柿の葉日記

主にテレビドラマ「あばれはっちゃく」について語る個人ブログです。国際放映、テレビ朝日とは一切関係がありません。

『男!あばれはっちゃく』53話「KO!ライバル」感想

『男!あばれはっちゃく』53話より

1981年4月4日放送・脚本・山根優一郎さん・松生秀二監督

正彦の再来

前々から、過去記事で触れてきましたが、6年生になって邦彦と入れ替わる形で登場した克彦は、前作『俺はあばれはっちゃく』の正彦のように感じました。もちろん、5年生の時点で正彦に該当する人物である、邦彦はいましたが、克彦は邦彦よりも、正彦に近い存在ですね。

克彦の初登場回である、今回の53話を再見してみて、より強くそれを確信しました。克彦の初登場回の今回の話って、正彦が初登場した初代『俺はあばれはっちゃく』2話「優等生フンサイマル秘作戦」の話と重なる部分が多いんですよ。

それでいて、算数の問題をスラスラ解いたり、体育で跳び箱の旋回跳びを決めた正彦を上回ることを克彦がさらりとやってのける、算数で当てられて咄嗟に暗算で答えたりとか、跳び箱を飛んだあとで、側転、バク転を決めていくとか。ちょっとずつ、正彦よりもグレートアップしているんですよね。

『男!あばれはっちゃく」53話より

で、跳び箱でいいカッコを見せられた長太郎が張り合うのも一緒。初代長太郎は「はっちゃく垂直跳び」を披露して失敗し、2代目長太郎も「はっちゃく跳び」をやって失敗する。

ただ、この失敗が初代長太郎と2代目長太郎では違いがあって、初代は普通の跳び箱は簡単にクリア出来るけど、ちょっと無茶なアクロバティックを入れて、あと少しのところで失敗する、2代目は普通の跳び箱も失敗して、無茶なパフォーマンスを入れて失敗するというところが、初代長太郎を演じた吉田友紀さんと、2代目長太郎を演じた栗又厚さんという役者の違いとなって出ているのかなって思いました。

また、長太郎が優等生で人気が出て、チヤホヤされる正彦と克彦を面白くないと言って呼び出して因縁をつけるところも、初代と同じ。それが早いか遅いかの違いもあるけれど、初代2話と2代目53話は、共に山根優一郎さんの脚本で、長太郎のライバルになる正彦と克彦の初登場回で相似形になっている話であると言えますね。

また、克彦の弱点である亡くなった母親の話を盛り込んでいるのは、正彦がある意味主役の初代35話「泣け!優等生マル秘作戦」での正彦の亡くなった母親のこと、その母親への正彦の変わらぬ思いを短縮して付け足した感じがありました。

さらには、みゆきちゃんに「克彦君のファンになりそう」と言わせたことも合わせて、克彦が長太郎にとって、意識しなければならない驚異の恋敵という要素を付け足したのも、正彦の後継者としての克彦の存在を強く印象付けています。

『男!あばれはっちゃく』53話より

こちらの方は、ドラマの正彦よりは、原作の正彦の要素が強いのですが、どちらにしても、この克彦の初登場の53話を見るだけでも、邦彦よりも、克彦の方がより強固に正彦の後継者であることを印象付けていますね。また、克彦が正彦と同じ転校生である点も、正彦の要素を色濃くさせています。

正彦はドラマでも原作でも女性人気が高く、ドラマではその高さを示すのが明子の態度だったんですが、2代目で、それを担っていたのは下の引用画像から悦子だなって感じました。ちなみにメガネをかけているのが悦子です。

『男!あばれはっちゃく』53話より

元は東京

さて、克彦は大阪から転校してきたのですが、大阪弁は喋りません。克彦だけでなく、姉の洋子さん、父親の江藤カツオ支社長も、克彦の祖母も喋りません。元々、3年前は東京に住んでいて、克彦自身が転校の挨拶で「東京生まれ」と自己紹介しているので、元は東京の人間で東京に戻ってきたという訳です。

また、江藤支社長の職場での挨拶で、父ちゃんの会社である「ちとせ美工」の本社が大阪にあるということ、東京の会社は支社であること、江藤支社長の義理の母親が起業した会社であることが分かります。また、別の場面で江藤支社長が婿養子であることが分かるので、克彦の苗字である「江藤」は母方の姓であることも分かるのですね。

さらには、みゆきちゃん、悦子ちゃん、マリ子ちゃん達が克彦の家に遊びに来た時に、江藤支社長が克彦に苦言を言った時に、克彦の祖母が江藤支社長を窘めて、江藤支社長が大人しく引っ込んだのを見ると、今回登場した克彦の祖母は母方の祖母でちとせ美工の創設者ある可能性が高いんじゃないかなって思いました。

面白かったとこ

今回、面白かったのは長太郎が父ちゃんの職場に電話をしてきて、その電話を克彦が受け取ったり、東京支社の立て直しや義理の母親が起業した会社であることを誇りに語っていた江藤支社長の話の後で、外食に行きたいという長太郎に父ちゃんがしがない中小企業じゃ外食はラーメンが精一杯と言ってしまったりとか、東京のシンボルとして高いビルを映していったところや、それが何だかんだで、屋台のラーメンで桜間家5人でラーメンを食べるところへ落ち着いていくところがエスプリが効いていて、面白く感じました。

克彦と長太郎の出会いが電話で、2人がそれと知らずに直接出会った時に、長太郎が克彦の声に聞き覚えがあると言っていたりするところも、見ていて面白く感じました。

ここから再び始まる

正彦の再来を感じた克彦の初登場の話でしたが、正彦が長太郎を手玉に取っていたり、長太郎をやり込めていたのと、克彦が母親のことを長太郎につつっかれて、泣いてしまったところは、小さくても大きな違いになっていたなと感じました。

それから、正彦も克彦も長太郎の喧嘩に対して「暴力は嫌い」とはっきり公言したところは、腕力で物事を片付けようとしない2人の考えをしっかり見れたと思いました。正彦は2話の最後で初代長太郎がしかけたカエルに驚いて気絶しますが、それも女子の人気を高めただけで正彦のイメージダウンにはなりませんでした。

克彦も2代目長太郎によって、泣かされましたが、そこも克彦の繊細さと長太郎の酷さをみゆきちゃんに知らせたに過ぎず、克彦のイメージダウンになりませんでした。

長太郎は先に展望台で克彦と出会い、克彦が双眼鏡でかつて住んでいたところを見て泣いていたのを目撃し、克彦の母親が亡くなったことを知って、その事実を結び付けて、知らぬ間に克彦の弱点をついて、克彦を言葉で責めました。

みゆきちゃんの気持ちが克彦に傾いていることが、長太郎が克彦を攻撃する条件を与えて、克彦はそのぐらいの言葉では傷つかないと思い込んだ長太郎の行き過ぎた言葉が克彦の心を傷つけていて、長太郎と克彦の対決の立会人をしていた章が克彦の様子の変化を見て、長太郎にストップをかけたのは、中立な立場の章が役割を果たしていると感じました。

『男!あばれはっちゃく』53話より

長太郎がすべてが終わって章に自分が克彦に勝ったかどうかを尋ねた時の章の返答は正しかったと私は思います。長太郎と克彦は、この時点では、まだ水と油で、みゆきちゃんを巡っての長い1年が始まったわけですが、みゆきちゃんとの関係だけでなく、長太郎と克彦が、かつての初代長太郎と正彦のような不思議な友人関係を築く始まりの話でもあったな、と思いました。

『男!あばれはっちゃく』53話より