柿の葉日記

主にテレビドラマ「あばれはっちゃく」について語る個人ブログです。国際放映、テレビ朝日とは一切関係がありません。

『男!あばれはっちゃく』24話「宿題バンザイ」感想

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『男!あばれはっちゃく』24話より

1980年8月30日放送・脚本・田口成光さん・川島啓志監督

戻った?

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『男!あばれはっちゃく』24話より

8月30日から始まる夏休みの宿題がメインの話。長太郎は夏休みの個人研究の為に朝から多摩川へ。一方、みゆきちゃん、洋一、和美ちゃん、弘子ちゃんの4人は個人研究がまだ手づかずで、どうしようかと相談中。そこに多摩川帰りの長太郎が通りすぎていき、長太郎に頼もうかと話しますが、長太郎はあてにならないと、4人は相談の上、邦彦に協力してもらうことに。しかし、邦彦も多摩川に植物採集に行く予定が蛇が出るということで、予定を変更していてやっていない状態。そこで、この蛇の問題を解決すればいいと、洋一が長太郎を利用することを思いつきます。

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『男!あばれはっちゃく』24話より

この場面と洋一の言葉を聞いた時に、なんだか1、2話の頃に戻ったような感じがしました。まだ、洋一も含めて長太郎が転校生のよそ者として仲間外れにされていた時代を思い出したのです。24話まできて、6人で寺山先生の故郷までフェリーに乗って一緒に行った仲なのに、みゆきちゃんはいうに及ばず、和美ちゃんにしても、弘子ちゃんにしても和美ちゃんの家のことや弘子ちゃんのおばあちゃんのこと、邦彦に関してもアニメのセルや部長とのことで、長太郎との信頼を築いてきたのに、長太郎を利用しようと打算的に考えている。

それは、長太郎の物怖じしない性格、蛇ぐらいなんとも思わない性格、みゆきちゃんが大好きな気持ちを利用するのは分かるのですが、なんというか、こう長太郎に頼もうという気持ちの中に、親しみを感じないというか、こう道具として使おうという気持ちの方が強く感じとれてしまったのです。

似たような場面、話展開は初代にもあって、それは、『俺はあばれはっちゃく』23話「たなばた幽霊」(脚本・市川靖さん・松生秀二監督)の回です。この時は、長太郎に頼らず、幽霊の出る竹林にヒトミちゃん、正彦、公一、恵子ちゃんが行くのですが、幽霊に驚いて長太郎を頼って桜間家に4人がやってきます。

初代では七夕祭りに必要な竹を手に入れるための幽霊退治に最初は正彦がヒトミちゃんの話を聞いて長太郎抜きで行くのですが、公一が最初から長太郎を頼りにしていて、それがあるだけでも、後で長太郎を頼っていく場面を見ても、結局は長太郎がいないとダメだよねって感じがあって、いざという時に頼りになる「あばれはっちゃく」って思えるし、正彦の強がりも正彦らしいねって思えるんですけども、2代目『男!あばれはっちゃく』の場合は、一度、長太郎を否定してからの、都合の悪い(蛇の存在)ことを長太郎任せにしようという魂胆がこすっからく見えたのです。

また、初代23話と今回の2代目24話の違いは、最初からマイナス要素を長太郎に伝えているかいないかの違いもあります。初代では幽霊が出ることを長太郎に話していますが、24話では長太郎に蛇が出るからとか、みゆきちゃん以外の4人も一緒に個人研究の植物採取をすることを最初は長太郎に伝えていません。

これが、最初は長太郎を仲間外れにしながらも、最終的には長太郎に頼ってきた初代23話と頼ってきたよりは利用したとしか思えなかった2代目24話の違いなんだと私は思いました。夏休みも終わりになって、ここまで絆を深めてきたのに、ここにきて1話や2話の頃のような関係性に戻ったと感じてしまったのは、見ていてとても寂しく感じてしまいました。

知らないって強い

長太郎はみゆきちゃんの為に、植物採取を手伝うことになり、そこに便乗した洋一達とも植物採取をします。途中で、自分が利用されていたことに気づいた長太郎は蛇のおもちゃを使って皆を驚かし、邦彦が本物の蛇を捕まえて、これも長太郎のおもちゃかと聞くとそれは本物だということで、邦彦はびっくりして倒れてしまいます。おもちゃだと思っていた時は、怖がっていた蛇をへっちゃらで捕まえていた邦彦が本物だと分かった途端に正気を失うのはすごいなって思いました。

というのも、邦彦を演じていたのが、初代でヒトミちゃんの従弟で威勢のいいサトル君を演じていた長野昇一さんだったから。サトル君の時は、そんな蛇なんてへっちゃらな様子の子を演じていながら、邦彦になるとそういうものに弱くなってしまう。蛇やマッチの火など怖くてびっくりするような物があっても、役では平気だという場合は、なんとも思っていない、逆に怖いと思っても平気にしているという演技が出来るというのは、すごいなって思うのです。

5代目長太郎役の酒井一圭さんも『逆転あばれはっちゃく』21話「なるほどザ・奄美大島」でハブが毒があることを知る前と後でのリアクションの違いがあって、怖さを知る前と後の違い、それ以前に、怖さを知りながら怖くないというのが、それが演技だと大人になって見て認識したそういう演技って役者としては基本中の基本なんでしょうけども、素人には無理というか、やはり子役でも役者なんだなって改めてすごいなって思ったんです。

5代目以外は、子どもの頃に見てたんですけど、演技なんて思わなかったんです。それだけ自然で当たり前に見えてたんでしょうね。

ああ、それ!

話を『男!あばれはっちゃく』24話に戻して、邦彦が倒れたことで、また長太郎は怒られるかなって思ったのですが、夜の桜間家の一家団欒の場面で、みゆきちゃん達の個人研究を助けたことで長太郎が褒められ、みゆきちゃんのママからのスイカのお礼までしてもらって、ああ、今回はみゆきちゃんのママに怒られず、感謝されて良かったと思っていたところに、邦彦の父親の佐藤部長からの怒りの電話。ああ、やっぱり、そうなったかと。

長太郎はそこで邦彦の代わりに邦彦の個人研究を父ちゃんとやることに。邦彦の個人研究がなんとかなったところで、長太郎は夏休みの課題帳が手づかずであることに気が付き、みゆきちゃんを頼るも家族でお出かけ、洋一、和美ちゃん、弘子ちゃんに頼るも断れてしまいます。

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『男!あばれはっちゃく』24話より

母ちゃんの力を借りようとしますが、お店で忙しい母ちゃんに断れ、父ちゃんも頼りにならず、信一郎も自分の新学期の勉強の準備で断れ、長太郎は自力でやることに。父ちゃんは長太郎の眠気を覚ます手伝いをしてくれたりするも、途中で寝てしまう。

結局、長太郎は自分の力でなんとか宿題を片付けるのですが、この時の長太郎が最終的に使った手段が面白かったです。この場面、子どもの頃に見ていて覚えていたので、DVDで見た時は「あああ!それだ」って思い出して懐かしかったですね。

なんで?

長太郎が夏休み帳を見つけて、それが全くやっていなかったのを見た時に、みゆきちゃんに最初に頼るのは分かるのですが、その後に邦彦を頼らなかったのが不思議でしたね。邦彦には、個人研究の借りがあるのだから、それと引き換えに夏休み帳を見せてもらうと押しかけても良かったのにと思ったのですが、長太郎の性格からして、それを許せなかったのかなっと、でも、洋一や和美ちゃん、弘子ちゃんのとこには行っていて、個人研究のことを持ち出して愚痴っていたので、それもないなって思うと、成績優秀な邦彦のとこに行かなかったのは変に感じました。

長太郎は、この話に限らず、教室で学ぶ勉強ではなく、自然の遊びの中で身につける勉強、生き物に関する知識は豊富で、今回はその長太郎の知識が活躍する話でしたが、教室で学ぶ勉強に関しては邦彦の方が優秀で、夏休みの宿題では長太郎が得意とする個人研究の宿題と教室の勉強が必要な夏休み帳の宿題は邦彦の得意分野。最終的に、その二つが相互で助け合う形で夏休みの宿題を互いにクリア出来れば綺麗に話が纏まったのにと感じたので、なんで邦彦のとこに行かないのだろうって思っていたのですね。

なんだかんだで、新学期の登校途中で長太郎が邦彦に会って、邦彦が長太郎に自分から夏休み帳をやっていないと思うから、僕のを見せてあげようかって声をかけているので、ここで私の疑問は回収されるのですが、なんだろう、こう、邦彦の夏休み帳をここで出してくるのかっていう感情は残ってしまったのですね。なんか、取ってつけた印象を受けました。私が子ども頃に見て印象的で覚えていた場面を見せ場にする為に、邦彦のところに行かなかったのかななんて思ったりもしました。

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『男!あばれはっちゃく』24話より

邦彦の夏休み帳で長太郎の夏休み帳を片付けてしまうのではなく、長太郎の発想で宿題を片付けるのを最終的に見せたかったのなら、邦彦からの申し出を父ちゃんが断って、長太郎がそれなら自分で最後までやってやらぁってなってのあの最終奥義を使っての宿題完了でも良かったのではないかな、なんて思ったりもしました。

これはこの話を見ての私の感想でしかないんですが、なんていうか、その、この話は上手く纏めることが出来たのに、個人研究と夏休み帳の宿題の話が分離してしまったように感じたのです。長太郎が最後は自力で夏休み帳も片付けるにしても、その合間に邦彦の恩返しが出てきても良かったのになって感じました。

邦彦

それにしても、邦彦はひ弱な都会っ子で意地悪な長太郎のライバルながらも、最後の最後には長太郎にお詫びをして、長太郎の宿題の心配までして自分の夏休み帳を見せようとしたところは、初対面から長太郎に意地悪だったのを見ていると、随分と長太郎に優しくなったなって思います。

邦彦は5年生の終わりで転校していなくなってしまいますが、この邦彦最後の話を書いたのが、今回の脚本の田口成光さんなので、その邦彦の最後の話の52話「愛してみゆきちゃん」の話と合わせてみると、田口さんの中で、邦彦という人物をどのように捉えて、1年間書いてきたのかが少し伺い知ることが出来た24話だなって思いました。

典型的な都会っ子で意地が悪いとこもって、ひ弱でプライドは高いけれども、謝る時は謝れる、悪かったことは悪いと認め、感謝する心をちゃんと持っている子なんだなっていうのが、田口さんの書いてきた邦彦の人物像なのかなって感じました。