柿の葉日記

主にテレビドラマ「あばれはっちゃく」について語る個人ブログです。国際放映、テレビ朝日とは一切関係がありません。

『男!あばれはっちゃく』59話「あばれ夫婦だ」感想

『男!あばれはっちゃく』59話より

1981年5月16日放送・脚本・田口成光さん・川島啓志監督

何故かいろいろ重なる

宿題を忘れる人が多いということで、忘れないようにと班で連帯責任を取ることになり、長太郎も同じ班のみゆきちゃんと宿題を忘れない約束をする。長太郎が珍しく宿題をやろうとする時に限って、父ちゃんが仕事を家に持ち込み、母ちゃんの仕事も忙しく、父ちゃんの面倒を見ることが出来ずに、長太郎が父ちゃんの用事、タバコやら父ちゃんの仕事で使う特殊な消しゴムやらを買いに行かせて宿題をさせない邪魔をするという……。

父ちゃんは父ちゃんなりに自分の身の回りのことをしているという訳だけど、それでも宿題をしようとする長太郎やお店の仕事をしているカヨちゃんにお使いを言いつける。母ちゃんがそれを拒否すると、父ちゃんは自分の事はやっているといった挙句に母ちゃんに、自分にかみさんがいないみたいだと言い放つ。

『男!あばれはっちゃく』59話より

「いくら忙しいたってな、俺と店とどっちが大事なんでぃ」

「父ちゃん……」

「お茶に、コーヒーにインスタントラーメン。今朝から俺は、全部自分でやっているんでぃ。これじゃ、まるで俺にかみさんがいないみたいじゃねぇか」

父ちゃんも大事な仕事で苛立っているのも分かるけれども、母ちゃんも長太郎もそれぞれにやらなければいけない仕事や宿題があって、決して暇じゃないんですよね。暇で何もしていない、父ちゃんの都合の為に動いてくれる、世話をしてくれる時間と余裕がない時だってあって、それぞれに自分がしないといけないことがあるのに、父ちゃんは自分を優先して欲しいという気持ちがとても大きいように感じます。

なんか、長太郎が宿題や勉強をやる気になる時に限って、いろいろと家族がやるべき課題が重なって、すんなりと行かなくなってしまうんですね。長太郎が宿題を忘れない話だと思っていたら、父ちゃんと母ちゃんの喧嘩、というか父ちゃんの我儘のせいで長太郎が邪魔をされるから、まずは父ちゃんと母ちゃんの仲を修復することが今回の話のテーマになっているなって思いました。まあ、サブタイトルからして、今回は父ちゃんと母ちゃんの話なのは察しがつきますね。

対等な立場から上下関係が明確に

見かねて長太郎がタバコを買いに行くんですが、父ちゃんは調子にのって駅前のデパートまで消しゴムを買いに行かせる始末。長太郎はちっとも宿題に取り掛かれない。挙句長太郎が消しゴムを買って帰ってきたら、母ちゃんは店を閉めて、父ちゃんと険悪ムード。

長太郎がなんとか2人の仲を取り持とうとして、母ちゃんに父ちゃんへビールをすすめたら、母ちゃんが盛大に父ちゃんが仕事で描いていた図面にビールをこぼしてしまうという……。この時の父ちゃんの怒りと怯えた母ちゃんが見ていて辛い。父ちゃんは怖いし、母ちゃんの心情を思うと居たたまれない。

父ちゃんの図面をダメにしたことで、父ちゃんが被害者、母ちゃんが加害者という図式が出来上がってしまいました。母ちゃんが加害者って思う人もいると思いますが、仕事を台無しにされ被害を受けた父ちゃんは、母ちゃんを責めたてる正当な理由を手に入れたことになり、被害を出した母ちゃんは申し訳なさで心がいっぱいになった状態。

これまでは対等なというか、母ちゃんも父ちゃんに強気に出ることが出来ていたのが、父ちゃんの図面をダメにしたという負い目が出来てしまって、強く出ることが出来なくなってしまったことで、対等な関係から、上下関係が生まれてしまった。なんだか、自分のやるべき仕事を我慢して引き下がった母ちゃんの立場が弱くなって、父ちゃんの怒りに怯えている母ちゃんが本当に可哀想でした。

『男!あばれはっちゃく』59話より

全てお芝居なんだけど

2人の仲は悪化して、信一郎もカヨちゃんも長太郎も困ってしまう。長太郎は章の家の夫婦喧嘩で章が団地のドアに手を挟んで怪我をしたことで両親が心配して喧嘩を忘れたことを参考にして、実行するも長太郎では相手にされず、今度は信一郎を使って父ちゃんと母ちゃんの喧嘩を止めることにしたのだけど、もう少しのところで、信一郎と長太郎の芝居がばれて、父ちゃんと母ちゃんが怒り出して、そこでまたひと騒動。

逃げ回る長太郎と信一郎だけども、ついに信一郎が怒る父ちゃんと母ちゃんに涙ながらに長太郎と自分がこんなことをしたかを訴えたことで、父ちゃんと母ちゃんはようやく謝ってくれる。父ちゃんと母ちゃんを仲直りさせる為の長太郎と信一郎の下手な芝居よりも、信一郎の心からの訴えの方が父ちゃんと母ちゃんの気持ちを動かしている。

『男!あばれはっちゃく』59話より

「止めてよ、こんな騒ぎはもう。僕だって好きでこんなことをしたわけじゃないんだ。いい加減にしてくれよ、こんな騒ぎはもう」

『男!あばれはっちゃく』59話より

「長太郎だって、僕だって、早く父さん達に仲良くなって欲しいって思っているのに、みんなが困っているのが分からないんだね」

この信一郎の言動も『男!あばれはっちゃく』がドラマである限り、お芝居の一つに過ぎないのだけども、この信一郎の言葉は本当の心からの叫びに聞こえてきて、その前の長太郎と信一郎の分かりやすいちょっと大げさでわざとらしい一芝居があったことで、この信一郎の言葉が心からの声に感じました。

ドラマの中の芝居を見て、ドラマの芝居に現実を感じるというのは、なんだか不思議な話ですね。

人は自分の為だけに生きている存在ではない

父ちゃんと母ちゃんの夫婦喧嘩が原因で家庭内が気まずくなり、長太郎も宿題が出来ない、信一郎でさえも勉強が出来なくてテストの成果が良くない、カヨちゃんも気を遣うは仕事も出来ない。父ちゃんのイライラの不満が父ちゃんだけでなく周囲の人まで嫌な気持ちにさせて、みんなの日常を滞らせてしまう。

なんだか、父ちゃんが自分で少し動くか事前準備をしておけば良かったのになって思う部分が多い話でした。自分の気が向いた時に妻や子、姪が動いて当たり前という考え、自分以外の人間には何も都合がないと思うのは、なんだか勝手だなって感じます。父ちゃんは父ちゃんなりに動いていたとしても、相手の都合を考えていない行動だったのは変わりなかったですし……。

まあ、そういう人って男女問わずにいますよ。今回は父ちゃんがそうだったという訳で、上げ膳据え膳で当たり前な人が多かった時代でしたね。今もいると思いますけど、父ちゃん、今回の事で反省してくれるといいなあ。

学校よりも家庭のこと

ふと気づいたのですが『あばれはっちゃく』って長太郎の学校での話よりも、家庭の話のことの方がちょっと多いような気がします。今回も長太郎の宿題をなんとかする話かなとおもったら、父ちゃんと母ちゃんの話が主体でしたしね。それは、長太郎の学校生活、人間関係の話も主体になることもありますが、長太郎やみゆきちゃん、章たちの両親の話になることも多いですよね。

信一郎の訴えで話が丸く収まった後でのオチは、長太郎の宿題をやったかに話が戻ってきて、そのオチが綺麗に収まったのが良かったなって思いました。どんなオチかはDVDで確認してみてください。家での騒動があって、長太郎の学校生活に影響が出てくる。なんだかんだいっても、家庭環境って大事だなってそんなことを思いました。