えていったのだろうと思うのですが、私は初代長太郎がとんでもないいたずらをしたとしても、それなりにちゃんと叱られていていることで釣り合いがとれていると思っているんですね。この感覚は人それぞれだと思いますが。

長太郎のいたずらをもろ手を挙げて讃えているだけなんてことはないし、長太郎もしっぺ返しを食らっているし、父ちゃんに激怒されている。

でも、今では長太郎の(特に初代)いたずらも父ちゃんや先生や母ちゃんの叱りも、度が過ぎている、暴力的に見られて、次第に控えめになっていった2代目以降も含めて、『あばれはっちゃく』は現在では再放送が難しいとされてしまうのは、作品のファンとして本質を見ないで評価されているようで、とても淋しく感じます。

ゲスト出演者

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『男!あばれはっちゃく』13話より

さの げんのすけ役:柳谷寛さん。

長太郎の母親和子の父親で長太郎の母方の祖父。演じた柳谷さんは、初代『俺はあばれはっちゃく』23話にも登場。1911年11月8日生まれ。青森県出身。日本映画学校を卒業後、P.C.L入社。1935年山本嘉次郎監督の映画『坊つちゃん』のガキ大将役ででデビュー。戦後、俳優グループ第一協団に所属。多くの会社の作品に出演しました。私はいろいろな作品でお見掛けしましたが、私は『あばれはっちゃく』シリーズの他では『ウルトラQ』の「あけてくれ!」の話のサラリーマンの印象が強いですね。2002年2月19日90歳で亡くなられています。

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『男!あばれはっちゃく』13話より

まつやま あきお役:伊藤秀和さん

伊藤秀和さんは、NHKドラマ『阿修羅のごとく パート2』(1980年1月19日~2月9日)の土屋省二役、ハウスこども傑作劇場『宿題ひきうけ株式会社』(1982年3月16日)等にも出演されています。『宿題ひきうけ株式会社』は古田足日先生の児童文学でその作品の1話限りのドラマ化でした。監督は『あばれはっちゃく』でもお馴染みの山際永三監督。この『男!あばれはっちゃく』13話(1980年6月14日放送)の後なので、それ以外でも仕事をされているかもしれませんが、あきお役があってまた山際監督に選んでもらったのかもしれませんね。そういえば、山際監督は2代目の途中から『あばれはっちゃく』シリーズから抜けるので、3代目、4代目、5代目のレギュラー子役と仕事をする機会はないんですが、4代目のヒロインまゆみちゃん役の水沢真子さんが「あばれはっちゃく同窓会」で山際監督とお会いした時に、水沢さんが主役デビューした作品の監督だったということで感激されたそうです。ちなみにその作品の脚本家が「あばれはっちゃくシリーズ」でもお馴染みの田口成光さんで田口さんも同窓会にいたとか。

ちなみにその作品もハウスこども傑作劇場で放送された『おかあさんのつうしんぼ』(1982年6月1日放送・原作・宮川ひろ先生)でした。この頃は、本当に児童文学の児童ドラマがとても多くて楽しかったですね。伊藤さんは他にも大河ドラマ徳川家康』(1983年)に織田源三郎役(信長の五男)で出演されていたりします。

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『男!あばれはっちゃく』13話より

あきおの祖母役:福田妙子さん

評論家、翻訳家、演出家として有名な福田恆存さん(1912年8月25日~1994年11月20日)を兄に持つ福田妙子さん、夫は俳優の加藤和夫さん。兄、福田恆存さんと自身について『婦人公論』1951年3月号に寄稿されています。『婦人公論』に文章を寄せた時は、文学座女優とあり、夫の加藤さんも文学座出身なので、お2人は文学座を通して出会ったのだと思います。

テレビドラマでは『海風が吹けば』(NHK・1956年5月~7月)や『わが町』(日本テレビ・1957年)『離婚学入門』(TBS・1961年)『七人の刑事』(TBS・1961年10月~1969年4月)163話(1967年10月2日放送)等に出演されていました。他にも映画に多数出演されています。