「あの子のこと好きだったの?」
ヒトミちゃんと会ったノリコちゃんが長太郎に尋ね、長太郎がそれを否定した時のノリコちゃんの表情はとても嬉しそうで、女の子というよりは「女」という顔をしていました。
「もう、嫌いだよ!」
「そう…」
短い言葉ですが、その声と表情からノリコちゃんがどれだけ長太郎を好きになっていたのか、良く分かります。ノリコちゃんはタマエと違って長太郎の事を言葉に出して「好きだ」とは一言も言いませんでしたが、「そう…」この一言でノリコちゃんの長太郎への気持ちが全て分かる程に思いが凝縮されています。ノリコちゃんの長太郎の質問の仕方が「好きだったの?」という過去形であるのも、ここまでの間にノリコちゃんの方で長太郎の思いが自分にあると確信していたのではないか?と思ったりもします。それでも、長太郎に「好きだったの?」と尋ねたのは、ヒトミちゃんにうろたえる長太郎に少し不安を感じたからかもしれません。
ノリコちゃんと長太郎は離れ離れになりますが、二人の表情からは、離れたくなくても離れなければいけない。自分たちではどうしようもない状況と互いに離れたくないという思いとが混ざり合ってその気持ちを懸命に抑えているようにも見えます。二人はそうした感情を抑えて互いの為に笑顔で別れるのです。
「元気でやれよ、ノリコちゃん。俺、君のこと忘れない!絶対に忘れない!」
「私も長太郎君の事、忘れないわ」
別れた二人がこの後で声を殺して泣いているのを見ると、この時二人がどれだけ自分の悲しい感情に無理をして、相手の為に笑顔を見せていたかという事が感じ取れて、どれだけお互いを思っていたのかというのが分かって切ないです。それにしても、長太郎はもてますね。主人公だからでしょうか?