柿の葉日記

主にテレビドラマ「あばれはっちゃく」について語る個人ブログです。国際放映、テレビ朝日とは一切関係がありません。

『男!あばれはっちゃく』70話「燃えろキャンプだ」感想

『男!あばれはっちゃく』70話より

1981年8月8日放送・脚本・安藤豊弘さん・松生秀二監督

予定が狂った夏休み

今回は長太郎が夏休みに行くはずだった群馬への帰省がなくなった話。また、信州に行く予定だったみゆきちゃんも信州には行くことなく最終的に長太郎と河原でキャンプをすることになります。

長太郎が群馬に行けなくなったのは、信一郎が録音していた英語講座のテープをダメにしてしまったから。長太郎は夏休みの自由研究で、虫や鳥の声を録音することを思い立ち信一郎のラジカセに入っているテープをそのまま使って、英語講座の番組に上書き録音してしまったのです。

それで長太郎は罰として楽しみにしていた群馬の帰省がなくなり、父ちゃんも仕事の休みが取れなかった為に長太郎と父ちゃんが残留組に。長太郎を心配した父ちゃんからの頼みで寺山先生が長太郎のところに来て、河原で2人でキャンプをすることに。そこに、長太郎が群馬に帰れなくなった理由を知った洋子さん、長太郎が心配で帰って来た母ちゃん、信州に行かなかったみゆきちゃん、遅れて群馬から戻って来たカヨちゃんと信一郎が合流します。

信一郎の決断

今回の話は遠出しなくても、貴重な体験、楽しい特別な体験が出来て楽しめるというのがあって、それは、話の冒頭で夏休みに何処に行くか、どんな予定があるかをいつもの6人のメンバーが話していて、仙台の親戚の家に一人で行く予定の克彦、いつものように信州に行く予定のみゆきちゃん、家族で帰省にする悦子ちゃん、群馬のお祖父ちゃんの家に帰省する長太郎とその時点で夏休みの予定があるメンバーを羨ましがる(特に章)がいる描写があるからこそ、特別な予定がなくても、遠出をしなくても、夏休みを楽しめるというのが生かされていました。

ただ、この話はそれ以上に、長太郎が群馬に帰省できなくなった理由になった信一郎の英語講座の録音の件が大きく話に影響していたように思いました。信一郎は三カ月かけて10回分の放送を録音して、夏休みにその録音を聴いて勉強をしようとしていたのが、長太郎のせいで、全ておじゃんになってしまって、長太郎を怒鳴り当たり散らしします。信一郎にしては珍しく、長太郎と取っ組み合いの殴り合いにまで発展して激しく怒りをぶつけます。

普段の真面目で勉強熱心の信一郎が勉強道具を台無しにされて怒る姿は、当然の姿でそこには何の違和感もありませんでした。ただ、その後、群馬の前橋からカヨちゃんと一緒に戻って来た信一郎が、カヨちゃんに促されて、父ちゃんに本当のことを言わなきゃと言われていて、信一郎が父ちゃんの顔色を伺いながら、躊躇い、意を決して本当のことを言う姿から、信一郎が長太郎に怒ったのは、テープを台無しにされただけではないということが分かります。

父ちゃんは、長太郎が信一郎のテープを台無しにした時にいつものように激しく叱りましたが、その後、信一郎から真実を知った時にも同じように信一郎を激しく叱りました。父ちゃんは信一郎の進学の為に東京に上京してきて、信一郎の為にマンションの1室を借りるぐらい信一郎には甘いのですが、それでも信一郎が嘘を誤魔化しをしたことに関してはしっかりと怒っていて、また、父ちゃんに謝る信一郎に「俺に謝っても仕方がない」と言います。

『男!あばれはっちゃく』70話より

信一郎の嘘によって迷惑を受けたのは長太郎なのだから、長太郎に謝るのが筋というのが父ちゃんの見解で、これは父ちゃんに限らず、誰が見てもそうだろうと思います。迷惑をかけた相手、傷つけた相手に謝らないといけない。誰に謝罪するかはっきり分かる時は、その相手に謝るのが筋。

信一郎は10回分の放送を録音したと言ったけれども、本当は初回だけしか録音をしていなくて、長太郎に当たったのは1学期の英語の成績が悪くてイライラしていたのもあって、長太郎に当たってしまった。群馬に帰るまでの間、信一郎はどんな心の葛藤を抱えていたのだろうか。父ちゃんに話すことを迷っている信一郎の姿にそんなことを考えました。

そして、信一郎が父ちゃんに怒鳴られることを覚悟の上で戻ってきて、長太郎にもちゃんと本当のことを言って謝る勇気ある信一郎の姿に真の強さを感じました。

母ちゃんの態度

母ちゃんは、信一郎とカヨちゃんより先に戻っています。また、信一郎がカヨちゃんからの情報で長太郎が河原にいることを知って、河原に来た時に母ちゃんが長太郎に正直に話した後で信一郎にかけた言葉を見て、母ちゃんは群馬から戻ってくる前に信一郎から話を聞いていたのではと思いました。

けれども、母ちゃんは信一郎と一緒には帰ってこなかった。無理やり連れてくるのではなく、母ちゃんは信一郎が自主的に戻る気持ちが大きくなって、戻ってくることを選んだのではないかなって感じたのです。その時に、信一郎の不安定になる気持ちのフォローをカヨちゃんに頼んだじゃないかなって。

馬を水辺に無理やり連れていくことは出来ても、無理に水を飲ませることは出来ないと言われて、どんなにやらせようとしても、本人の意思がなければ、行動させることは出来ない。信一郎が早くに戻ってきて本当のことを長太郎や父ちゃんに打ち明けるのか、予定通り群馬にいて戻ってきてから言うのかまでは分からなくても、それがいつになっても、母ちゃんは信一郎の内側から出てくる意思に任せたんじゃないかなって。

子ども内側から出てくる良心を母ちゃんは信じたのだと思うのですね。それだけ、自分の息子を信頼しているんだなって思いました。長太郎も勝手に信一郎のカセットテープを使って、最初は激しく反発していたものの信一郎の物をダメにしたのは事実で、その責任は感じていて、それを洋子さんに相談して信一郎が必要だった英語講座のテープを洋子さんから貰っていて、長太郎も長太郎で責任を取って信一郎にちゃんと謝っている。

『男!あばれはっちゃく』70話より

長太郎と信一郎の勇気

最初、長太郎も信一郎も自分は悪くないという態度でしたが、ちゃんと自分の悪い部分を認めて、誤魔化すことなく相手に向き合って互いにちゃんと謝罪した姿に私はとても心を打たれました。この話はそんな桜間兄弟の潔さと勇気が大きくクローズアップされた話だったように思います。

この話で以前過去記事で紹介した幻の挿入歌『おれは男だ』(作詞・松生秀二監督、作曲山内賢さん)が初めて出てきます。この『おれは男だ』は今回の話の中で見えた桜間兄弟の潔い男らしさを歌う歌のように私には感じました。このドラマは私も含め当時の女児も見ていましたが、主人公が男児であることから、男の子に向けを意識していますが、長太郎と信一郎が見せた勇気と潔さは女の子にも向けられたメッセージだと思います。

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内側から自分の誤魔化しを正そうとする心が育まれていたからこそ、長太郎と信一郎は互いに罪を認め、相手を許すことが出来たのだろうと思うと、とても単純で分かりやすい話だけど、とても深い話だったんだなってそう感じました。余談ですけど、章もマリ子ちゃんも予定がない、どこにも行けないと言っていたのだから、河原のキャンプに誘っても良かったのになって思いました。後は、1人家に残された父ちゃんがちょっと可哀想でしたね。

『男!あばれはっちゃく』70話より