柿の葉日記

主にテレビドラマ「あばれはっちゃく」について語る個人ブログです。国際放映、テレビ朝日とは一切関係がありません。

『男!あばれはっちゃく』65話「やせるゾがまんだ」感想

『男!あばれはっちゃく』65話より

1981年6月27日放送・脚本・三宅直子さん・松生秀二監督

まだダイエットの言葉がなかった時代

マリ子ちゃんとみゆきちゃんが逆上がりが出来なくなったことから、太り過ぎを克彦に指摘され、長太郎のような体形にならないようにと言われたところからみゆきちゃんとマリ子ちゃんが太り過ぎを気にします。

同じ頃、新しく出来たビューティースクールのポスターを見ているカヨちゃん。カヨちゃんも太り過ぎを意識して、そのスクールに通うことを決め、母ちゃんも同じ理由で通うことになります。

そんなわけで、長太郎の周囲の女性陣が今回の話は、このフランスビューティースクールに痩せることを目的にして通うことになり、長太郎達も母ちゃんとカヨちゃんの減量計画に巻き込まれていきます。

『男!あばれはっちゃく』65話より

さて、初代でも恵子ちゃんが減量をしているのではないかと、明子や小百合達が心配する話(『俺はあばれはっちゃく』30話「毎度おせわがせマル秘作戦」1979年9月8日放送)がありましたが、この話の中で「ダイエット」という言葉は出ていませんでした。その初代30話から、2年後に放送された今回の話の中でも「ダイエット」という言葉は登場していません。

今では痩せて綺麗になるという意味で使われている「ダイエット」という言葉は、1979年~1981年の頃は、まだ一般的な言葉ではなかったんだなってことが、『あばれはっちゃく』を見ていて分かります。気になったので、「ダイエット」という言葉がいつ頃使われだしたのかを調べてみると、1980年代以降とされているので、『男!あばれはっちゃく』65話が放送された前後かその後で一般化されていった言葉なんだなってことが分かりました。

65話が制作され、放送された頃は、「ダイエット」という新しい言葉が使われだして、定着していく過渡期だったようですね。今では「ダイエット」の方がスッと情報が入ってくる言葉ですが、『俺はあばれはっちゃく』と『男!あばれはっちゃく』放送当時の1979年、1980年、1981年の頃は、まだまだ「減量」という言葉の方がしっくりくる時代だったんだなって思いました。

今、見るといろいろと

母ちゃんとカヨちゃんの減量計画に巻き込まれて、桜間家の食卓はサラダメインに。特に一番の被害にあうのが、長太郎と父ちゃん。

「お腹の肉を掴んで、百科事典ぐらいあったら赤信号なんですって」

と、明るく言うカヨちゃんの言葉に、一斉に腹を摘まんでみる父ちゃんと長太郎。その父ちゃんの摘まんだお腹を見て、信一郎、曰く。

『男!あばれはっちゃく』65話より

「百科事典、5冊分はあるね」

長太郎と父ちゃんは引用画像にあるトマトジュースの他には、サラダのみの朝ごはんでしたが、信一郎は痩せていて、また、勉強で頭も使うということで、トーストと目玉焼きをつく、今まで通りの普通の朝食。

父ちゃんと長太郎も無理な食事制限に付き合わされて、常に空腹状態になってしまいます。最初は父ちゃんは減量の為なら、近所でジョギングでもしとけばよいというんですけど、カヨちゃんや母ちゃんの言葉に負けて、ビューティースクールに通うことを許可して、減量計画に付き合うことになるんですね。

やはり父ちゃんも太り気味であることもあって、痩せて健康になることに反対する理由もなく、それでも、なんだか、ビューティースクールに行って運動しては、体を痛がっている母ちゃんやカヨちゃんを見て、冷やかしの言葉を入れたりしているのを見ると、ビューティースクールに対して、眉唾に感じているんだなって思いました。

母ちゃん達も、ビューティースクールの先生の指導に疑問を感じて、意見を言ってはいるんですが、なんとなく丸め込まれてしまっているんですね。ものすごくインキチ臭くて、なんか見ているだけでも気持ち悪いなって思うんですけれど、せっかくお金を出しているのだから、信じたいという気持ちが母ちゃん達にあって、あんまり強く追求出来なかったのかなって思ったりしました。

この話を現在、2022年になって見ていると、父ちゃん役だった東野英心さんが、この話が放送された19年後の2000年11月14日に58歳で他界されていること、長太郎役だった栗又厚さんが痩せていること、また、信一郎役だった須田さんが過去にネットで、信一郎を演じていたとは思えないような中年太りした体型になりましたと書き込みされていたのを知っていると、なんというか、こういろいろな思いが駆け巡りました。

人の心の弱みに付け込み馬鹿にする人間って嫌だな

結局、このビューティースクールの講師と経営者はインキチ、詐欺師だった訳で、体型をからかわれて傷ついたり、コンプレックスを感じている人や、綺麗になりたいという気持ちに付け込んで、その人の心を馬鹿にした挙句、騙して金を巻き上げる卑しい人間の気持ち悪さと滑稽さが出ていたように思いました。

今回、母ちゃんやカヨちゃん、みゆきちゃんやマリ子ちゃん達をカモにした、コンドウ・マコトもアラン・田原も嫌な奴らだなって思いましたが、みゆきちゃんやマリ子ちゃんがビューティースクールに通うきっかけを作った克彦も、ビューティースクールに通って減量に励む母ちゃんとカヨちゃんを少しからかい気味に見ていた父ちゃんに対しても、ちょっと嫌だなって感じました。

克彦も父ちゃんにも悪気はなかったと感じるんですが、太り気味であると年頃の女の子の体型や体重をいじることや、信じているものに効果がないと馬鹿にされることって、私はとても心にダメージを受けることなので、そうした本人の心を少しずつ傷つけて、無理な減量をさせるきっかけを作り出すのって、嫌だなって感じたのです。

そうして傷ついた人を狙って、詐欺をする人間が出てきてしまう。人の心を無意識に傷つける人がいて、その傷がある人が存在することを知っている人が、その人達を狙ってインキチで金儲けをするっていうのは、今回の話に出てきたビューティースクール以外にも、結構、巷に溢れているなって思います。

人の心の隙間に入って、その隙間を慰めてくれるものがインキチで、それでもそれを信じている間は、救われて幸せというのは、なんだか歪で嫌ですね。心の安定を保つものが偽りであれば、騙されたと分かった時の絶望感は計り知れないですから。

別に故意に第三者が傷つけなくても、生きていると人って、悲しくて理不尽な出来事に遭遇して、心が傷ついて落ち込んでしまうことってあると思いますが、そうした弱った心の人に付け込んで、利用して金儲けをする人間、嘘を吹き込んで、人の心理を操る人間がこの世からいなくなると、世の中はもう少し、平和になるんじゃないかなって、そんなことを思いました。

世の中には、傷ついて落ち込んで、騙される人間が馬鹿で悪いんだっていう人もいることは知っていますが、そういう人を利用する人の方が、個人的な感想ですが、私は嫌いです。

ただの石が1万円

『男!あばれはっちゃく』65話より

詐欺師達は更なる金儲けの為に、今度はただの石を磁気があって体に良いと1万円で売ってきます。値段に驚き、訝しく思った母ちゃんもカヨちゃんも周囲のスクールの生徒につられて、その石を買ってしまいます。訝しく思っていても、買った後では、石に効果があると信じて、そんな石があるなら、医者なんていらないという父ちゃんにお医者さんでも治せないのを治すと言い返すカヨちゃん。

もう、この時点で矛盾が生じている。医者にも治せない石が存在しているのなら、もう、その時点でこの世の中には医者がいないはずなのに、医者は存在している。なにしろ、みゆきちゃんのお父さんの大島医院がお隣にあるのだから。

長太郎が信一郎に意見を求めると、信一郎は「人間は弱いから、ちょっと非科学的だけど、自分がいいと思うことをやっていれば、いいじゃないの」と答えます。その言葉を聞いて「鰯の頭も信心から」の言葉が頭に浮かびました。プラシーボ効果という言葉も。

『男!あばれはっちゃく』65話より

動き出した長太郎

それで、救われているうちはいいでしょうけれどね。私が驚いたのは、みゆきちゃんも1万円の石を買ったこと。それも、お小遣いを貯めてと。小学6年生の女の子が出す1万円って大金ですよ。ここでようやく長太郎が動き出します。信じているうちは効果があるかもしれません。けれども、実際は何の効果もないただの石に1万円も小学生の子どもが出すなんて大問題。みゆきちゃん、お母さんに怒れなかったのかなあ……。

『男!あばれはっちゃく』65話より

長太郎は磁気があるなら、磁石につくはずだと母ちゃんの石をとって、確認をして、それが磁気のないただの石だと確認します。

この後、カヨちゃんの協力を持って、長太郎はビューティースクールのインキチの証拠を手に入れるのですが、その証拠を取るに至る経緯は、少し弱く感じました。お店のお客さん達に石を売るということで、大量発注させて、浮かれて石がただの石だと喋る、コンドウと田原の会話を長太郎と章が録音するのですが、2人が石の秘密を暴露したのは、単なる偶然にしか見えなくて、2人が石について真実を語るまでに追い詰める展開がなく、録音準備をしてきた長太郎達もたまたま運が良かっただけに見えたからです。

この点が、もう少し2人の詐欺師を追い詰めて、真実を浮かび上がらせるようになっていたら、良かったなと思いました。その点で言うと、『俺はあばれはっちゃく』11話「お作法破りマル秘作戦」の長太郎が小田原を追い詰めた作戦の方が上のようだったように感じました。

すしてりあ

今回の話の中で、みゆきちゃんとマリ子ちゃんが買い食いしようとしたお店として、「すしてりあ」が登場します。wikiで調べてみると1985年に設立されたとあるのですが、この話は1981年の話。

さらに調べてみると、弦巻通りに「すしてりあ」というお店が存在していました。ちなみに弦巻通りの「すしてりあ」はGoogleマップの情報によると、2022年4月頃に既に閉店しています。Googleマップの写真にある閉店を知らせる張り紙には「約40年間本当にありがとうございました」とあるので、ひょっとしたら、そこがみゆきちゃんとマリ子ちゃんが太巻きを4本買ったお店ではないかなって思ったりします。

違う可能性もあると思いますが、ドラマの中に出てきたすしてりあの場面と、すしてりあ弦巻通り店のGoogleマップを参考までに。

『男!あばれはっちゃく』65話より

Googleマップすしてりあ弦巻通り店。

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