柿の葉日記

主にテレビドラマ「あばれはっちゃく」について語る個人ブログです。国際放映、テレビ朝日とは一切関係がありません。

『男!あばれはっちゃく』54話「出た!宇宙人」感想

『男!あばれはっちゃく』54話より

1981年4月11日放送・脚本・山根優一郎さん・松生秀二監督

事実と予測

朝刊にUFOの記事から、UFOが存在するかという話題が上がり、今回の話の発端になります。当初は半信半疑の長太郎。長太郎はまずは家庭でUFOの有無を父ちゃんに聞き、そこから、存在するという母ちゃん、カヨちゃんの意見、最終的には信一郎の存在しない意見を聞いたのち、お巡りさんにUFOの存在の是非を尋ねます。

学校でもUFOの話題を持ち込み、そこで克彦がUFOと宇宙人の存在を肯定し、さらにUFOを目撃したことを話していきます。寺山先生がUFOや宇宙人の存在を曖昧にして、答えたのに対して、克彦が説得力のある形で寺山先生に意見をします。

面白いなって思うのは、前半で勉強の出来る信一郎が冷静に現実的に母ちゃんが見たUFOだと思う物体を発光現象だと科学的に説明して否定し、「世界中で誰もつかまえたことがない」という事実を元にUFOと宇宙人を否定したのに対して、同じように勉強の出来る克彦が宇宙には地球に似た星が何千億もあるということから、そこに人類よりも知能が発達した生物がいる可能性があると言って、宇宙人の存在を信じていることです。

中学生と小学生の違いはありますが、同じように勉強が出来ても、何を根拠にして考えるかで、その答えが異なっているのは面白いですね。信一郎は現実に起きた事実を見て考えているのに対して、克彦は現実を観測した予測を踏まえて考えている違い。どちらにも知識を元にして考えているのに、信一郎は確かな現実、克彦は現実から発展した予測を元に考えている、それが正反対の結論になるというのは、とても興味深いことだなって思います。

江藤家のバランス

長太郎はUFOに関しては半信半疑なところがあって、最初はどちらかといえば存在していて欲しいなって見受けられるんですが、克彦が存在していると言い出したところから、否定派に回っているように見えるんですよね。克彦の描いた宇宙人を見て、さらにその考えを強くして、克彦に一泡吹かせようと、章と画策します。それは大成功するんですが、当然のことながら、克彦の父親に知られることになり、父ちゃんに長太郎はこっぴどく怒れてしまうのです。

私は今回の話は、ここからが本番の話だなって思いました。長太郎は克彦が宇宙人の存在を信じているところまでは面白くないとは思っても、まあ、許せる範囲だったんだと思うんですけど、みゆきちゃんに宇宙人に会ったことがあるとか、宇宙人の姿を絵に描いたと言い出したところから、克彦が嘘を言っていると捉えて、克彦を困らせようとしたように見えるのです。

困った挙句に嘘を認めて、謝らせようとしたのではないかな。それでも、克彦はそれを意に介さないでいて、だったら、克彦の嘘を本当にしたら、どんな反応をするのか?となったのではないか、と。ただ、その結果、克彦は気絶をしてしまったわけですが、もしも、克彦の好奇心が勝って、宇宙人に化けた長太郎と章のところにきたら、長太郎はどうしたんだろうって思いますね。

長太郎は、克彦を気絶させ、怖がらせたことで、父ちゃんから大目玉を喰らって、勘当をされてしまいます。ここまでは、よくある桜間家の風景なんですが、今回は長太郎がそれがきっかけで、家出をしてしまうんですね。4話でも長太郎は群馬に帰ると、ある種の家出をするんですけど、今回は宛てもないない家出であることが不安を煽ります。

長太郎が父ちゃんにこっぴどく怒られたのには、克彦の父親が乗り込んできたのもあるんですが、注目するべきとこは、江藤家の中で乗り込んできたのは、克彦の父親だけで、克彦の祖母と姉の洋子さんはいないとこです。克彦の父親は息子の克彦を庇いましたが、克彦の祖母は克彦の悪いとこを叱っています。洋子さんは、その克彦を庇っています。

克彦の父親は長太郎が悪いとし、克彦の祖母は克彦も悪いとし、洋子さんは克彦が自分の悪いところを反省しているとしているところです。三人三様で克彦のことを思っていて、それぞれに違いがあるところが、とてもバランスが取れていると思いました。

一方的に克彦擁護ではない江藤家のバランスを見て、克彦って幸せ者なんだなって感じたのです。自分を全肯定してくれる存在、自分の悪いところを指摘してくれる存在、自分の悪いことを反省しているのを認めてくれる存在がいることは、自己肯定に繋がり、自分への自信へと繋がっていくと私は思うからです。

『男!あばれはっちゃく』54話より

それから、面白いなと思うのは、前作『俺はあばれはっちゃく』(1979年)で、正彦の伯母として登場した新村礼子さんが、『男!あばれはっちゃく』2年目で克彦の祖母として、前作とは対照的な存在として『あばれはっちゃく』に帰ってきたことです。正彦の伯母の時は、長太郎を全面否定していましたが、克彦の祖母の時は、克彦の悪い面をちゃんと指摘しています。

前作では長太郎の敵、今作ではどちらかといえば理解者。新村さんが演じた役はどちらも長太郎のライバルの肉親なのですが、その立ち位置が正反対であることで、微妙な役ずらしをしているのが、とても面白く前作の共通点を生かしながらも、違いを出していて面白いなと感じます。それに、正反対の役を自然に演じられるのも、役者の演技力の高さの証明ですよね。

『俺はあばれはっちゃく』2話より、『男!あばれはっちゃく』54話より

自分にある理由は正しいのか

克彦は祖母に諭されて自身の行為を反省し、長太郎は父ちゃんに叱られたことで家出をします。注目したいのは、長太郎も克彦も自分の行為に対して、それぞれに長太郎は克彦が嘘をついたのが悪い、克彦は自分を驚かした長太郎が悪いと自分たちのそれぞれの行為を正当化していたのが、それぞれに叱られたことで、自分たちの嘘や相手を気絶させたことを悪いと認識して反省したことです。

相手を痛めつけるのに、自分に正当な権利があるとして、相手を非難することを正当化しますが、その自分が正当な権利だと思っている事実が本当に正しいのかどうか、正しいとして、そこまで人を追い詰めることが良いことなのかどうかということが、この長太郎と克彦の一連の出来事で見ることが出来ます。

何が悪くて何が正しいのか、反省した後の子どもをその後で、どのように受け止めるのがいいのかというのが、克彦の祖母や父ちゃん達の姿や行動から考えることが出来ると思います。

長太郎が家出をしたことで、父ちゃんはかなり慌ててしまいます。お巡りさんにも、注意されて父ちゃんなりに反省をしています。長太郎を叱った父ちゃんが自分の叱り方に反省をする。ここで、今回、失敗をしたのは、長太郎と克彦だけでなく、父ちゃんも含まれているんですね。

子どもに限らず、叱り方というのはとても難しいもので、叱るのではなく八つ当たりや怒るというものが多い人もいるんですが、父ちゃんはそこで自分の叱り方を反省する。克彦の父親の手前、長太郎に鉄拳制裁を加えるんですが、それが長太郎の悪さに対しての叱りを超えた見せしめだったと反省したんじゃないかな。

長太郎も父ちゃんや母ちゃん、信一郎にカヨちゃん達に心配させたことを父ちゃんから聞いて反省して、お巡りさんに保護されて殴ろうとした父ちゃんを婦警さんが止めてくれたけども、最終的に自分から父ちゃんの手を取って、自分で父ちゃんの拳でげんこつをしたのは、長太郎なりのケジメだったように思いました。

『男!あばれはっちゃく』54話より

『男!あばれはっちゃく』54話より

克彦のケジメ

今回はUFO、宇宙人の有無から始まって、長太郎の家出に話が発展していき、最初の話題からズレていきましたが、克彦がみゆきちゃんを経由して長太郎に素直に謝ったことで、最初の話にちゃんと戻って落ち着いて終わったことも良かったと思いました。

『男!あばれはっちゃく』54話より

『男!あばれはっちゃく』54話より

今回の克彦がUFOを見たことや宇宙人にあったことは嘘でしたが、それでも、まだUFOと宇宙人の存在の可能性を信じている克彦があるのが、未来への夢、希望に繋がっていて、それでいて最後のオチが、でも、現在の事実、現実はこうなんだよと示唆しているのが、なんとも絶妙なバランスだなって思いました。

夢を見ること、現時点での現実を見せること。現時点の現実を見ても、夢や可能性を克彦のように捨てないか、現実を見て所詮こんなもんかと思うかは、人それぞれなんだなって、そんなことを思いました。UFOや宇宙人の存在を少し茶化しながらも、完全否定はしてないところもこの話の良さだと、私は個人的に思います。

はっちゃくひとりうた

今回、挿入歌として長太郎が家出をしている場面で「はっちゃくひとりうた」が使われました。私にとって「はっちゃくひとりうた」は子どもの頃に持っていた、パチモンのアニメドラマ特撮主題歌のカセットテープに収録されていて、子どもの頃に東京や長野のおじいちゃんちに行く車の車内で何度も繰り返し聴かせてもらった懐かしい思い出の歌です。

子どもの頃には、はっちゃくの歌なのに、なんでこんなに物悲しい歌なのかなって思いながらも、心に刺さる歌詞とメロディーでとても好きな歌でした。主題歌や終わりの歌ではないので、『あばれはっちゃく』の歌としては、あまり有名ではないのですが、CDでも聞けますので、広く知って欲しい歌ですね。54話の下記の場面で流れます。

『男!あばれはっちゃく』54話より

「はっちゃくひとりうた」は初代『俺はあばれはっちゃく』放送中にレコードに収録されて発売されています。「はっちゃくひとりうた」については、過去記事でも書いていますので、興味のある方は過去記事も読んでみてください。

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