柿の葉日記

主にテレビドラマ「あばれはっちゃく」について語る個人ブログです。国際放映、テレビ朝日とは一切関係がありません。

『男!あばれはっちゃく』39話「当たれチャウチャウ犬」感想

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『男!あばれはっちゃく』39話より

1980年12月20日放送・脚本・市川靖さん・松生秀二監督

サンタクロースの存在

下校中に寺山先生のアパートでクリスマスパーティをやることになった長太郎達。長太郎はパーティの食べ物に大きく期待を膨らませ、食べたい食べ物を列挙していくと、弘子ちゃんからクリスマスと言ったらサンタクロースを頭に浮かべなくちゃと言われてしまします。章と長太郎はサンタクロースなんていないと身も蓋も夢もないことを言ってしまいます。

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『男!あばれはっちゃく』39話より

「そんなのいないんだよね」

「当たり前じゃないか」

サンタクロースを信じている幼児に容赦のない長太郎の言葉。過去記事で5代目を除く拡大のアバンタイトルからクリスマスネタを紹介した時に、サンタクロースの扱いについて言及しましたが、そこで初代はサンタクロースが実在しないことを匂わせていたが、次第にサンタクロースがいるかもしれないと視聴する幼児に配慮していったのではと考察しました。

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が、2代目のこの39話で明確にサンタクロースの存在を章と長太郎が否定していましたね。ただ、面白いのはこの後で、邦彦が長太郎と章の言葉を否定してきたことです。長太郎はそれに反論して、さらに邦彦がその長太郎を馬鹿にするので、ちょっとした喧嘩になってしまうのですが、そこは寺山先生も傍にいたからなんとか落ち着きます。

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『男!あばれはっちゃく』39話より

「あれ、知らないの君。サンタクロースって本当にいたんだぜ」

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『男!あばれはっちゃく』39話より

「ばーか、いい加減なこと言うんじゃねぇよ。それは夜中に父ちゃんがこっそり置いといてくれるもんなんだよ」

面白いなって思うのは、優等生の邦彦がサンタクロースを実在していると言っていて、サンタクロースの存在を信じているかと思われる長太郎と章がその存在を信じていないことですね。長太郎達は小学5年生ですから、サンタクロースがどんな存在かは知っていてもおかしくない年齢ですし、章の家庭環境を考えると信じないのも当然かなって思います。

けれども、邦彦はサンタクロースが実在していたと自信たっぷりに言っています。ここで邦彦が言っているのは、現在のプレゼントを配るサンタクロースのモデルになった人物のことを言っていて、弘子ちゃんを発端に出てきたみんなが連想するサンタクロースとは別であることなんですよね。

邦彦のいう実在したサンタクロースと長太郎達が言うクリスマスにプレゼントを配るサンタクロースは別(元は同じだとしても)。別のことを話しているから、どちらも嘘ではないという。サンタクロースが実際にはいなくて、長太郎のいうのことが真実だと知って現実的になっている、その先をいってサンタクロースの元になった起源、モデルの人物の存在までも知っているのが邦彦になっている。

夢見がちな子どもが信じるサンタクロース、さらにプレゼントをくれる現実の存在を知っている長太郎、さらにその先のサンタクロースのモデルになった実在の人物を知っている邦彦というように、サンタクロースは実際にいる(いた)という表面の言葉だけ見ると、長太郎より夢見がちで子どもっぽい邦彦が実は長太郎よりも物知りで大人だってことが、この一連の会話から分かります。

それでも、子どもの頃はそこまで考えて見ないから、そうだよね、長太郎と章の言う通りだよね。え、サンタクロースって本当にいたの?って邦彦の言葉に引っかかる。現実の世界を見せながら、サンタクロースの存在を完全否定はしていないという。

長太郎達の会話だと今もサンタクロースが生きていてプレゼントを配っているイメージだけど、邦彦の言葉は「いたんだぜ」の過去形なのだから、現在にいないサンタクロースがどうやってプレゼントを配るのってとこで、今はいないとかサンタクロースのモデルになった人がいたんだって気づくんですけれども。サンタクロースのモデルと言われる聖ニコラスにたどり着くまでは、あの頃はまだなかったなあ。

改めて考え直すと『あばれはっちゃく』はサンタクロースの現実をはっきりと示しながら、完全否定をせずに、サンタクロースの存在にまだ希望を持たせていて、その希望が事実であるというところ、それに気づくか気にしないか程度に見せているところがいいところだなって思いました。

憧れの君になれなかった

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プレゼントの話が出たところで、長太郎がみゆきちゃんに何が欲しいかと聞くのですが、その前に和美ちゃんと弘子ちゃんが欲しい物を言い始め、長太郎は2人を邦彦に押し付けます。

30話の写真の時もそうなんですが、なんか邦彦は和美ちゃんと弘子ちゃんの相手を長太郎に押し付けられることが多いですね。それに和美ちゃんと弘子ちゃんの2人も乗っかって邦彦に甘えてくるところが邦彦の受難。

邦彦も急に言われても困ると言いながらも、なんだかんだで出来る範囲で答えようとするところは律儀だなって思います。優しいのか優柔不断なのか。邦彦もみゆきちゃんのプレゼントを考えたいのに、長太郎のように行動が出来ないところが邦彦の性格なのかなあとも思ったり。和美ちゃんと弘子ちゃんに強く言い出せないのは、2人がみゆきちゃんの大切な友人だからなんだろうなって思います。

2人に嫌われることも嫌だろうけれども、その2人を嫌な気持ちにさせたことでみゆきちゃんに嫌われるのが嫌だから強く出れない。8話で邦彦が自分の自分の誕生日会で長太郎を仲間外れにした時にみゆきちゃんに軽蔑されたことで反省して長太郎に謝ったのを見ても、邦彦の行動基準も長太郎と同じでみゆきちゃんに嫌われたくないところからきているように思います。

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ただ長太郎がみゆきちゃん以外には嫌われても構わないというぐらいの思い切った行動が出来るのに対して、邦彦が八方美人になっているところが違うかなあ。そうしたところで邦彦は和美ちゃんと弘子ちゃんにいいように使われてしまっているなって思いますね。

初代の正彦が明子や小百合にとっての憧れの君であったのと比べると、邦彦はそこまで女の子達の憧れになりきれなかったのは、良く言えば邦彦の優しさ、悪く言えば優柔不断にあったように思います。でも、そんな邦彦と和美ちゃん、弘子ちゃんの関係が話を面白くしていたなって思います。

運のいい長太郎

長太郎はみゆきちゃんが大きいチャウチャウ犬のぬいぐるみを見ているのを見て、それをクリスマスパーティのプレゼントに思いつき、小遣いを集めて買いに行くのですが、千円だと思っていたぬいぐるみが一万円で買うことが出来ずに家に戻ってきます。

長太郎がぬいぐるみを買いに行く前に、母ちゃんとカヨちゃんがストーブを直していて、長太郎はそこを飛び越えていくんですけど見ていて、とても危ないなって思ってしまいました。長太郎のぬいぐるみとこのストーブ。この2つが一見、関係がなさそうでそうではなかったというのが面白かったです。

父ちゃんはストーブをボーナスで買う約束をしてくれるのですが、不景気でボーナスが少なくストーブが買えない事態に。長太郎は父ちゃんのボーナスが減ったのを邦彦から聞いたみゆきちゃんに聞いて知ることになり、また、ボーナスで買えなくなった父ちゃんが商店街の福引きで特賞の温風ヒーターを引き当てようとしているところを見かけ、そこで、福引きの3等賞が買えなかったチャウチャウ犬のぬいぐるみだと知った長太郎は福引きにかけることになります。

父ちゃんは温風ヒーター、長太郎はチャウチャウ犬のぬいぐるみ。それぞれに好きな人の為に懸命に引くのですが、なかなか思いの物は当たらない。おまけに父ちゃんは福引きを引くために買ったお酒のせいで母ちゃんに怒られる始末。長太郎も母ちゃんに小遣いをせびって文房具を買って福引き券を手にしても、枚数がたりなくて1回しか出来ない。その1回で出したのが父ちゃんが欲しがっていた特賞。

父ちゃんが福引きを終えた後に長太郎がきて特賞を出したものだから、父ちゃんは大喜びするけれども、長太郎は目当てのチャウチャウ犬じゃないからと玉を戻してしまって特賞は無効に。なんか、この長太郎が玉を戻しちゃうシーンは覚えていて、ああ、この話だったかと懐かしく思い出していました。この後も長太郎は福引きをするんですが、少ない回数で確実に当てているのを見ると、長太郎は強運の持ち主なんだなって思います。

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『男!あばれはっちゃく』39話より
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『男!あばれはっちゃく』39話より

不思議な存在

この後の父ちゃんの嘆きようといったら。長太郎は案の定、家で父ちゃんに殴られるんですが、これは完全に父ちゃんの八つ当たり。長太郎も正論で父ちゃんに反発します。初代の長太郎もそうだったんですが、父ちゃんに正当性がないと長太郎は反論しますね。

今回の脚本は市川靖さんなんですが、市川さんが初めて『あばれはっちゃく』の脚本を書いた初代『俺はあばれはっちゃく』5話でも会社で嫌なことがあった父ちゃんが長太郎を殴った時に長太郎が父ちゃんに言い返していて、父ちゃんは何にも言い返せなかった。今回も長太郎は勝手な父ちゃんの言い分に言い返しています。

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『男!あばれはっちゃく』39話より

「汚ねぇや、子どものおつかい横取りして、母ちゃんにゴマすろうなんて」

この長太郎が言い返す前の父ちゃんの理屈が父ちゃんの勝手が盛りだくさんになっていて、これは長太郎が言い返すのも通りだなって思うわけです。ただ、このやり取りを見て母ちゃんが父ちゃんにストーブが買えなくてお酒を買ってきた父ちゃんを怒ったこと謝るんですね。

母ちゃんはボーナスが減ったことは知っていたけど、父ちゃんが代わりに福引きで温風ヒーターを当てようとしたことは知らなかったから。ストーブの代わりにお酒で温まろうと考えたんでしょうと嫌味も添えて。けれども、父ちゃんがなんとかしようとしたのは分かったから、母ちゃんは父ちゃんに謝る。父ちゃんの理屈も勝手なんだけど、決して自分の為だけではない。家とお店のストーブは家族の為になることでもあるから。

けれども、父ちゃんが長太郎に向って、一等をなかったことにしたのは「自分のことしか考えていないのか」というのはお門違い。父ちゃんの方こそ、自分のことだけを考えて長太郎のことを考えていなかったわけで、長太郎に言い返されても仕方がない。けれども、そんなやり取りを見て、父ちゃんの気持ちが母ちゃんに伝わり、父ちゃんと母ちゃんの仲はより深くなった。

長太郎はそんな両親を見て、大人って分かんないっていうけれども、基本、大人も子ども同じ人間なのだから、そんなに変わらない。大人になると少し見栄を張ったり、素直さがなくなるぐらいなのかな。父ちゃんも素直に事情を話せばこんなややこしいことにならなかったのだと思います。

素直に自分の気持ちや思いを行動に起こせる長太郎には不可解なことだったかもしれませんね。自分の気持ちを素直に出せる長太郎は、周囲のあれこれの影響を考えてしまう父ちゃんや邦彦から見ると逆に不思議な存在に見えるのかもしれません。

父ちゃんの今回のような時に理不尽な八つ当たりの時は、長太郎は毅然と反論していて、それは先に出したように初代5話からあるんですけれども、こうした長太郎の性格は初代の佐々木先生にとっては憧れの生き方であって、初代33話で佐々木先生が母ちゃんに話すんですよね。

長太郎の真っすぐさ素直さというのは、大人になっていくにつれて、難しい生き方になってしまうんだなあってことを改めて思います。

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みゆきちゃんの優しさ・邦彦の意地悪さ

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『男!あばれはっちゃく』39話より

長太郎はカヨちゃんの協力を得て、もう一度福引きにチャレンジをして見事目当てのチャウチャウ犬を当てるのですが、名前を書いてしばらく置いておくと言われてドンペイを身代わりにして、パーティ会場の寺山先生のアパートに向かいます。

長太郎を待ってもこなくて、先にパーティを始まる寺山先生達もみゆきちゃんのプレゼント交換は一番最後の言葉になんか救われたなって。みゆきちゃんはその前も邦彦から長太郎の父ちゃんの会社のボーナスが少ないことを聞いていて、チャウチャウ犬を無理なしなくてもいいと言っていて、その気遣いがやはり優しいなって思います。

長太郎とみゆきちゃんは夕日の中で会話をしていたんですが、この時も夕日が綺麗で印象的だなって思いました。この寺山先生のアパートではみゆきちゃんの優しさと気遣いが目立つ他に邦彦の意地悪さも感じた場面でしたね。

長太郎はもうこないからパーティを始めようと言い出したのも邦彦でしたし。ケーキを食べる時も心配するみゆきちゃんにかぶせる形で「おいし」って言ってたりして、和美ちゃんや弘子ちゃん、転校していった洋一のお別れ会の時もそうでしたが、みゆきちゃんは当たり前として他の人達に対しての気遣いが出来る邦彦が長太郎にだけはそれをしないというのは、露骨だなって思いました。

長太郎にだけは邦彦は自分のマイナスの感情をストレートにぶつけてくるというか、この関係性はずっと続きましたね。長太郎を目の敵にしているというのが邦彦のキャラクターの一つでしたから仕方がなかったのかもしれません。

ホワイトクリスマス

長太郎はギリギリプレゼント交換には間に合ったけれど、長太郎が一番楽しみにしていたパーティの御馳走が食べられなくてがっくりきていて、でも、そこは寺山先生。長太郎の分はちゃんととってある。長太郎も安心してプレゼント交換からパーティに参加。

パーティは夜まで続いてゲームで盛り上がる。そこには、長太郎に身代わりにされたドンペイもいる。このドンペイが勝手に来るわけはないから長太郎が迎えに行ったのかなとか、長太郎だけでなくみんなで行ったのかなとか、商店街の人が連れてきてくれたのかなとか、いろいろと想像が出来るのが楽しいですよね。

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『男!あばれはっちゃく』39話より

ゲームで盛り上がって、みゆきちゃんが窓の外の雪に気づいて、みんなが外を見る。寺山先生がクリスマスに雪が降ることが珍しいと話していましたが、確かに東京でクリスマスに雪が降るのは珍しく、調べてみると実際の1980年の12月24日の夜は雨、12月25日の夜は晴れだった記録が残っています。

また、私の父方の祖父は東京の人で子どもの頃は父の実家の東京に帰省することもありましたが、雪が降るのにはあまり遭遇したことはありませんでしたね。東京でも今年の1月6日や昨日(2月10日)には雪は降りましたね。

雪国に住んでいた身としては、雪はあんまり嬉しくないんですけれども。生活に支障が出ない程度の雪なら嬉しいかなあ。実際には降らなかった東京のクリスマスの雪。それは、ドラマだから降った雪だけれども、ある意味サンタクロースからのプレゼントだったのかもしれないって考えると楽しいなってそんなふうに思います。

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『男!あばれはっちゃく』39話より