柿の葉日記

主にテレビドラマ「あばれはっちゃく」について語る個人ブログです。国際放映、テレビ朝日とは一切関係がありません。

『男!あばれはっちゃく』33話「あばれプロレス」感想

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『男!あばれはっちゃく』33話より

1980年11月8日放送・脚本・市川靖さん・磯見忠彦監督

小学生の恋愛相談の相手は難しい

今回は和美ちゃんの恋の話。長太郎達が河原でさつま芋を焼いて食べようとしていたところに家の仕事のお手伝い帰りの和美ちゃんを見かけて誘い、和美ちゃんは集金バッグを近くのベンチに置いて参加、さつま芋を焼いて待っている間にその集金バッグを取られ、その瞬間を長太郎が目撃して、全員で泥棒を追いかけることに。

その泥棒は、たまたま通りかかった信一郎と信一郎の通う中学の生徒会長、広田こうじとぶつかったことで、無事に捕まえることが出来て、和美ちゃんの集金バッグも無事に取り戻すことが出来ます。この時に和美ちゃんは広田生徒会長に一目惚れ。

この和美ちゃんの一目惚れから始まる今回の話。泥棒が釣り師で魚籠に鯉を入れていたり、それが広田生徒会長にぶつかった時に鯉が飛び出て、なぜか和美ちゃんがその鯉を持っていたり、後日、国語の授業中に具合が悪くなったように見える和美ちゃんを保健室で休ませ、寺山先生が様子を見に行った時に「恋」と勘違いするような寝言を言わせたりと、「鯉と恋」の聞き間違い、勘違い、誤魔化しを定番、お約束だなと見ていました。

しかし、初代『俺はあばれはっちゃく』体育の跳び箱で股間を打った長太郎が保健室で休んでいた時に佐々木先生が来て、長太郎の心配を聞いた時もそうなんですが、小学生の恋とか将来結婚できない心配とかを聞く、佐々木先生と寺山先生の気持ちってどんなんかなって思ったりします。どちらにも笑って大丈夫というか、たいしたことないという形に持って行った先生ですが、初代長太郎と和美ちゃんの態度は正反対でした。

初代長太郎の場合はストレートに結婚できない不安も口にしましたが、和美ちゃんの場合は照れくささから誤魔化してからの恋煩いの胸が苦しいことへの相談だったので、寺山先生は安心してからの無神経な言葉になったわけですが、笑って大丈夫だというにしても、なんというかちゃんと心配や不安を口にしたのと、照れくささから誤魔化した後では、同じ対応でも違ってくるのは当たり前かなあ。

男の子だからとか、女の子だからとか、初代長太郎と和美ちゃんは別人だからというよりも、それりゃストレートに不安に思っていることに対して言われた場合と、恋で悩んでいるのかな?って思ったら、鯉の夢を見ていたと言われた後で、「胸が苦しい」と聞かされたら、既に「恋」に関してのことは選択肢から消えているわけで、和美ちゃんの質問に恋以外の可能性を捨てて答えたら、単なる食べ過ぎという回答になってしまうだろうなあ、と。

でも、恋する乙女の和美ちゃんに、芋の食べ過ぎで胸が苦しいんだろって言ったら、それはデリカシーがないと和美ちゃんに嫌われてしまうのも仕方がないかなあ。小学生とはいえ女の子。寺山先生も大変だなあって思っちゃったりしました。

プロレスが好きな2代目長太郎

今回の話を見ていると、2代目長太郎はプロレスが好きなようです。初代長太郎もプロレスを見ていたわけですが、どちらかというと熱心に見ていたのは父ちゃんの方で、初代長太郎は部屋にボクシングのポスターを貼っていて、どちらかといえば格闘技のスポーツはボクシングが好きなようでした。

対して、今回はサブタイトルが「あばれプロレス」というのもあってか、長太郎がプロレスの試合を熱心に見ていたり、またプロレス雑誌を何冊か持っていたことから、プロレスファンだったのかなってことが伺い知れました。初代の父ちゃんが長太郎の動物園に連れて行ってという熱心なお願いをよそにプロレスを見ていたのに対して、2代目の父ちゃんは長太郎が熱心に見ていたプロレスのテレビを切っているところが対照的でした。

長太郎が見ていたプロレスの試合、長太郎がアントニオ猪木さんを応援しているので、猪木さんの試合だというのは分かるのですが、映像がないのでどの試合かが分からず、実況も聞こえるので、プロレスマニアの人ならその実況で分かるかもしれません。

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『男!あばれはっちゃく』33話より

2代目の場合、ここで長太郎がプロレス好きだということは、長太郎がプロレス雑誌を持っていることに繋がっていて、ストーリーにも関係してくるので、長太郎をプロレス好きにしているのかなあって思いました。また、父ちゃんはプロレスに関心がないというよりは、テレビばっかり見ていないで勉強して信一郎を見習えと言ってるので、2代目以降の教育熱心な父ちゃんの一面と話の流れからの行動だったりするのかなって。

2代目の父ちゃんも多分プロレス技だと思うのですが、長太郎に技をかけているのをみるとプロレスが全く嫌いなわけではないのかなって思ったりします。見様見真似で長太郎に技をかけているようにも見えますが。信一郎は全くプロレスには興味がなくて、それは後で、広田生徒会長からもらった文化祭の出し物のプロレスの台本に書いてあるプロレス用語が全く分からなかったことからも分かります。

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『男!あばれはっちゃく』33話よりr
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『男!あばれはっちゃく』33話より

そこで、信一郎は長太郎のプロレス雑誌を見ることになり、ここから長太郎がプロレスをテレビで見るだけでなく、雑誌を買うほどにプロレスが好きだということが分かるのですね。信一郎は長太郎から広田生徒会長からもらったプロレスの台本が自分が悪役のやられ役だということを教えられ、プロレス技を教えてもらうことになるわけです。ここで長太郎が多彩なプロレス技を知っていることで、さらにプロレス好きだということが分かると共にさり気なく、プロレスには台本があるんだよってことを示唆しているのが面白いなって思いました。まあ、子どもの頃は実際のプロレスが今回の話と同じように台本があるなんて思いませんでしたしね。

私はお笑い芸人のくりむしちゅーが海砂利水魚時代から好きなのですが、くりむしちゅーの2人はプロレスが好きなのですね。でも、海砂利水魚時代に出した本の中で、上田さんはプロレスが台本ありきだと知ってプロレス熱が冷めたのに対して、相方の有田さんはそれでもプロレスが好きということが書いてあって、プロレスも一つの芝居みたいなもんかって思ったことがあったのです。

なんというか、こう児童ドラマでプロレスに台本があるんだよってことを大体的に出しているってことは、既にプロレスはスポーツではなく、台本ありきの格闘ショーであることは公然の秘密というか、みんなが理解して見ていた娯楽、エンターティナーだったのかな、なんて思いました。

私自身としては、子どもの頃、家族や母の実家に帰省した時に祖父母や祖父母と同居していた従兄家族がプロレスが好きなので、一緒に見ることがあったのですが、プロレスが苦手でした。私の目にはとてもプロレスがスポーツに見えなかったのですね。パイプ椅子で殴って流血したりとか、リングを離れての場外乱闘が多すぎなのが見ていて嫌だったのです。でも、それもこれも計算された、ある程度台本通りの進行だと分かって見たら、また違う楽しみ方も出来たりしたのかな、なんて思うようにはなりました。

プロレスがある意味、ドラマのように台本があって、筋書きのあるものだとしたら、好きな選手に肩入れしたり、その背景を含めて楽しめるのかなと。そもそも、私はドラマや漫画、アニメ、劇が好きな人なので、プロレスもちょっと荒っぽいそれらと同じものだと思えば良かったのかなって思ったりしたのですが、まあ、子どもの頃はスポーツだと思って見ていたので、こんなのスポーツ、格闘技じゃないっていう反発心が強かったです。(プロレスファンの方ごめんなさい)

弘子ちゃんが広田生徒会長が出る出し物がプロレスだと分かって、「オーバーだわ、私帰る、趣味悪いわ」って言って帰ってしまいますが、そんな弘子ちゃんを見て、私と同じだって思いました。弘子ちゃんはプロレスが嫌いというよりは、大げさな煽りに呆れていたようですけれどね。

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『男!あばれはっちゃく』33話より

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今回は和美ちゃんが広田生徒会長に恋をして、それを心配したみゆきちゃんが長太郎に相談して長太郎が軽くあしらったことから、みゆきちゃんに怒られて、長太郎が本気を出してその恋愛問題に取り組むのですが、長太郎が出した解決法が、3話で信一郎が千春さんに恋をした時と同じ方法のラブレター攻撃。みゆきちゃんが気付いた和美ちゃんの広田生徒会長への思いの気持ちもノートに相手の名前を書き連ねているもので、信一郎の時と同じでしたね。

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『男!あばれはっちゃく』33話より

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長太郎がラブレター作戦を思いついた時は、また、誤字だらけのラブレターで広田生徒会長に顰蹙を買って和美ちゃんが困ったりするのかなって思ったら、そうならずにホッとしました。長太郎がラブレターを渡そうとすると、登校中に次々と女子生徒から手紙をもらっている広田生徒会長の姿、そこにみゆきちゃんが来て手紙を渡していて、それを目撃した長太郎は大ショック。それに加えて広田生徒会長はみゆきちゃんの手紙も含めてもらった手紙をまとめてゴミ箱にポイ。

長太郎はみゆきちゃんの手紙まで捨てたことに腹を立てて、その捨てた手紙を回収。そこでみゆきちゃんの手紙を探して、みゆきちゃんが自分と同じことを考えていたと知ってホッと一息。3話と同じ展開かなと思っていたところで、みゆきちゃんの登場と長太郎のプチ失恋を挟んだこと、もらった手紙を封を開けずにポイ捨てしたことで広田生徒会長の人間性を見せて、それを長太郎に回収させたことも含めて、長太郎と広田生徒会長の人の心に対する態度の違いを見せているのが面白なって思います。

長太郎も最初のみゆきちゃんの相談は笑っちゃうんですけど、その後で自分のみゆきちゃんに対するイメージ回復の為とはいえ、和美ちゃんの恋の為に考えて手紙を書いてみたりしているところは、長太郎自身がみゆきちゃんに恋をしているからこそ、恋をする人の気持ちが分かっているのかなって思ったりするんですね。自分が恋をしているから、恋をしている人が書いた手紙をポイ捨てする広田生徒会長に腹を立てるわけですし。

みゆきちゃんは恋煩いで元気のない友人の和美ちゃんを心配しての行動だから、後で長太郎からその話を聞いて、広田生徒会長に幻滅して、こんな人を和美ちゃんが好きだったら、和美ちゃんが傷つくと心配するところは、相変わらずみゆきちゃんって優しいなって思います。

長太郎はラブレター作戦以外に、洋一を和美ちゃんにあてがって、恋人同士にさせるように仕向ける作戦も立てるのですが、この場面では見ている私の心臓がやばかったですね。見ていて、とても、怖かったです。恋愛の気持ちがないのに和美ちゃんに告白させるっていうのは、洋一も嫌がってましたけど、和美ちゃんだって嫌だろうし。見ていてヒヤヒヤしました。長太郎もなあ、もう少しマシな考えがなかったのかって思いましたよ。この場面、笑いの場面だと思うのですが、今、地上波で流すと怒る人も出てくるだろうな、なんて思いましたし、私でも笑うに笑えなくて心臓に悪かったです。

スローモーション

今回の監督は磯見忠彦監督でしたが、なぜか今回はスローモーション演出が多かったですね。恋する和美ちゃんがジャンプする場面とか、信一郎が長太郎にプロレス技を教えてもらう場面とか、和美ちゃんがプロレスで活躍する場面とかで多用されていて、スローモーションが多いなっていう印象を受けました。

台本の台本

広田生徒会長が出る出し物がプロレスだと知って、弘子ちゃんは呆れて帰ってしまいますが、和美ちゃんはいいじゃないって言ってプロレスを見ているところから、恋は盲目なんだなって思いました。

長太郎とのプロレスの練習で足をねん挫した信一郎の代わりに出てきた長太郎にやりまくられている広田生徒会長を応援している和美ちゃんを見て、台本があるのになあって、冷めていた私がいました。

広田生徒会長は台本通りに長太郎が動いてくれなくて、愚痴を言い出していましたが、和美ちゃんには聞こえていなくて、長太郎は自分の目論見が外れたかなって不安になってきます。

広田生徒会長の本性を知り、自分の兄を悪役レスラーに仕立て上げて文化祭でええかっこしいをしようとした広田生徒会長を懲らしめ、和美ちゃんの目を覚ましてやろうと長太郎は考えたのだろうと思いますが、和美ちゃんはピンチになっていく広田生徒会長を応援。

しかし、あまりにもやられっぱなしの広田生徒会長を見ていられずに、和美ちゃんがいきなり着物で参戦。あっという間に長太郎を倒してしまいます。

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『男!あばれはっちゃく』33話より
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『男!あばれはっちゃく』33話より

和美ちゃん、強い。めっちゃ強い。小学生にも勝てない広田生徒会長に愛想をつかして去っていきます。しかし、これもドラマ『男!あばれはっちゃく』の台本なんですよね。

メタ的に見ると、プロレスにも台本があるように、ドラマ『男!あばれはっちゃく』にも台本がある。和美ちゃんの予想外の参戦も台本がある、答えのある行動だったということ。

子どもの頃は、そんな筋書きのあるドラマ、嫌な言い方だと「やらせ」だと思わなくても、思わぬハプニング、予想外の出来事、長太郎が描いていたのとは違っても結果的に目的を果たしたということで、「事実は小説よりも奇なり」の面白さを感じることが出来ましたが、大人になって見返すと、二重の意味で作られた台本通りの展開になっている。

台本ありきのプロレスから現実の予想外の展開も実は台本だったという二重のオチに気づくと、未来の誰にも分からないそれぞれの人生のドラマに対してのドキドキ感の方がより大きいかもしれませんよっていうメッセージになっているのかなって、深読みしてしまったりします。

この深読みは私個人の勝手な妄想なので、見当違いかもしれませんが、なんというか、恋のドキドキと何が起こるか分からない人生のドキドキをかけていたりしてって思ったり、そんで「つり橋の恋理論」なんてことも思い出したりしましたね。

肩書に弱い

和美ちゃんが広田生徒会長と初めて会った時に、和美ちゃんが一番注目していたのが、生徒会長バッチだったんですね。和美ちゃんは広田生徒会長に一目惚れしたことは確かだと思うんですが、この話を最後まで見ていくと、和美ちゃんは光り輝く生徒会長バッジに一目惚れしたんじゃないかなって思います。

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『男!あばれはっちゃく』33話より

後、和美ちゃんが惚れっぽいのって、なんか和美ちゃんのお母さんに似てるのかもって思ったりしました。だって、和美ちゃんのお母さん独身の寺山先生に言い寄っている場面があったりしたから。誰彼構わずではなくて、寺山先生だけでしたけど。

和美ちゃんは女の子のメンバーの中では、一番、恋愛感情が出ていた女の子だった思います。和美ちゃんは弘子ちゃん、邦彦と同じく1年目の5年生だけのレギュラーだったので、もう少しで出番はなくなってしまうのですが、最後までレギュラーでいて欲しかった人物の一人でしたね。

その和美ちゃんの前に次回では、長太郎の親友であり、今回和美ちゃんへの偽りの告白を強要された洋一が『男!あばれはっちゃく』の舞台から去ってしまいます。これも作られた話なのですが、それでも別れの話はつらいものがありますね。この世界から去ってしまうことには変わりはないのですから。

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『男!あばれはっちゃく』33話より34話予告