柿の葉日記

主にテレビドラマ「あばれはっちゃく」について語る個人ブログです。国際放映、テレビ朝日とは一切関係がありません。

『男!あばれはっちゃく』16話「住めば都さ」感想

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『男!あばれはっちゃく』16話より

1980年7月5日放送・脚本・田口成光さん・松生秀二監督

東京差別

弘子ちゃんの父方のお祖母ちゃんが群馬の田舎から上京してきた話。

人騒がせなおばあさんが騒動を引き起こす話は、初代『俺はあばれはっちゃく』8話を思い出させる話でした。

脚本も初代8話と同じ田口成光さん。田口さんなりの初代の8話のリメイクというか、2代目版の話のように思います。

東京や団地の暮らし、群馬には馴染みのない物に戸惑う弘子ちゃんのお祖母ちゃんの姿が描かれますが、まるで田舎には何にもないような文明から取り残された土地から文明のある世界にきたようになっているのが、いや、1980年代の田舎ってそんなに文明から取り残されていないなって、この当時は横浜市から福島県に住んでいた私なんかは思ってしまいました。

それに群馬県ですよね。年寄りだからだと言っても、ちょっといくら何でもってエレベーターの件に関してもなんですが、思ったりして。

まあ、ひったくりとか、訪問販売なんていう人達に振り回されるっていうのは、あると思いますが、それって東京、都会に限った話ではないんですよ。

だってね、私が仕事で初赴任した土地って、この話を書かれた脚本家田口成光さんの田舎の長野県飯田市だったんですけど、私、そこで独り暮らしをして、弘子ちゃんのおばあちゃんと同じようにとんでもない訪問販売にあって、布団を無理やり買わされたんですよ。

田舎だって、そういう困った訪問販売ってあるんです。何も、東京だけの話じゃないんです。

多分、田口さんが長野県から上京してきた時の経験が、初代の8話や今回の2代目の16話に少し反映されていて、さらに時代のギャップや世代間ギャップを加えるために、お婆さん達を通して、田舎と東京、関東のギャップを書いたと思うんですけど、なんかちょっと、東京、関東差別を感じましたね。

私は生まれてすぐに長野県大町市から神奈川県横浜市に引っ越して、4歳(正確には5歳の誕生日の4ヶ月前)まで横浜に住んでいました。

また、私の父が生まれも育ちも東京で生粋の江戸っ子でした。

横浜に住んでいた頃は、父方の祖父母の家が近かったので、よく東京にも行っていましたし、私にとっては生まれた長野県よりも東京や横浜の方が故郷なんです。

父はサラリーマンで長野県大町市に転勤してきた時に、そこに住む生粋の信州人の母と出会って結婚して私が生まれました。父はほぼ4年ごとに昇進して転勤の辞令があり、私達家族もそれに伴い、福島県、長野県松本市と引っ越しをしてきましたが、赤ん坊の頃から物心つくころまで住んでいた土地っていうのは、故郷に近いんです。

例えそれが本当にそこを故郷としている人達からは、あなたの故郷ではないと思われても、言われても。

確かに転勤族の流れ者の私には、ちゃんとした故郷はありません。

長野県で生まれ、長野県で長く育ち、長野県で就職した私は一応長野県を出身地としていますが、やはり私の感覚では後からきたよそ者という認識があり、自分にとっては、横浜の方が故郷だという気持ちが強いのです。

東京も横浜の人達も優しかったし、私をいじめる人達は一人もいなかったし、だから私には東京も横浜もいい思い出がいっぱいです。

だから、東京や横浜のような都会を住みにくい土地として、他の土地の人達が描くのは本当に嫌な気持ちになります。

初代のドラマでの舞台は神奈川県、2代目の舞台は東京都。

そのどちらも私にとっての心の故郷を非情な場所として最初は描いている、また進んでいる都会に馴染めない地方の人を文明の遅れた人として登場させるっていうのは、土地に対しても地方の人に対しても偏見があり過ぎて、私はあんまり好きではありません。

都会だろうと田舎だろうと

1980年代を地方で過ごした私には、1980年はそんなに地方も生活レベルで文明が遅れていたという実感がありません。

まだ水洗トイレがなかったりもしましたが、中心地などは開かれていたし、水洗トイレもあったし、エレベーターもあったし、交通も不便ではなかったです。

恐らく田口さんが長野県から東京へ上京してきた1960年代よりも、地方は東京に近い感覚になっていたと思います。

上京したギャップの経験が1980年では少し古い感覚になっていたのではないか、そこを補う為に上京してきた人をお婆さんにしたのだろうけれども、それでも、ちょっとなって私は思ってしまった。

似非ではあるけれども、神奈川県や東京都を故郷だと思っている私には、自分の故郷を馬鹿にされたような気分になってしまった。

都会は冷たいと各地方から出てきた人達は、ドラマの話の中でも、歌謡曲の歌の中でも、東京やその周辺の関東に住みながら言うけれども、そこに赤ん坊の頃から住んで人の優しさや人情の中で育ってきた者にとっては、何、人の土地に来て勝手にディスっているんだよって気持ちになってしまうのです。

私も赤ん坊の頃から住んでいたとはいえ、他所から来た異邦人に過ぎないのにね。

でも、私の父にとっては紛れもない故郷東京ですから、そこを馬鹿にされると嫌ですね。

後、母の故郷である大町市や母方の親戚が多く住む松本市を馬鹿にされるのも嫌でした。長野県って南北に大きくて、山で分断されているので、同じ長野県でも大町市松本市飯田市で文化も意識も違うんですよね。

飯田市に赴任した時に、職場の生粋の飯田市の人達から大町や松本を馬鹿にされて、本当にムカつきました。もう新卒1年だから何も言い返せない。それに変な訪問販売にもあうし、朝5時から夜8時まで仕事していたから、大家が職場まで押しかけて来るし、当時は携帯電話もなかったし、本当に非常識で、どうしても違う土地っていうのは、東京だとか都会とか関係なく、よそ者、住み慣れていない人間にとっては、風土や習慣、風習、気候、人間関係を含めて慣れるまでは、本当にこんなとこ嫌だって思うんですよ。

それから、転職して千葉に引っ越しました。

親の転勤や自分自身の転職による引っ越しなどもあって、様々な土地に住んできましたが、本当に最初はどこの土地も慣れるまでは、前の土地が良かったって思うんです。

また、離れて暮らすと嫌だった土地でも懐かしく感じる。

これは、故郷を持たない流れ者の私だからこそ持つ感情かもしれません。

住めば都

嫌な思い出のあった場所でも、住んでいる間はいい思い出や僅かでもいい人達との出会いがありました。

本当にね、あれだけ憎んで恨んで、懐かしい土地に帰りたいと泣いていた時もあったんだけども、離れてみると懐かしく、ニュースでその土地が出てくると嬉しかったり、事故や災害で見ると悲しくなってしまったりして、愛着がついてしまうんです。

最終的には、都会の中にもいい人や場所があって、住めば都なんだってとこで落ち着くので、私は逆都会差別に感じていたけれども、話の中の都会と田舎をひっくり返してみたら、私が引っ越し先で感じたことと同じことなんだって思うと、そんなに怒る必要もないんだなって、こうして書いていくうちに少しずつ落ち着きました。

なんというか、今回は話を見て自分の体験や感情を思い起こさせる話で自分語りをしてしまいました。

なんていうか、人って自分の故郷(故郷だと思っている場所)には愛着がついて大事にしているもんなんだなってそう感じます。

ゲスト紹介

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『男!あばれはっちゃく』16話より

立花かおる役(弘子ちゃんのおばあちゃん):賀原夏子さん

1921年1月3日生まれ。1991年2月20日没。

文学座1期生。19歳で48歳の役を演じる。また、24歳で姑役を演じるなど若い頃から老け役を演じる。1946年木下惠介監督の『大曾根家の朝』で映画初出演、東宝のドラマに多く出演された。『チャコちゃん』シリーズ等。初代『俺はあばれはっちゃく』8話「飛んでけ婆さん」おふでさん役で出演。

 

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『男!あばれはっちゃく』16話より

立花(弘子ちゃんのお父さん)役:川島一平さん。

弘子ちゃんのお父さん役の川島さんは初代『俺はあばれはっちゃく』7話「チカン御用だ」に出演したマキタゴロウを演じました。

1945年9月25日生まれ。劇団NET所属。数多くのドラマに出演されています。

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『男!あばれはっちゃく』16話より

団地の人役:邦創典さん

1903年11月24日生まれ、1982年12月21日没。東京市深川区菊川(現・東京都墨田区菊川)出身。極東映画、松竹、東宝、新東宝国際放映、エヌ・エー・シーに所属。

数多くの映画、ドラマ、特撮に出演されていました。

 

その他

前浦康司さん(『男!あばれはっちゃく』66話にも出演。他『太陽にほえろ!』692話に出演)

宮地佳旦さん

上記のお2人のプロフィールは分かりませんでした。

多分、どちらかがひったくり犯、もう一人がセールスマンだと思います。

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『男!あばれはっちゃく』16話より

弘子ちゃんのおばあちゃんの荷物を盗んだ男。

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『男!あばれはっちゃく』16話より

訪問販売のセールスマン。