柿の葉日記

主にテレビドラマ「あばれはっちゃく」について語る個人ブログです。国際放映、テレビ朝日とは一切関係がありません。

『男!あばれはっちゃく』51話「踊れ!あばれ組」感想

『男!あばれはっちゃく』51話より

1981年3月21日放送・脚本・三宅直子さん・川島啓志監督

みんな主役希望

5年生最後の日が近づき、進級でクラス替えで別れる前に、5年3組はお別れ会をやることに、長太郎のグループでは、長太郎脚本の劇をやることに。長太郎はお別れ会の話が出る前に、拾った亀をヒントにして、『浦島太郎』をモチーフにしたオリジナル劇『マリーンランドの海祭り』。

長太郎は自分とみゆきちゃんを主役にした話を考えるものの、いつものメンバーにおおまかな登場人物と粗筋を伝えると、みんなが主役をやりたがり、長太郎を物で買収したり、弱みを握って脅してみたり、情に訴えてくるありさま。まさにみんなが劇の主役状態で、劇が成立出来ない状態になってしまいます。

弘子ちゃんはショートケーキで長太郎にお願いをして長太郎は断るものの、その時に落としたケーキをドン平が食べてしまうし、和美ちゃんは長太郎が0点のテストを紙飛行機にして捨てたことを内緒にする代わりに、邦彦は何故か木彫りの熊を渡して長太郎にお願いをして、章は長太郎の情に訴えてくるという……。邦彦がお願いする時の貢物が木彫りの熊というのが謎。

『男!あばれはっちゃく』51話より
『男!あばれはっちゃく』51話より

迷った長太郎はくじ引きで配役を決めようとしますが、全員がそれを拒否。劇はしないで、お別れ会に長太郎達のグループは不参加を決めます。長太郎はそれぞれにもらったものを返したりして、借りを返すことで取り引きをチャラにして終わらせます。

寺山先生の敗北

みゆきちゃんから劇の中止と不参加を聞き、長太郎の取り引きチャラの現場を見た寺山先生は長太郎を問い詰め、ふざけた口調で劇の代わりに自分が逆立ちをしてへそ踊りをしてかくし芸をするというと、寺山先生は長太郎を叱責。長太郎は劇をすると喧嘩になるなら、しない方が円満解決だという長太郎に、何もしないで何が円満解決だと長太郎をさらに叱ると、長太郎はどうして自分ばかり叱るのかと反発。

寺山先生もそれを聞いて、邦彦達にも問題があるとしながらも、長太郎に反省するとこはないかと問います。長太郎は「ないやい」とさらに反発。寺山先生はそんな長太郎に問いかけますが、長太郎はその問いを否定していきます。

『男!あばれはっちゃく』51話より

「別れるからこそ、お互いの友情を確かめ合い、また会う日まで、友情の灯を絶やさないことが大切なんじゃないか」

「別れても、惜しくない奴だっていらい」

「そんなふうにしか、考えられないのか」

長太郎をさらに叱ろうとする寺山先生でしたが、その言葉が止まり、今度は寺山先生自身に対しての呟きの言葉に変わります。

『男!あばれはっちゃく』51話より

「いや、これはお前を責めるより、先生自身が反省すべきことなのかもしれない」

寺山先生はそういうと、長太郎のもとを立ち去っていきます。寺山先生にとって、自分の言葉が長太郎に届かなかったことは、とてもショックな出来事で、この時の言葉だけでなく、この1年間の間で5年3組で培った「絆」が長太郎達の中で育ってなかったことが分かってしまったことも含まれていたのが、後で父ちゃんに会った時に口にした寺山先生の言葉から分かります。

それは、寺山先生にとっては、ある意味、教師としての敗北だったのだな、と思いました。

みゆきちゃんの為に

寺山先生から話を聞いた父ちゃんに怒られ、みゆきちゃんがみゆきちゃんのママに叱られているのを見て、さらにこんな状態でみんなとクラスが別れてバラバラになることを泣くみゆきちゃんを見て、長太郎はどうにか劇が出来るようにと気を入れ直して、奔走します。

邦彦、弘子ちゃん、和美ちゃん、章に希望の役をやらせることを約束して、長太郎達は劇をすることに。一方で、寺山先生が6年生の持ち上げで担任をすることをやめて、1年生の担任として、一からやり直すことを決めてしまいます。長太郎達がそれを知って、自分達もお別れ会に参加するからと言って、ギリギリで寺山先生が1年生担当になることを阻止。

長太郎の原動力には、みゆきちゃんが大きく影響するんだなと感じたのと、寺山先生の思い詰めた決意を感じました。長太郎が最初の自分の思惑から離脱して、悪役を買って出たり、それでも自分がやりたかったみゆきちゃんの相手役のおいしい役に嫉妬して、最後の最後で我慢できなくなったりするところは、長太郎のカッコいいとこも、辛抱が少し足りないところも含めて長太郎らしさが出ていたな、と思いました。

長太郎の原動力には、みゆきちゃんが大きく影響するんだなと思いました。みゆきちゃんは寺山先生がまた担任になることも望んでいたので、長太郎が劇をやることを決めて、それが出来るように頑張ったのは、みゆきちゃんの為になるのと同時に、自分の教育方針に自信をなくしていた寺山先生も救ったことになったのだなと思いました。

5年3組の最終回

今回の話は、1年間の5年3組というか、長太郎達レギュラー6人の絆を確認する話だっと思うのですが、みんなが自分が自分がでは、纏まることも出来ないんだなとか、みんなの為に、好きな人の為に自我を犠牲にする必要もあるんだなって感じた話でした。

ただ、長太郎は自分を犠牲にして、悪役や雑用係をしたわけですが、自分の感情までは犠牲にしていなくて、完全な自己犠牲ではなくて、最後は自分だけが損な役回りなことに反発して自分の欲求を開放しているところがいいなと私は思いました。

劇や物を作るのに、一番目立って、得をする人だけでは成立しなくて、いろいろな役割があって出来ている。誰かの為にしたことが、別の誰かを助け、最終的に自分も助けられていると感じられた話でした。

また、寺山先生が人と人の絆を大切にしていることは、別れの多い話の中では、とても重要なことだとも思います。消えてしまう絆や縁もありますが、互いに助け合い、必要とされて、大事にされる絆は途絶えさせたくはないなとも思います。

物理的な距離、心理的な距離、年月の距離などで、それはとても難しいのですけれども。後、1話を残して『男!あばれはっちゃく』の5年生編は終わってしまうことを考えると、この話は5年3組としての最終回の一つだったと思いますし、それがハチャメチャで、はっちゃくらしい楽しい終わり方だったのも良かったと思います。