柿の葉日記

主にテレビドラマ「あばれはっちゃく」について語る個人ブログです。国際放映、テレビ朝日とは一切関係がありません。

『男!あばれはっちゃく』63話「家出のコーチだ」感想

『男!あばれはっちゃく』63話より

1981年6月13日放送・脚本・安藤豊弘さん・磯見忠彦監督

章が行きたかった未来

今回は久しぶりに珍しく、アバンタイトルから触れます。アバンタイトルで長太郎と章がタイムマシーンを完成させて、章の希望で未来に行くことに。章が希望した未来は2001年。これは多分、映画『2001年宇宙の旅』(1968年)にかかっていると思うんですけれども、1981年の段階でも、当然ながら2001年は未来。

ノストラダムスの大予言も信じていた時代で、世紀の変わる2001年なんて、はてしない未来だったんですよね。それが、今、2022年のからみたら21年も前の過去。わらさんの保育園の園児の皆さんにとっては、生まれる前の遥か昔。はてしない未来が既に過ぎ去った過去になっていることに、大きな時間の流れ、過ぎ去った月日の大きさを感じました。

これは、2022年に見返したからこその感情で、当時は未来に行こうとして失敗しちゃったんだなっていうぐらいの感想しかなかったのですが、時を経てこんな情感を感じるアバンタイトルになるなんて、思いもよりませんでした。

『男!あばれはっちゃく』63話より

さて、ここから本編の感想です。

信一郎の担任

今回は、信一郎が通う中学校に信一郎を誹謗するビラが撒かれたことが事件の始まりです。信一郎があたかも洋子さんと(ビラでは洋子さんはY子さんと記載)不純な男女交際をしているかのようなビラ。そのビラを信じて信一郎が否定するも激しく非難するスズキ先生。

それにしても、信一郎はスズキ先生に受けが悪いから、自分の事を信じてもらえずに重い処分が出ることを心配していますが、私は成績優秀な優等生の信一郎が担任のスズキ先生に受けが悪いということに驚きました。弟の長太郎ならともかく、信一郎が!とびっくりです。

スズキ先生みたいな先生というと、初代『俺はあばれはっちゃく』に登場した音楽の五十嵐先生を思い出します。五十嵐先生は長太郎を疎ましく思い、優等生の正彦を優遇していましたが、信一郎ってどちらかといえば、正彦タイプの優等生じゃないですか。それで、担任の先生に目をつけられていたなんて、とびっくりしました。

それから『男!あばれはっちゃく』のファンの人達には、当然、周知の事実だと思いますが、スズキ先生を演じた西岡慶子さんは『男!あばれはっちゃく』の1年目で、長太郎の親友の洋一の母親を演じていました。『男!あばれはっちゃく』の1年目で長太郎の親友の洋一の母親役だった人が、34話の洋一の転校と共に作品世界を去ったと思ったら、2年目には長太郎の兄の担任として再登場。

あばれはっちゃく』シリーズでのスピンオフは珍しくありませんが、同じ世界観の作品内で、同じ俳優の人が別役を演じているというのは驚きです。

『男!あばれはっちゃく』63話よりスズキ先生

『男!あばれはっちゃく』8話より洋一の母親

洋一の母親の時は大阪出身という設定だったので、関西弁丸出しでしたが、スズキ先生の時はそうではないから、関西弁はそれほど出ていません。でも、西岡さんが元々関西の人だから、言葉のイントネーション、発音が関西弁なので、言葉遣いや服装を変えていても、顔と声で洋一のお母さんを思い出してしまいます。

ふと、わらさんのとこの園児の皆さんは大混乱したのではないのかな、なんてことを思いました。

他にも同じ『あばれはっちゃく』の作品内で、別役で再登場する例はありますし(4代目『痛快あばれはっちゃく』に出演した青木和代さん等)西岡さんだけではないのですが、同じ世界観に同じ人が別役で出演しているのは、なんだかびっくりですね。4代目『痛快あばれはっちゃく』に青木さんが出演していた件に関しては、下記の過去記事で扱っています。

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人を思う心

信一郎は洋子さんに迷惑をかけないために転校を決意しますが、父ちゃんを説得することが出来ずに家出を遂行します。自分よりも洋子さんの事を第一に考える信一郎の思いの深さと優しさ、洋子さんに対して守りたいという強い意志を感じました。また、洋子さんに思いを寄せる信一郎と洋子さんのクラスメイトのタカオカ君の登場。タカオカ君は信一郎を中傷するビラを手に怒りを見せていたクラスメイトであり、洋子さんにラブレターを手渡した人物。

この時点で、視聴者の中にはだいたいのビラを撒いた人間の目安がつくわけですが、その証拠や手掛かりとなるものが判明していく部分で、いつもの『男!あばれはっちゃく』に登場する人物たちの言動や性格がきっかけになって、手掛かりが出てきて、その手掛かりに気づいて、長太郎が犯人にたどり着く話の流れが見事だなって思いました。

人を好きになって相手のことを思ったり、好きな人と仲の良い人に嫉妬したり、恋愛を罪だと考えるスズキ先生のような大人がいれば、寺山先生のように人を好きになることが素晴らしいことだと考える大人もいる。寺山先生は今回も恋愛について寛容な考えを示していましたが、邦彦が転校する時にも人が人を好きになることは素晴らしいと話していました。

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嫉妬や独占欲で相手を苦しめる恋愛もある一方で、相手のことを大切に思う恋愛もあり、人を大切にする恋愛というのは、悪いことではないんだなっていうこと。信一郎の恋愛は大好きな洋子さんを大事にする恋愛である一方で、親に心配をかける愛し方。好きな人や自分を大事にしてくれる親も大切にする愛し方というのは、とても難しいのかなと思ったりもしました。

それを両立させている人もいると思いますが、好きな人と親とどちらかを選ばないといけない人も世の中には存在していて、誰を一番に思い、大切にするかというのは、人それぞれの立場や環境の違いで変わるんだろうなって思いました。なんか、今の私にとっては、この話はとても深く心に突き刺さってきました。

信一郎の方でも

長太郎は犯人の良心に訴える形をとり、晒し者にすることはありませんでした。また、今回の話では、信一郎をいじめていた松田と竹田の2人が中学校に乗り込んできた長太郎の肩を持ってくれました。

『男!あばれはっちゃく』63話より

以前は信一郎を厄介に思い、精神的にも肉体的にもいじめていた2人が49話の話で反省して、その後は長太郎と信一郎を認めてくれたことが、この63話の今回の話で分かって嬉しく思いました。

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『男!あばれはっちゃく』は長太郎が主人公なので、信一郎の中学の同級生のその後の話が出てくる比率は少ないのですが、たまにこうした経過を見せてくれることは嬉しいです。ちゃんと信一郎の方にも物語があるんだなって感じられるからです。

良心に訴える

私は長太郎が犯人が分かっていながら、信一郎のクラスメイト全員の前で晒し者にしなかったこと、犯人である人物の良心に問いかけたことが素晴らしいと感じました。また、犯人である生徒が長太郎や松田や竹田の呼び掛けに対して、恥ずかしく感じた仕草をしたことが、その犯人にある良心を感じ取れました。

犯人の中に良心がなければ、今回の事件は解決することはなかったと思います。犯人の良心に賭けた結果、長太郎の賭けは成功したわけですが、残念ながら良心のある人間ばかりとは限りません。今回の犯人は嫉妬心からビラを配りましたが、それを恥じる心、良心が存在していました。

私は、恥じる心、良心の大切さ、必要性をこの話からすごく感じました。人は間違いを犯したりすることもあるけれど、それを恥ずかしいと思い、正そうとする気持ちや行動が必要でそれが自身の信頼にも繋がっていくんだなって思ったのです。

いろいろと失敗することもあるし、嫉妬心で人を傷つけることもあるけれど、それを正す気持ちと行動は大事なんだなって思います。

駅の伝言板

さて、この話、だいたいドラマの中でいつの時期の話だったのかというのが、駅の伝言板で推測が出来ます。この伝言板はドラマの中の小道具で、ドラマの日時設定に合わせていると思うのですが、信一郎が家出をした時は6月11日。最後の長太郎がみゆきちゃんとデートをした約束の日がこの話の放送日の6月13日だと分かるので、6月11日~13日までの出来事になります。もしかしたら、11日ではなく1日前の6月10日からの出来事だったかもしれません。

『男!あばれはっちゃく』63話より

『男!あばれはっちゃく』63話より