柿の葉日記

主にテレビドラマ「あばれはっちゃく」について語る個人ブログです。国際放映、テレビ朝日とは一切関係がありません。

なりふり構わずあがく生き方の良さ

赤ひげ2第5話「幼なじみ」感想

『赤ひげ2』第5話を見ました。今回は過去に赤ひげが面倒を見た与助の話です。

与助は腕の良い彫り師でしたが、侍に利き腕を切られてから腕が上手く動かせず、職を失い、妻のおひろに養われています。

この話は、最初の方に出てきたそれぞれの登場人物達の一言の言葉が、後々の話の真相を知る手掛かりになっていきます。

それは、後で録画したのを何度か見返すことで気づいていきます。

私は、今回の話を見ながら、与助もおひろも何も悪い事をしていないのに、どちらも罪悪感、負い目を持っていることがとても可哀相に感じました。

罰があたったのかもな 

これは、与助の呟きですが、同じことをおひろも違う場面で言います。

今回は、およねを岡場所から小石川養生所に引き受けるために、赤ひげと保本が岡場所に足を運び、そこで保本は『通りゃんせ』の替え歌を歌う遊女に出会った事が話の始まりになっていて、この替え歌が話のキーワードにもなっています。

与助とおひろは幼なじみで、2人には共通の幼なじみ清吉がいます。

与助が利き腕が駄目になっても、彫り師に拘ったのは、おひろがそれを褒めてくれたから、それ以外に取柄のない自分は彫り師でなくなったら、おひろに捨てられるという脅迫観念がありました。

与助は、おひろが清吉を好きで、でも、清吉には家が決めた許嫁がいたから、自分の求婚を受けたという思いが強く残っていて、だから、そんな思いを抱えていました。

与助が怪我をしたのは、3年前におひろを侍から庇ったから。

おひろの心の中は与助への申し訳なさがあり、また、清吉に好意を持っていて自分の未練を断ち切る為に与助の思いを利用したということがおひろの口から語られます。それを聞いて、おひろの罪悪感になっていたのだろうと分かりました。

清吉が2人の前に現れ、2人を心配し、故郷(くに)を出て江戸に来た2人に2人がいなくなった時に言えなかった感情をぶつけ、それでいながら、2人のことを大事に思っている姿がいい人なんだなって思いました。

恐らく、与助とおひろは清吉に罪悪感を持ちながら、夫婦でいたのだろうと思います。でも、やがておひろは与助を人として、旦那として愛していったのだろうと思います。でないと、罪悪感だけで職を失った与助を支えることはなかったと思うのです。

それは、この話の最後でのおひろが選んだ道で分かります。

与助は入所した小石川養生所で自殺騒ぎを起こしますが、それを見て私は与助が本当は死ぬつもりはなく、清吉に対する嫉妬とおひろに対する申し訳なさと捨てられる寂しさから、どうにかしないといけないと思いながら、どうにも出来ない勇気のない自分の気持ちを誰かに聞いて欲しかった。誰かに自分の気持ちを肯定し、後押しして欲しかったように感じます。

多分、いろいろな不満。おひろの為に何かしてやろうとして出来なかった悔しさを受けとめて欲しかったからこそ、小石川養生所で自殺未遂を起こし、小石川養生所の人達に思いを受けとめて、何かの答えやその人達の言葉が欲しかったのだろうと感じました。

その与助の気持ちを受けとめ、真剣に向き合って言葉をくれた保本、およね、赤ひげ達は本当に与助の心を考え思いやっていたのだと感じられました。

私は、真面目に生きていた人が理不尽な理由で本来の姿を壊されたことに憤りを感じ、その破壊された人が立ち上がって生きていく姿に、それを受け入れる人達、励まし支え、離れていても遠くで思いやってくれる姿に涙を流します。

清吉は遠く離れていても、おひろと与助のことを思ってくれていることに、幼なじみの大切さと有難さを感じました。

今回も夫婦の話で、保本がまさをにおひろを投影させ、自分達夫婦が与助とおひろのようになったら、まさをがどうするかと問いただし、まさをを怒らせてしまいますが、最後でまさをの一枚上手の返しをして保本が素直に謝る場面と、まさをが怒るまでのちょっと冷や冷やしたそれでいて、コミカルなところが楽しかったです。

また、話冒頭でおよねが作る大根のお味噌汁と最後のお味噌汁の対比も和やかでした。

なんというか、人の思いの切なさ、相手を思いやる情の優しさが心に沁みた話でした。