柿の葉日記

主にテレビドラマ「あばれはっちゃく」について語る個人ブログです。国際放映、テレビ朝日とは一切関係がありません。

『男!あばれはっちゃく』第12話「強いゾ弱虫」感想

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『男!あばれはっちゃく』12話より

脚本・市川靖さん・松生秀二監督

アバンタイトル

珍しく洋一から。洋一が松の木に縄でタイヤを括り付け、地面にあるタイヤにも縄をつけている。川辺でその地面に置いてあったタイヤをスーパーマンの衣装を着た長太郎が腰につけ、良く伸びるゴム紐を使って、洋一が巨大なパチンコのようにして長太郎がつけたタイヤの縄を洋一が引っ張り「出発ちてん」から川の向こうにある「着陸ちてん」を目指す。途中で落ちていた百円玉に洋一が気を取られ、充分ゴム紐が伸びきっていない段階でパチンコ発射。洋一は余った縄に足をとられて、長太郎と共に川向うに飛んでいく。長太郎は川に飛び込んでしまうが、洋一だけが川岸の「着陸ちてん」に無事到達してガッツポーズ。悔しがる長太郎でオチ。

今回のアバンタイトルは本編で主役になる洋一と貧乏くじを引いた長太郎を端的に表現したアバンタイトルになっている。

本編

登校中、みゆきちゃん、和美ちゃん、弘子ちゃんの3人がブラウンのサンバイザーを被りながら歩いています。

そこへ洋一が後方からやってきて、3人に挨拶をすると、サンバイザーを取って被り、3人に似合うかどうかを聞きます。すると、風が飛んできて、3人の女の子のスカートを捲り、それをみて洋一は喜ぶが、洋一が被っていたサンバイザーも風に飛ばされてしまいます。

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『男!あばれはっちゃく』12話より

風に飛ばされたサンバイザーは土手で寝ていた顔が傷だらけのおじさんの足元に落ちてしまい、拾ったおじさんはサンバイザーを頭につけてしまうのです。

サンバイザーを追ってきた洋一はおじさんが怖くてサンバイザーを取り戻せません。そこへみゆきちゃん達が来て、サンバイザーを返してと洋一に言いますが、サンバイザーがおじさんに取られたことを知り、洋一がそのおじさんを怖がって取り返せないことを知って、洋一を責めますが、洋一は弱腰。見かねた和美ちゃんがおじさんのとこへ行って、取り返そうとしますが、睨まれてしまい和美ちゃんも取り返せません。

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『男!あばれはっちゃく』12話より

洋一は残ったみゆきちゃんと弘子ちゃんの陰に隠れてしまうだけ。場面が変わってそんなことは何も知らない長太郎が教室に元気よく入ってきます。みゆきちゃんと弘子ちゃん、和美ちゃんに挨拶をするも冷たい態度、洋一に挨拶をしても洋一も不機嫌。

何があったのかさっぱり分からない長太郎。

下校時間、洋一に声をかけるも無視。その後からきたみゆきちゃん、弘子ちゃん、和美ちゃんも自分達はもう男の子を信用しない言う。

今朝、この4人に何があったか知らない長太郎は首を捻るばかり。そこへ、邦彦がやってきて、長太郎に4人に起きた出来事を説明。長太郎は洋一がみゆきちゃんにした事を怒って帰宅。

長太郎はみゆきちゃん達から冷たくあしらわれていますが、長太郎には全く関係のないことで冷たくされています。

洋一のとばっちりを受けていて、これはみゆきちゃん達が、洋一が男だということから、自分達「女」と洋一が属する「男」で仲間分けをして、洋一と同じ「男」にカテゴリーされる長太郎も洋一と同じ仲間として分けて、差別したからです。

肝心な時に助けてくれなかった洋一に失望した怒りが、洋一個人だけでなく、洋一が属する男全般に広がってしまったと言えます。また、サンバイザーを結果的にとって返してくれなかったおじさんも「男」であり、和美ちゃんに与えた恐怖も「男」に対しての怒りを大きくさせてしまったのではないかなって思いました。

今回の話の中で、この女対男の図式は次第に大きくなっていきます。サンバイザーを取り戻せなかった洋一は、サンバイザーを弁償するといいますが、そのサンバイザーはフランスのお土産で簡単には手に入らない品だと言われてしまいます。

あばれはっちゃく』を見ていると、フランスに関連した品が出てくることがあります。初代『俺はあばれはっちゃく』では、21話「切手コレクション」でフランスの古い切手が登場しました。47話「エミリー台風」ではアメリカ人のエミリーが登場してたりもしますが、『男!あばれはっちゃく』8話「母ちゃんのためなら」でも、フランス料理のお店が出てくるなど、なぜか「あばれはっちゃく」の場合、西洋の外国というとフランスの方がアメリカよりも多く登場しているような気がします。

さて、本編の話に戻ります。長太郎が家に帰ってくると、理容室のお客さんとして、洋一のお母さんがいて、長太郎の元気の良さを褒め、洋一の情けなさを嘆き、洋一のおじいさんが強かったことを話している。

奥の部屋でおやつのアンパンを食べていた長太郎は洋一を鍛えようと考えて、洋一を呼びに行く。洋一は家の銭湯にあるインベーダーゲームで遊んでいると、母親に八百屋へお使いを頼まれるが、途中に大きな犬がいるのが嫌でお使いを渋っていると、タイミングよく長太郎が来て、長太郎と遊んでくると家を出ていく。

長太郎は洋一を鍛えるために、鉄アレイや剣道着や竹刀などの荷物を持って、洋一にスパルタ特訓。うさぎ跳びやボクシング、剣道等を竹刀で叩きながらやらせる。なんとか、長太郎に付き合っていた洋一は終に根をあげて、防具を少しずつ脱ぎ捨てて帰っていく。

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『男!あばれはっちゃく』12話より

その日の夜、一家団欒で夕食をしている桜間家に洋一の母親が怒鳴り込んできます。

長太郎が洋一にした事に激怒する洋一の母。

洋一の母親の怒鳴り声が聞こえた瞬間の父ちゃんの顔と父ちゃんの怒りの顔に縮こまる長太郎の顔というか、父ちゃんと長太郎の間に流れる空気と二人の目だけによる会話(会話と言っても父ちゃんと長太郎が言葉を交わすのではなく、目の表現だけで語り合っている)がなんとも言えない緊張感を表していて、長太郎の気まずさと父ちゃんの怒りがしっかり伝わっていて、見応えがあります。

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『男!あばれはっちゃく』12話より

初代長太郎の吉田友紀さんも目で語る演技がずば抜けて素晴らしかったのですが、東野さんの演技を受けて、目の演技で返した2代目長太郎の栗又厚さんの演技もかなりのもので、流石だなって思いました。

ところで、洋一の母親は怪我をして包帯と絆創膏、ガーゼだらけの洋一と既にサクラマ理容店の店内にいるのですが、洋一達が来たのは夕飯時。

つまりは理容店が閉店している時なんですね。それなのに、母ちゃんが開ける前に店内に入っていたということは、お店の鍵が閉まってなかったということ。

これはとても不用心だと思います。まさか、洋一の母が合鍵を持っている訳はないし、無理やりこじ開けた様子もない。母ちゃんにしてもカヨちゃんにしても店の戸締りはちゃんとした方がいいんじゃないのって、思わず突っ込んでしまいました。

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『男!あばれはっちゃく』12話より

長太郎はこの後、父ちゃんに例のごとく怒られるのですが、洋一を男らしくしようと鍛えていたのにと長太郎は反発。どうしたら、洋一を男らしく出来るかを考え、レコードプレイヤーとヘッドフォンを見つけて閃きます。

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『男!あばれはっちゃく』12話より

多分、長太郎が部屋で見たレコードプレイヤーとヘッドフォンは同室の兄、信一郎のものではないかなって思っています。

レコードプレイヤーは高いし、長太郎のお小遣いでは買えそうもないし、どっちかっていうと、信一郎の持ち物だと解釈した方がすんなりいくのでは?という私の偏見です。

長太郎が考え出したのは、暗示。自分は強いんだと繰り返して聞くことで強いと思うという方法。長太郎はカセットに「俺は強いんだ」と繰り返し吹き込み、それを翌日、登校中の洋一に聞かせることにします。

長太郎はその前に洋一に謝っていて、いきなり準備もなしにやったのがいけなかったと言っています。

始めは嫌がる洋一も、長太郎のアイディアにのり、ヘッドフォンで長太郎が吹き込んだカセットを聞きながら、意気揚々と登校します。

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『男!あばれはっちゃく』12話より

ところが、その行く先でサンバイザーを取ったおじさんと遭遇。洋一は逃げてしまいます。何も知らない長太郎はそれを追いかけてしまうのですが、それを目撃したのが弘子ちゃん。弘子ちゃんはサンバイザーを取ったおじさんを見て洋一が逃げて、長太郎も逃げたと思い込んで、2人に失望します。

長太郎と洋一が学校に着くと、邦彦がクラスが君たちのせいで大変な事になっていると伝えます。

教室に入ると女子と男子に分かれていて、対立状態。弘子ちゃんが洋一と長太郎がおじさんを見て逃げた事を話し、みゆきちゃんが男子とは絶交だと宣言。長太郎は誤解を解こうとしますが、聞く耳も持ってもらえず、洋一は逃げ出してしまいます。

長太郎はサンバイザーの件を邦彦から聞いていますが、今朝、洋一が逃げ出した理由がそのサンバイザー事件のおじさんを見たからだというのを知りません。

長太郎も邦彦もサンバイザーのおじさんの姿を見ていないからです。サンバイザーのおじさんの容姿を知っているのは、洋一、みゆきちゃん、弘子ちゃん、和美ちゃんの4人だけ。長太郎はおじさんの姿を知らないから、おじさんを見て長太郎も逃げ出したというのは、弘子ちゃんの間違いです。

邦彦からサンバイザーの話を長太郎が聞いていたとしても、邦彦だってみゆきちゃん達からこんなことがあって、洋一を含む男を信用しないと聞かされても、邦彦もおじさんの姿を見ていません。長太郎も邦彦もおじさんの姿を知らない、説明が出来ない状態な訳です。

そこで自分が目撃したのと、長太郎も邦彦もサンバイザー事件を知っているという前提で、サンバイザーを取ったおじさんの容姿も知っていると思い込んでいて、おじさんが怖くて長太郎も逃げたと判断して失望しているのは、弘子ちゃんがちょっと勝手過ぎると思いました。

洋一は教室を飛び出して、寺山先生とぶつかり、寺山先生は階段から転げ落ちてしまいます。

寺山先生がここで怪我をして腰を痛めてしまうのは、話のラストに関係してくるのですが、寺山先生にはとんだ災難です。というか、今回は洋一の起こした騒動で、男性陣がかなりのとばっちりを受けています。

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『男!あばれはっちゃく』12話より

長太郎は教室に来た寺山先生に洋一を連れ戻してくるように言われ、文句を言いながらも洋一を連れ戻しに行きます。この時、ランドセルを邦彦に預けていて、邦彦が文句も言わずに長太郎のランドセルを受け取ります。

寺山先生が目の前にいるから素直にランドセルを受け取ったと思いますが、サンバイザー事件の事を長太郎に話す時に、邦彦は長太郎の事を「長太郎君」と呼び、洋一がみゆきちゃん達にしたことを話すと時に「洋一がね」と話しかけていて、長太郎に対する態度が初めよりも優しくなってきたと感じました。

初代『俺はあばれはっちゃく』でも、26話「モヤシも男だ」で公一と長太郎が喧嘩をした時、正彦が間に入りましたが、この時に正彦は公一の事も、長太郎の事も、君付けで呼んでいたのに対し、今回の邦彦は長太郎は君付け、洋一が呼び捨てだったのが気になりました。

洋一と邦彦は長太郎が来る前から仲が良かったりもしていて、長太郎よりも洋一の方が邦彦には親しみやすさがあったにしても、それまで気に入らなかった長太郎を君付けで呼んだというのは、邦彦の中に長太郎への気持ちの変化があったのかな、とか、単に今回は洋一のせいでとばっちりを受けていたので、洋一を呼び捨てにしただけなのかなって、いろいろと考えてしまいました。

長太郎は次に信一郎の3人の同級生にお願いして、みゆきちゃん達に絡んでもらって、それを洋一が助けるシチュエーションを用意しましたが、洋一が来る前に合気道歴5年のみゆきちゃんが3人の中学生をやっつけてしまって、おじゃん。

信一郎の勉強ノートを報酬に3人に以来した長太郎は3人の中学生に怒ってしまいます。この時に登場した3人の中学生役の1人が八幡洋之さん。八幡さんは初代『俺はあばれはっちゃく』24話「やったぜデート」に登場した北野を演じています。2代目に登場した場面でいうと、下記の画面右にいるのが八幡さんです。

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『男!あばれはっちゃく』12話より

八幡さんの情報は下記の記事に少しですが書いてあります。

kakinoha.hatenadiary.

ちなみにこの3人の中学生にみゆきちゃん達が絡まれる場面の直前で、みゆきちゃん達の後方に邦彦の姿を見る事が出来ます。

この後、邦彦は話に絡んでこないのでこの場面では登場がないのですが、大好きなみゆきちゃんが中学生に絡まれた事は目にしているハズなので、邦彦が出てこなかったということは、特にみゆきちゃん達を助けようとはしなかったという事です。大人達も来ませんでしたし、大人を呼んで助けようとか、初代『俺はあばれはっちゃく』9話の正彦のように先生を呼ぶふりをして助けようともしなかったと言えます。

今回、出番の少ない邦彦ですが、こうした細かい部分でマイナス面を出してしまっています。

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『男!あばれはっちゃく』12話より

場面が変わり、写生の授業で長太郎達が外に出て写生をしています。長太郎はみゆきちゃん達の近くに来ますが、みゆきちゃん達は別の場所に移動。

洋一に声をかけるも洋一も長太郎を冷たくあしらいます。長太郎が持っている絵の具の道具が洋一達と同じなのを見て、いいなって思いました。

私は福島県から長野県に転校してきましたが、福島県の学校で使っていた学校用文房具、楽器(絵具セット、習字セット等)が全く違っていて、それを馬鹿にされたりしたのですが、群馬県から東京に転校してきた長太郎は、転校先の学校のみんなと同じ道具を持っていて、きっととうちゃん達がちとせ第一小学校の道具と同じに買いそろえたんだろうなっていうのが分かって、転校生だからと1人違う道具を持っていない長太郎が羨ましく思ったのです。

長太郎は洋一にも冷たくされて、1人で絵を描いていると、寺山先生が声をかけ、もう少し丁寧に描きなさいと言われてしまいます。

そこへ、落ちた絵具セットを取ろうとして、足を滑らせた洋一の悲鳴が。

長太郎と寺山先生、クラスのみんなが悲鳴のした方へ駆けつけます。木の根元に辛うじてぶら下がっている洋一を見て長太郎が助けに向かいます。

本来は寺山先生が助けに行くべきですが、前に書いたように洋一とぶつかって階段を転げ落ちて腰を痛めた寺山先生は助けにいく事が出来ません。長太郎が縄を使って洋一を助けにいくのですが、長太郎は足を滑らせ、洋一より下に落ちてしまいます。

そこで、長太郎は洋一に自分を助ける番だと洋一に言い、洋一は最初は尻込みをするも、なんとか長太郎の言う通り縄を取り、自分の体に括り付け、長太郎にも括り付けて、長太郎を助けます。上の方ではその縄を邦彦達が持って、全員で長太郎と洋一を引っ張り上げます。

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『男!あばれはっちゃく』12話より

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『男!あばれはっちゃく』12話より

長太郎を見事助けた洋一はみゆきちゃん達に見直され、逆に長太郎は情けないと言われてしまいます。今回のアバンタイトルで、長太郎が失敗して洋一が着陸ちてんに到達したかのような結末。長太郎は寺山先生から指示された邦彦が肩を貸すのを拒んで、みゆきちゃんに迫りますが、みゆきちゃんから肘鉄を食らってしまいます。

それもでもめげない長太郎で締め。

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『男!あばれはっちゃく』12話より
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『男!あばれはっちゃく』12話より

まとめ

今回、気になった事は、結局、サンバイザーをおじさんから取り返さなかった事。後は、場面転換が多かった事でした。

サンバイザーを取られて後の教室の場面、そこから下校の校門の場面。学校から戻ってきてサクラマ理容室の場面から、洋一の家の銭湯の場面と、場面の切り替えが多かったように思います。

その為、時間がショートカットされて、どんどんドラマの中の時間が早く流れているように感じました。サンバイザーを取ったおじさんも、サンバイザーを取った以上の行動はしておらず、ちょっともったいないなって思いました。

今回の話は、洋一が長太郎の親友の立場であり、この話の主役で洋一はひ弱で頼りがないけど、洋一の母曰く、洋一のおじいさんは武道の達人でとても強かったというのを見ても、初代『俺はあばれはっちゃく』26話「モヤシも男だ」(脚本・安藤豊弘さん、監督・山際永三監督)の長太郎の親友、公一が主役の話を思い起こさせる話でした。

公一の場合は母子家庭で、死んだ公一の父親がとても強い人間であったことが、公一の母親の口から出てきています。

初代26話と共通点を見つける事が出来ますが、それ故に比較してしまい、この2代目の12話の粗が目立ちます。

この12話では最後に洋一が男を見せましたが、全体の話の繋がりが場面転換が多いせいか薄く、また、それぞれに配置された人物、サンバイザーを取ったおじさん、長太郎に頼まれて絡んだ3人の中学生、伝言するだけの邦彦が取ってつけたように見えて、全体としてのまとまりが欠けていたと思います。

気弱な洋一が見せる男気、勇気を見て女の子達が洋一を見直すというプロットは良いのですが、その間の繋ぎがイマイチに感じてしまいました。

また、小学生時代にありがちな男対女の図式も、もっと盛り上げることが出来たのではないかと思います。本編の中でも触れましたが、自分達が体験して知っている事と後から聞いて知った人との知った出来事に対する情報に差がある事を承知していないと、自分が知っている事を基準にして、人の行動の良し悪しを決めつける乱暴な差別に繋がると思いました。

弘子ちゃんは長太郎もサンバイザーをとったおじさんを知っていると思って、おじさんを見て逃げた洋一を追いかけた長太郎にも失望していますが、長太郎はおじさんのことを知っていても、おじさんの姿を直接見ていない事を、なぜか知っているからその姿を見ているにすり替えて長太郎もおじさんの姿を知っていて逃げたと決めつけて責めているように見えました。

洋一1人の行動を男全般に広げて怒ったみゆきちゃん達のやり方は、大雑把なグループ分けが関係のない人達を巻き込む差別に繋がるのだという事が改めて分かった話でした。

グループに所属する1人の行動を見て、グループ全体を否定するというのは、1人1人の個人を認めて見る事の放棄です。

私は中学生時代にアニメ雑誌を買うほどのアニメオタクでしたが、中学3年生の時に宮崎勤事件が起きて、アニメ誌を買うアニメオタクは全員、殺人者と扱われ、入学した高校で徹底的な差別にあって、登校拒否になり高校を辞めてしまいました。

アニメが好きということで、殺人者でもないのに幼女誘拐連続殺人者と同じ扱いを受けたのです。だから、何か1つ共通点があるだけで、そいつらも同じ奴らだと差別する人間を許すことは出来ません。

洋一が男だからと、男全員に失望して無視をし冷たくあしらったみゆきちゃん、和美ちゃん、弘子ちゃんの気持ちは分かるにしても、やはり見ていていい気持ちはしませんでした。

最後に洋一の勇気と頑張り、長太郎を助けた結果を見て見直してくれたのが、この話の救いでした。

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