柿の葉日記

主にテレビドラマ「あばれはっちゃく」について語る個人ブログです。国際放映、テレビ朝日とは一切関係がありません。

消した原作の設定を取り入れた2つの『あばれはっちゃく』

原作に一番近い設定の初代『俺はあばれはっちゃく』だったが

あばれはっちゃく』シリーズの中で、一番、原作の設定に近いのが初代『俺はあばれはっちゃく』です。このブログで、散々書いてきたことなので、このブログに来てくださる方は、もう分かっていると思いますが、そもそも、『あばれはっちゃく』はシリーズ化の予定がなく、2クール(全26話)で終わる予定の1作限りのドラマでした。ちなみに、1クールというのは、放送業界用語で週一で放送されるドラマ等に使われる放送単位です、13週(13話)で一区切りになっています。

週一のドラマが1年間放送された場合は4クール放送されることになるので、当初『あばれはっちゃく』の放送は、その半分、半年で終わる予定のドラマでした。だから、最初の『俺はあばれはっちゃく』は原作の設定を生かしながらも、ドラマ独自の要素を加えたドラマになったのだと思います。

それが人気が出て、シリーズ化が決まると、2代目以降はドラマオリジナル設定が増えていきました。長太郎が転校生になったり、母ちゃんが仕事をするようになったり、長太郎の姉が兄になったり、母ちゃんの仕事をお店の従業員が登場してきたりと、2代目以降に作られた設定がシリーズの定番になっていきました。

かろうじて、初代を覚えている私と同世代と私よりも年上でしっかり初代の設定を覚えている世代と2代目以降からしっかり覚えている世代では、同じ『あばれはっちゃく』シリーズを見ていても、微妙に知っている設定の違いがあって、話が合わなかったり、また、幼い時に見ていると、2代目以降は似たような設定だからこそ、ごっちゃになって覚えている人もいるのではないかなって思っています。逆に母ちゃんの仕事の違いで代ごとにしっかり区別している人もいかるかと思います。

そんなわけで、とにもかくにも、山中恒先生の『あばれはっちゃく』をドラマ化する目的で作られた最初の『俺はあばれはっちゃく』は、小説の『あばれはっちゃく』のドラマ化だからこそ、ドラマオリジナルがあるにせよ、他の代よりは、元々の『あばれはっちゃく』の人物設定を生かして作られています。

ですが、そんな原作の設定を多く取り入れた『俺はあばれはっちゃく』でも、取り入れていない設定もありました。その一つが、ヒロイン、ヒトミちゃんに対する設定です。

ヒトミちゃん

山中恒先生の『あばれはっちゃく』のヒトミちゃんは長太郎のクラスに転校してきた転校生。そして、ヒトミちゃんにはヒロシという弟がいます。『俺はあばれはっちゃく』のヒトミちゃんは転校生ではなく、弟も存在していません。ドラマにはヒトミちゃんの従弟のサトル君が登場してきますが、原作のヒロシ君とは性格も名前も違います。

このドラマで省かれたヒロインの設定は、『俺はあばれはっちゃく』に続く2代目『男!あばれはっちゃく』でも、3代目『熱血あばれはっちゃく』でも引き継がれ、ヒロインが転校生で弟がいる原作の設定はありません。

しかし、ヒロインが転校生というのと、弟がいるという設定が、4代目『痛快あばれはっちゃく』、5代目『逆転あばれはっちゃく』から出てくるのです。ただし、転校生であるというのと弟がいるという設定が同時に使われていません。

まず、ヒロインが転校生という設定は4代目『痛快あばれはっちゃく』に、ヒロインに弟がいるという設定は5代目『逆転あばれはっちゃく』に使われています。

転校生のヒロイン

過去にも記事にしましたが、『あばれはっちゃく』は4代目『痛快あばれはっちゃく』から、これまでの定番、お約束だった要素に変化を加えていきました。大きく分かる変化があるのは、最終作になった5代目『逆転あばれはっちゃく』ですが、シリーズの中でも、変化を加え始めた2作品が、それまでの3作品が取り扱わなかった、原作のヒロイン、ヒトミちゃんにある設定、転校生というのと、弟がいるという設定を持ち込んだのは、面白いなって思います。

kakinoha.hatenadiary.com

4代目ヒロイン、まゆみちゃんは長太郎と一緒に転校してきました。長太郎は学区変更による転校でしたが、まゆみちゃんのお父さんの春日教頭先生が教師で、転勤があるという職業だったことが最終回にまゆみちゃんが転校することに無理がなく、放送が2月で終わることを踏まえて、まゆみちゃんの卒業式を待たずに、春日教頭先生が校長として転任する理由が出来て、そこにドラマが生まれています。

f:id:kutsukakato:20210825130600j:plain
f:id:kutsukakato:20210825130205j:plain
『痛快あばれはっちゃく』93話より

4代目の最終回は4代目ならではのオリジナルがある一方で、原作『あばれはっちゃく』のヒトミちゃんの転校のエピソードを思わせる要素も含まれていて、これは原作を重視していた初代『俺はあばれはっちゃく』の最終回にも繋がっている、ある種の原点回帰になっていると感じました。

全く同じではなく、ニュアンスが似ているというか、底辺に流れるテーマが同じで、所々に、あ、原作であったのだ、あ、初代であったのだと私は感じ取ったので、人によっては、まったく違うじゃないって思うかもしれません。

kakinoha.hatenadiary.com

また、原作『あばれはっちゃく』の長太郎は5年生から6年生に進級していますが、初代『俺はあばれはっちゃく』は1979年2月3日から放送が始まって、その時点で初代長太郎は5年生でしたが、新年度になった4月以降も5年生のままで進級しませんでした。しかし、4代目長太郎達は5年生から6年生に進級しています。

4代目は6年生になった時に、としこ役の飯島由起さんが山本けい子役の波田小百合さんに入れ替わった以外は、レギュラー子役が5年生から変わらなかったのもあって、2年近く育んだ絆の深さを感じました。

2代目『男!あばれはっちゃく』も2年続きましたが、みゆきちゃん以外の長太郎の同級生4人は入れ替わっているので、2年という長期でメイン同級生が1名しか変わっていないのは、4代目の大きな特徴だと思います。過去に他の代には見られない4代目『痛快あばれはっちゃく』ならではの特徴について記事にまとめています。

kakinoha.hatenadiary.com

原作『あばれはっちゃく』での長太郎にとって、宮村ヒトミと一緒にいる、卒業することはとても重要なことで、それは、ドラマの初代長太郎、4代目長太郎にとっても大事なことなのですが、もうすぐそこにある小学校の卒業式の存在が初代よりも明確にあった4代目の方が、より原作のヒトミちゃんの転校と卒業式に関する要素が大きくあったように思います。

ヒロインの弟

原作のヒトミちゃんにあって、ドラマで消えた設定に弟の存在があります。『俺はあばれはっちゃく』のヒトミちゃんは一人っ子で、ヒトミちゃんの後を継いだ『男!あばれはっちゃく』のみゆきちゃん、『熱血あばれはっちゃく』のあけみちゃん、『痛快あばれはっちゃく』のまゆみちゃん達には弟は存在せず、弟がいる原作の設定は、4作目までドラマには登場しませんでした。

しかし、最終作である5代目『逆転あばれはっちゃく』で、ヒロインあかねちゃんには弟がいる設定になっています。あかねちゃんの弟が初登場するのは2話。あかねちゃんの父親の洋一さんにだっこされて登場してきます。9話で名前がタダシだと分かります。あかねちゃんの弟タダシが目立って出てくる話が14話「誘拐魔を追え」です。

f:id:kutsukakato:20210823135208p:plain
f:id:kutsukakato:20210825130055p:plain
左『逆転あばれはっちゃく』2話より、右『逆転あばれはっちゃく』14話より

原作のヒトミちゃんの弟の名前はヒロシで、年齢も名前もドラマのタダシとは違うのですがヒロインに弟がいるという原作の設定がドラマで使われたのは、5代目だけでした。5代目は長太郎があかねちゃんに頼まれて、タダシ君の面倒を見ることになるのですが、この話は初代9話「けとばせ過保護マル秘作戦」で長太郎がマサミの面倒を見ていたことを思い出しました。

5代目は4代目よりも多く変更を加え、特に父ちゃんの職業を大工から動物園の飼育員に変えたり、父ちゃん、母ちゃんの呼び方を父さん、母さんに変えたり、父ちゃんの性格を大きく変えたりしましたが、2クール目(14話から)に入ると父ちゃんの性格はこれまでのシリーズの父ちゃんの性格に近くなっていたりと、変化させた部分を戻した印象があります。

変化を取り入れながら、これまで使わなかった原作のヒロイン設定をいれつつ、新しい『あばれはっちゃく』を生み出そうとして、受け入れられなかった変化を戻して、なんとか人気を取り戻そうとした様子が5代目の2クール以降から感じられました。この2クール目あたりからの『逆転あばれはっちゃく』のテコ入れに関しては、DVD付属の解説書にも書いてあるので、持っている方は読んでいただけると、そうなのかと納得されると思います。

『痛快あばれはっちゃく』と『逆転あばれはっちゃく

シリーズの中で、テコ入れや変化を加えながらも、これまでドラマで使わなかった原作のヒロインにあった設定をそれぞれに取り入れて、新しい要素を加えながらも原点回帰もしていた4代目と5代目。変化しているようでいて、実は原作をちゃんと重んじていた部分もちゃんとあったことを知れたのは、改めてDVDで見返すことが出来るようになったお陰だなって思います。