柿の葉日記

主にテレビドラマ「あばれはっちゃく」について語る個人ブログです。国際放映、テレビ朝日とは一切関係がありません。

『男!あばれはっちゃく』50話「はずれろ団地」感想

『男!あばれはっちゃく』50話より

1981年3月14日放送・脚本・市川靖さん・磯見忠彦監督

章の母ちゃん

今回の話は章の家が団地に当選するか否かの話でした。団地に当選すると章は引っ越す可能性があって、章はまた転校して、長太郎と別れることがいやで団地の当選を望んでいません。長太郎は今のちとせ第一小学校に通える団地に当選するものだと思い込んで、章の気持ちも知らずに、最初は団地に当選するといいなと言って章を怒らせてしまいます。

長太郎の中では、弘子ちゃんも団地住まいなので、弘子ちゃんのような団地に章が引っ越すようになれば、章の部屋も出来るし、いいなってぐらいの感覚だったので、章の怒りが分からなかったわけですが、寺山先生の言葉で自分の軽率な言葉が章を傷つけてしまったのだと知ります。

長太郎がいいなと思うのは、章を傷つけたことを素直に認めて、しっかりと章に謝り、且つその章がどうして怒ったのかという気持ちを考えた上で、章が長太郎は章との別れを何とも思っていないなんていうのは、章の誤解で、章の転校を望んでいないことを明確に行動でも示していることです。

長太郎は寺山先生の言葉から、章の気持ちを悟り、章が東京以外の埼玉や神奈川の団地に当選して引っ越すのを阻止するために、章の母ちゃんや父ちゃんがした神頼みと同じ神頼みを反対の方向へお願いして、章の為に願掛けの絵馬を自分で作ってしまったというのが、長太郎が示した章への誠意の行動。

お願いをするだけなら、証拠は残らないわけなんですが、絵馬という形でお願いを記した証拠を作ってしまったことで、長太郎は章の母ちゃんから怒りを買ってしまいます。今回の話の中で、私が引っかかったのは、この章の母ちゃんの怒りの部分です。

『男!あばれはっちゃく』50話より

この章の母ちゃんの怒りの部分だけでなく、この話は冒頭からお願いをしている章と章の母ちゃんのところへ長太郎が来た時点で、章の母ちゃんが長太郎を厄介者として扱っているところにも違和感を感じました。

それは、この話が48話「でこぼこ母ちゃんマル秘作戦」の後にある話だからです。48話で章の母ちゃんは長太郎に好意的で、長太郎の親切や優しさに触れて、また自分の寂しい思いを気遣ってくれたことをとても有難く受けとめてくれたと感じました。それなのに、この50話では冒頭から長太郎を邪険に扱っている、それが私にはとても悲しく、寂しく感じたのです。

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本放送では、2週間前の話で当時は殆どの家庭に録画機がなかった時代ですし、話を見返すこともなく、『あばれはっちゃく』は基本1話完結なので、当時はそんなに気にはならかったのかもしれませんが、DVDで続けて見られるようになると、人物の関係性がちょっと前にリセットされてしまうのは、やはり、見ていて少し違和感を感じます。これは、50話だけでなく、過去記事にも書きましたが、24話でも感じた違和感です。

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1話完結で一つ一つの独立した話は良くても、連続で見ていくと人間関係の関係性がリセットされてしまっていると感じてしまうのは、残念だなあって思います。今回は章の母ちゃんの長太郎への感情がリセットされ、同時に母ちゃんと章の母ちゃんの人間関係もリセットされてしまった印象を受けました。

その一方で長太郎と章、長太郎の父ちゃんと章の父ちゃんの人間関係はリセットされず、継続されていたので、一方の人物の人間関係はリセットされていて、もう一方はリセットされていないので、なんだか奇妙に感じてしまいましたね。

父ちゃんと章の父ちゃん

長太郎と章の願いも虚しく、章の家に埼玉の団地の当選のハガキが届きます。長太郎は章に転校させないために、自分の家に章を下宿させる話を父ちゃんにしますが、父ちゃんは章と一緒に桜間家に来た章の父ちゃんとの将棋勝負で喧嘩をしてしまって、章との付き合いをやめるように長太郎にいい、章たちを追い出してしまいます。ここでは、44話の「勝ったら負けだ」を思い出しました。

50話は章の家が団地に当選して、章が転校してしまうかどうかの話なのですが、一方で長太郎の父ちゃんと章の父ちゃんの本来は仲が良い2人が些細なことで、喧嘩をしてしまい、互いに相手が気になるものの、素直になれずに邪険にしてしまう気持ちを乗り越えて、相手の為に力を寄せる、素直に謝り、相手の行為に感謝をするという、父ちゃんと章の父ちゃんの気持ちの流れが話にあって、父ちゃんと章の父ちゃんの友情の話になっている点にも注目してしまいます。

個人的な好みの話になりますが、父ちゃんと章の父ちゃんの関係性の話としては、44話よりも、この50話の方が好きです。父ちゃんと章の父ちゃんの短気なところや、意地っ張りで素直になれないところ、相手に怒りながらも、心配をしたり、相手のことを気にしたり、頼りたいけど喧嘩した手前頼ることが出来ない気持ちの処理の仕方に困ったり、最終的には素直に相手を頼り、相手を助けるという行動に出るところの流れが自然だからです。

また、そこにさり気ない息子達(長太郎と章)のフォローの入り方も、スマートでいいなって思います。

『男!あばれはちゃく』50話より
『男!あばれはっちゃく』50話より

長太郎の思い・章の思い

長太郎と章のそれぞれを思う気持ちも、この話の中ではとても心に響いていて、章が初めて来たときに自転車を長太郎が調達してくれた思い出の回想は、章にとっていかに大事な出来事だったのかを噛みしめることが出来ました。

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私はこの回想された話がとても好きなんですが、やはり長太郎と章の仲を語るには外すことの出来ない話なんだなって再確認しました。章が引き出しの中にしまっていた自転車を作る時に使った器具、クラクションなどは章の宝物になっているんだなって思いましたし、同時に章の勉強机を見せることで、章の家が団地を希望している理由も感じられる場面でもあって、見ていて巧いなあって思いました。

『男!あばれはっちゃく』50話より
『男!あばれはっちゃく』50話より

長太郎は、父ちゃんに章の下宿を却下されたことで、今度は寺山先生に章の下宿をお願いします。長太郎は、洋一に続いて章も転校してしまうのが寂しいと寺山先生に言いますが、寺山先生は章はそんな弱い人間ではないと長太郎に言います。

『男!あばれはっちゃく』50話より

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ここで、長太郎が34話で大阪に転校してしまった洋一の名前を出したことで、ああ、長太郎は洋一のことを忘れていなかったんだなということが分かって、ちょっと嬉しくなりました。長太郎にとっては、洋一も章も大事な友達なんだなって。

また、長太郎が転校しないように下宿を考えるのは、初代長太郎が最終話でヒトミちゃんの転校を知って、ヒトミちゃんに自分の家への下宿を提案したのに似ているなと感じました。親しい友人、大好きな女の子との別れは寂しく、下宿という発想が出てくるのもそんな思いからなんだろうなと思います。

章の家の場合は無理かもしれませんが、ヒトミちゃんの場合だったら、単身赴任というのもあったかもと思うのですが、43年前はまだ単身赴任もそんなに一般的ではなかったかなって思います。

長太郎は章の家の引っ越しに複雑な思いを抱きますが、章の団地への引っ越しに対して、邦彦が前向きな発言をしていて、それがまっとうなだけに長太郎の章との別れへの気持ちがさらに複雑になった印象を受けました。そこへ、自分なりに気持ちの整理をつけて、引っ越す事実を受け入れた章の言葉が、長太郎に別れの決断をさせたところも含めて、寂しい別れを受け入れた2人の勇気ある決断に心が動かされました。

相手を思う気持ち

今回は、章の母ちゃんの長太郎のマイナス感情の気持ちが前半にあったところ以外は、とても好きな話で、特に長太郎と章、父ちゃんと章の父ちゃんの人間関係と互いを思う気持ちが伝わってきて、その関係性がとてもいいなあ、好きだなって感じられた話でした。