柿の葉日記

主にテレビドラマ「あばれはっちゃく」について語る個人ブログです。国際放映、テレビ朝日とは一切関係がありません。

モンペとゆとり教育のことを考えてしまいました

本編

 『俺はあばれはっちゃく』第9話。
長太郎に憧れた下級生マサミ君が登場です。
保健室にいて上半身裸で校庭をランニングしている長太郎を憧れの眼差しで見ています。
下校時間にそのマサミが中学生に絡まれているのを助ける長太郎ですが、正彦の機転で中学生が逃げます。
それでも、駆けつけた自分の母親に長太郎が助けてくれたというマサミがいいですね。
ヒトミちゃん達は、正彦の手柄なんて言ってましたけれども。
 さて、マサミの母親ですが演じた藤江リカさんは2代目『男!あばれはっちゃく』でヒロインみゆきちゃんのママ役で『あばれはっちゃく』シリーズに戻ってきます。

 マサミが長太郎よりも年下なんですが、意外としっかりしていてちゃっかりしています。
長太郎の留守に長太郎の家に上がりこんでいるところとか、長太郎のようになりたくて行動をテープ録音しているところなんて時代を先取りしているというか、マサミの家が金持ちであることを垣間見られますよね。
それに長太郎と川で遊んで、ここでもパンツ一丁で遊んでいて川に落ちるんですが、健康な長太郎は平気で病弱なマサミは寝込んでしまい、長太郎の家にきて、母ちゃんの民間療法梅干を張るをやるんですけど、マサミのママが血相を変えてやってくるんですが、この態度がマサミ可愛さで失礼な態度を取るんで、長太郎が怒って礼儀を説きます。

 普段ならば、長太郎を怒る父ちゃんですが、マサミのママの無礼さに父ちゃんがマサミのママに怒ってしまう。
さらには、PTA会長のマサミのママとPTAで顔を合わす母ちゃんは父ちゃんが怒るのは勝手だけど、否応なしに付き合いがある母ちゃんの立場があって、ここに子どもの学校のことは母親任せで、男親は知らないという古風なそれでいて、この話が放送された1979年には一般的な既婚の子持ちの男性の考え方が出ていますね。
父ちゃんは、後に母ちゃんが外で働くことにも反対をするので、相当に家や子どもの学校のことは女だけの仕事だという考え方の持ち主だったのだなって思います。

 それにしても、マサミのママのパワフルなこと。
小学生の長太郎相手に本気でムキになって引っかいたりしていて、手加減がない。
大人の本気の力でいくら女性にしても、ちょっと暴力的です。
それと、長太郎に対して否定的な感情を前面に押し出していたのは、この第9話までは正彦の伯母さんぐらいでしたが、マサミのママの態度が一番強烈で大きいかと思います。
ヒトミちゃんのママも長太郎には否定的なんですけれども、まだパンダを見に行くときに長太郎の家にヒトミちゃんと一緒に来てくれた時点では、動物園に連れて行ってもらうというのがあるにせよ、そんなに長太郎に嫌な感情とか否定的な態度は見せていないので、マサミのママの態度が初めての長太郎を嫌う大人の態度のパターン化されていく、1つの典型的な形の1つにになっていったと感じました。

 しかし、放送されたのは1979年3月31日なんですが、撮影は大体推測からして1ヶ月前だと考えられるので、空や川原の草などの状態から見ても2月か3月の頭だと思うと、パンツ一丁で川の中での遊びの撮影は相当冷たくて寒かったんじゃないかなって思います。
さて、父ちゃんが屋台で知り合ったサラリーマンがマサミの父親でという偶然から話がまたこの話のラストに大きく影響してきます。
マサミのママが学校まで乗り込んでくるあたり、近年問題になっているモンスターペアレント、モンペを感じさせますね。

 『あばれはっちゃく』は勉強も大事だけどそれ以上に元気で面倒見や人の世話や礼儀が大切であることを伝えていて、今回のマサミの件でもそうなんですが、正彦の中学受験問題にしても勉強の成績だけで子どもの良し悪しを判断するのはいかがなものか?という問題提起がさり気なく出てくるのですけれども、この勉強と人としての良さのバランスがうまくいかないで、ドラマではない現実の社会では極端に偏った方向へ転換してしまったのが、後の「ゆとり教育」になってしまったのかなって思いました。

 この1979年に生まれていない、再放送も見てない若い人達がこの作品を見てどのように感じるか、とくに「ゆとり教育」の被害を受けてしまった人達にどんなふうに見えるのかという失礼な関心があります。
あばれはっちゃく』世代ではない人達が「ゆとり教育」の被害者なのかもしれないと考えてしまって、申し訳ないと感じます。

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俺はあばれはっちゃく DVD-BOX 1

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  • 発売日: 2005/03/25
  • メディア: DVD

善光寺

本編

 第8話の脚本は田口成光さん。
おふでさんの登場で今回初めて長太郎以上に手を焼く人物の登場で長太郎を筆頭に桜間家の人達が振り回される話になっています。
前半は長太郎の通信簿改ざん事件で、長太郎の不正に目をつむるところがお人よしというか父ちゃんも親バカだなって思います。
前半と後半の繋がりが薄いのですが、家出をした長太郎と佐々木先生がゲームセンターで出会って長太郎の勉強はできないという短所と面倒見のいい長所を述べていて、後半ではこの長所を中心としたところが話の軸になっていきます。
 
 首吊り自殺をしていたお婆さんを助けて家につれて帰り、さらにはそのお婆さんおふでさんが父ちゃんの知り合いという出来すぎた偶然。
この後は、最初に提示された長太郎の勉強が出来ない通信簿の誤魔化しも流されていき、おふでさんを追い出すために長太郎がいろいろと策をこうじるものの「亀の甲より年の功」とはよく言ったもので、長太郎の作戦の空振りが続きます。
おふでさんの息子が勉強が出来ていい会社に入社できたものの、おふでさんとの親子関係が嫁姑問題も入ってうまくいっていないところをみせるのは、人間勉強だけが出来ればいいのではないということの含みがあるように感じます。
 
 ただこの『俺はあばれはっちゃく』の中で、単なる勉強虫を批判してその対極にいる長太郎を立てる展開はこの話に限らずついてくるのですが、世の中そんなに甘くないというか、勉強が出来なくても、人の心がわかる子であればいいというのも一理あって、人としてそれが大事ではあっても、あまりに極端に勉強をないがしろにしても、人生、世の中、社会を渡っていけないということもあるんだなって思うのです。
人がみんな佐々木先生のように欠点が目立つ子の長所を見てくれるとは限らないのですから。
 
 おふでさんがお手玉で歌う数え歌の中に「信濃善光寺」という歌詞がありますが、この話を書いた田口成光さんが信濃飯田市の出身で(善光寺長野市で北信、飯田市は南信で離れていますが)あることで、なんとなく信濃、信州で生まれそこで数年育った私は少しばかし、嬉しい気持ちになりました。

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俺はあばれはっちゃく DVD-BOX 1

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『俺はあばれはっちゃく』第7話感想

本編

第7話。
夜、てるほが塾帰りに変質者に襲われたとこから始まる話。
父ちゃんのてるほ贔屓が目立つ話ですね。
巡査の山本さんに来てもらって犯人の特徴を話している桜間一家。
山本さんに、犯人の特徴を聞かれて、必死で説明をする父ちゃんと長太郎。
襲われたてるほは深刻な顔をしているものの、

「可愛い子ちゃん」

と言われて、ちょっと嬉しそう。
小学生の女の子も狙われていると聞いて、ヒトミちゃんのことを心配しはじめる長太郎を見ていると、自分達の年齢まで被害対象者となるのかという警戒心が働いたのか、それよりも長太郎が小学生、可愛い女の子で真っ先にヒトミちゃんを思い浮かべて、夢にまでみたのだなって感じます。
この話は、山本さんを長太郎が

「夜(よ)まわりさん」

とか、恵子ちゃんが長太郎を

「馬と鹿のストリップ」

 と言ったりして、ちょっと捻った駄洒落が多くでてくる話ですね。
この話は、マラソンおじさんと呼ばれるマキタゴロウさんがゲスト出演してきて、あからさまに怪しくて、冒頭のてるほを襲った犯人だと分かりやすいのですが、昼間の顔と夜の顔が違っていて、昼間のマラソンと子ども好きの好青年の姿から、痴漢の下着泥棒ではないとマキタさんと親しいヒトミちゃんと恵子ちゃん、マキタさんの親切な人柄を知っている山本さんが否定します。

 長太郎は、人の特徴を体の動きなどでも覚えていて、マスクをしていて人相が分からなくても、犯人の動きの特徴を覚えている。
山本さんに目撃した時にも、まあ、分かりやすい派手ないでたちから服装などの証言をしていますが、あの短い間に多くの情報を掴み取っているんだなって感じます。
確かに長太郎の覚えている特徴や勘だけでは、マキタさんを犯人だと決め付けて逮捕できませんが、人間の思い込みで犯人の可能性のある人を除外してしまうのも、危険だと思います。

しかし、長太郎の下着泥棒をおびき寄せるために母ちゃんとてるほの下着を持ち出して、

「下着なんかに興味がない」

っていうのは、タンスから出している態度でその言葉が本当なのが分かりますね。長太郎はヒトミちゃんの言葉で、女装してまで犯人探しをするんですが、犯人を逮捕した後でも女言葉を使って、しなを作るところなんて少々誇張されてはいても女を見ているなって感じがします。

 長太郎の痴漢退治がメインの話ですが、この話は佐々木先生と長太郎のかけあいも楽しい話でした。
てるほが襲われてから一晩空けての学校の登校時に馬とびをしていって、佐々木先生が馬になった時に公一と入れ替わったり、職員室で痴漢が出てきてヒトミちゃんが心配だと佐々木先生に打ち明けて、

「犯人逮捕は警察人に任せて、お前は勉強や読書に身をいれるんだ、約束するか?」

って本を渡されると、

「面白い本は勉強に身が入らなくなりますから、いいです。失礼します」

 と返してしまう、断る言葉も他人行儀というか、気さくな感じから丁寧な言葉で先生と児童生徒の立場に早変わり。
話のラストでは、手柄を立てた長太郎が女の子達から、チヤホヤされているところに少し怖い顔をして佐々木先生が登場。

 佐々木先生が怖い顔をしていたのは、長太郎が職員室での約束を破ったからというのと、長太郎が危険なことに手を出したから。
長太郎の活躍、冒険はカッコイイと感じますが、大人の佐々木先生から見たら危険極まりない行動で無事だから良かったものの、結果オーライという問題だけではなくて、佐々木先生が長太郎を心配していたことが分かって、ああ、佐々木先生っていい先生だなってやっぱり思います。
もう、この第7話の話だけでも長太郎と佐々木先生の信頼関係の深さがあることが分って、第33話や第43話で佐々木先生が先生を辞める話、特に第33話がグッときますね。
もちろん、第7話以降にも二人の信頼関係が築かれていってこそもあるんですが、初期の方からそういうのがちゃんとあるんですね。

 長太郎の1人活躍が目立ちますが、地味なところで公一がサポートをしていて、こちらの長太郎と公一の関係も第1話からしっかりとあって、地味な公一のサポートが長太郎の活躍を支えているの分かります。第1話ではナポレオンの注意を惹きつけるために釣竿で肉を垂らしたり、今回は公一の母親のカツラを長太郎の女装のために提供したり、山本さんにパトロールしないように伝えたりと、第三者として観察者になりながらも、長太郎の手助けをしている公一は、まさに影の功労者、縁の下の力持ちです。公一のサポートはさりげないのがいいのです。

 しかし、タンスから出てきたふんどしを被って匂いが気になるってことは、母ちゃん、それってつまりは……。
なんて思ったりもしました。
短い中にギュッと中身の詰まった話です。
人を見かけで判断してはいけないですよね。

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俺はあばれはっちゃく DVD-BOX 1

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このランドセルの投げ方は

アバンタイトル

「俺はあばれはっちゃく」も第6話。
アバンに大人の男女が登場してきますね。
大人が登場するアバンはこれが初めてになるのかな。

本編

 今回は、長太郎対てるほの第2弾って感じの話です。
ちなみに第1弾は第3話かなって思ってます。
あ、でもこのてるほへの仕返しはヒトミちゃんの一言で思いとどまったか。

 ヒトミちゃんが算数のテストを100点でクラスのトップ。
ちなみに長太郎は25点。
クラス最下位なのですが、前回より10点あがったとのことで着実に成績は伸びている様子です。
脚本は、山根さんが戻ってきています。
この話は原作にもある話なので、原作と読み比べてみると面白いかと思います。
藤谷美和子さんが、てるほの憧れの先輩高校生にとしてゲスト出演されています。

 この話で、父ちゃんが午年って分かるのですが、父ちゃんを演じた東野英心昭和17年(1942年)生まれで午年です。
父ちゃんの年齢は後の話でおおよその推測が出来るのですが、演じていた東野さんと同じ年だと考えても差し支えはないようです。
ただ、東野さんは1月生まれの早生まれなので、学年は違う可能性はあるかもしれません。
ここでは、てるほが『火宅の人』を読んでいて大人っぽさを出しているなって思います。

 テストの点が悪くて怒られていますが、25点なので怒られていって、長太郎は頭の悪いのは遺伝と言ってますが、父ちゃんと母ちゃんは出来のいいてるほを引き合いに出して、そんなことはないと言ってます。
お小遣いアップで長太郎の家庭教師を務めるてるほですが、てるほの胸をからかう言葉に時代が出ていると感じます。

「ボインじゃなくてナイン」

その前に父ちゃんに言われた言葉に長太郎が返す言葉は、ちょっと言葉遊びが苦しいと感じました。

「恥を知れ」
「俺、女の子の遊びなんてしないまもん、おはじきだろ、「お」と「き」をとっておはじき」

 てるほに勉強を見てもらっても、長太郎の悪ふざけは収まらず、父ちゃんからついに家を追い出されてしまいます。
で、ご挨拶してドンペイと一緒に家出する長太郎、公園で巡査の山本さんと出会って言葉の指導。
ここで、山本さんが長太郎たちの住むと思われる神奈川県以外からきた人だってことがわかります。
山本さんと一緒に家に戻る長太郎、心配しながらてるほの前でいちゃつく父ちゃんと母ちゃん。
山本さんと一緒に戻ったことで、なんとか家に戻れた長太郎ですが、てるほの勉強の扱きはこれからが本番です。
なにしろお小遣いがかかってますから。

 この話の後半にランドセル投げが出てくるのですが、それがあまりにも不自然。
この不自然なランドセル投げは、少なくとも初代ではこの話だけですね。
さて、物差しでビシビシ叩かれた長太郎が思いつたのが、てるほが憧れているルミさんを使っててるほへの仕返しを開始。
それにしても、ルミさんって結構調子のいい人ですね。
ノリがいいというか。
こういう人を動かす言葉っていうか、人を乗せるのもうまいですよね長太郎って、父ちゃんやてるほを怒らせる言葉もスラスラ出てくるけれども、人をいい気分にさせるのもうまいので、本当になんというか言葉を知っているというか、文章の流れを作ったりするのが得意なんだなって思います。

 しかし、ルミさんを使っての仕返しは、長太郎の敵を2倍にしたもの。
ルミさんとてるほの二人で勉強を見られることに、それも勉強を見るよりは単に物差しで叩かれているって感じで、これが長太郎のように泣き寝入りしないからいいようなものの、ただの虐待だといわれても仕方ないですよね。
けど、まあ仕返しも公一に協力してもらって、古典的だけどかなりのダメージを与えています。

 原作だと目の悪い母ちゃんが勘違いする長太郎の熊の姿ですが、ドラマだと明らかに着ぐるみって分かるし、びっくりするにしても、てるほも父ちゃんも、山本さんまでみんな、熊に食べられた長太郎の声が聞こえるのだってちょっとおかしいと気づこうよ。
でも、あれだなあ。
それだけ動転していて、心配していたんだよね。
 
 このまま、着ぐるみを着て登校する長太郎。
さらにこんな日に限って、偉い人が参観日にくるからと佐々木先生が校庭で自習する羽目に。
勉強のせいかが出せなくて、いつもだったら喜ぶのに悔しがる長太郎。
今回は出番の少ない正彦でしたが、一言だけ嫌味を爽やかに言って短い出番の中で存在感を出してくる正彦はさすがです。
公一のいつもの長太郎らしさを思わせる一言もいい味を出しています。

 なんか女は怖いというか、長太郎の会話の回転の速さが早いって思うよな、(勉強は出来ないけど)そのランドセルの投げ方ありなのって感じる第6話でした。

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俺はあばれはっちゃく DVD-BOX 1

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原作を読んでいるとより面白い5話

市川靖さん登場

 第5話でまた新しい脚本家市川靖さんが登場します。
第5話では、以前にも考察しましたが、原作にあるエピソードを解体して組み立てなおし、長太郎の男らしさをより引き出す構成の脚本だと思います。
kakinoha.hatenadiary.com

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 以前に山際監督にインタビューをさせて頂いたときに、脚本家の中では市川靖さんが一番が一番しっくりくるとおっしゃっていました。
詳しくは、こちらの記事をお読みください。

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『俺はあばれはっちゃく』の脚本家は全員で5名の先生方で書かれていますが、市川靖さんが一番若手だったようです。
山中恒先生の『あばれはっちゃく』を読んだ上で、第5話を見てみると市川靖さんがものすごく原作の『あばれはっちゃく』を読み込んでらしたのではないか?と私は思うのです。

 長太郎のおっちょこちょいの勘違い、男としてのやせ我慢、自分に対する自信の大きさなどの、私が感じる長太郎らしさの真っ直ぐさが一番出ていると感じるのが、この第5話にはあって、その後の市川靖さんの書く脚本の特徴になっていると思います。会社で嫌なことがあって、長太郎に八つ当たりをした父ちゃんに張り倒されても、言い返すだけのパワーがあるのも、うるさくて勉強が出来ないと部屋から出てきたてるほの気の強さも短い場面の中で、しっかりと詰め込まれていると思います。

 この話では長太郎がヒトミちゃんに暴力を振るわないと手紙を書いて届けるのですが、ここでも手紙を使うのを見ると初期の長太郎というか『俺はあばれはっちゃく』では、手紙が話を動かす重要な小道具として働いていますよね。この手紙、学校のクラスのみんなにも、佐々木先生にも見せびらかしていて、話の最後でも効果的に使っているので、うまいあなって思います。

 さて、暴力、喧嘩をしない約束をした長太郎ですが、ヒトミちゃんにちょっかいを出してくる第二小学校の茂を倒すために、長太郎がひらめいたのが、ボクシングで決着をつけること。このボクシングが何故出てきたかといえば、ドラマでは長太郎の部屋にボクサーのポスターがあったからですが、原作を読んでみると正彦の得意なスポーツなんですね。

ドラマ5話のベースは原作の「のしイカ作戦」

この第5話のベースになったと思われる原作の「のしイカ」の話は、卒業式が終わった6年生に長太郎、ヒトミちゃん、正彦が絡まれていて、長太郎がボクシングの覚えのある正彦に加勢を頼むという流れになっているのです。この原作の要素をドラマにいかして、喧嘩ではないスポーツのボクシングで戦うというように話を運んだのも、違和感がありませんでした。

 長太郎の隠しておきたい秘密を見たのが親友の公一というのも、情報屋の役割を少しずつ見せていた公一が長太郎と茂の決闘のことをヒトミちゃんに知らせていくのも、それでクラスの皆が応援に駆けつけるのも長太郎があばれはっちゃくでも、クラスメイトから嫌われていないことが伝わってきていいなって思います。第11話で正彦たちから、仲間外れ宣言をされる長太郎ですが、勉強が出来なくても、あばれはっちゃくでも実は嫌われていないポジションにいて、愛されているんだなって感じます。

出演者の方々が語ってくれる5話

 この第5話は茂役の葺本さんが思い出を多く語れていて、長太郎役の吉田さんも思い出を話されているので、一番作品の裏側が分かりやすい話でもあります。この話は、長太郎のおっちょこちょいの正義が話の発端になってますが、出来事の通り一遍だけを見て人を悪者扱いする危うさを、サラリと描いていて、ああ、人がする行動の原因をちゃんと確かめないと、悪くない相手を責めてしまうのだなって感じました。ここでは、ヒトミちゃんと正彦の余裕のある対応で、長太郎が救われていると思います。

 ドラマを見ていて、給食当番の正彦が給食を配って歩いているのを見て、不思議でした。
私が小学生の時には、配って歩くことをしなかったので、これは地域や年代にとって違いがあるのかなって思ったのです。
市川靖さんの参加で、あばれはっちゃく、長太郎の印象が大きくなり定番のあばれはっちゃくの人物像が出来上がってきたと思います。

アバンタイトルに公一登場

アバンタイトル

 『俺はあばれはっちゃく』も第4話。
これまで長太郎の一人遊びだったアバンタイトルに長太郎の親友の公一が出ています。
二人でターザンごっこしていますね。

「ジャングルがジャングルジムなんだ?」

っていう駄洒落オチです。

本編

 3人目の脚本家田口成光さんの登場です。
実は、DVDを買って一番古い『俺はあばれはっちゃく』の話の記憶が私の中では、この第4話だったのです。
だから、とても懐かしく感じましたね。

 本編に入って長太郎が作文の宿題を読んでいます。
長太郎は前回の第3話でも手紙でヒトミちゃんに気持ちを伝えようとしたり、この宿題を忘れずにやっていて、父ちゃんのことを書いていたりして文章を書くことがそんなに苦手ではないようです。
これは、後の話でも正彦の父親に直談判に行って「辞食表」(ドラマの誤字のままで書いてます)を書いて出しているところからみても、文章に気持ちを込めることが苦ではないようです。

この作文で父ちゃんの月給が30万円だと長太郎が書いているのですが、この作文を読んでどう思ったかっていうのを聞かれて真っ先に正彦が手を挙げるのですが、これがいきなり長太郎の作文の内容を否定します。

「嘘を書いているとおもいます!」

 長太郎の父ちゃんの上司の自分の父よりもらっているのがおかしいってくるんですが、なんかこういう言い方ははっきりしているだけに嫌な言い方ですよね。
それに対して、前の働いていた時にって長太郎が応戦しているので、佐々木先生も嘘ではないなって結論を出していて、正彦も今の職場の話ではないからと納得している様子なんですが、ここで一言、謝ってほしかったなって思ったりもします。
パンダのことがかかれていて、パンダが人気だった時代を感じますね。

 パンダを見に行くことを作文にかいているので、長太郎はクラスの中心になります。
ヒトミちゃんがパンダが大好きなのでヒトミちゃんを連れて行く約束をします。
動物園に行くときに何を着てきて欲しいという言葉に、即座にミニスカートって答える長太郎ですが、ヒトミちゃんの答えがこれ。

「エッチ!」

 そもそも、この時期のミニスカートって寒いって、長太郎。
日曜日に父ちゃんにヒトミちゃんと動物園に行く約束をするのですが、正彦の父親からいきなりの仕事を入れられてキャンセルになってしまって、長太郎が一芝居うつことになります。
ここで長太郎の後に出てくる電話での口真似、物真似が出てきます。
公一も協力していますね。

 これでとりあえずは、長太郎は動物園に行くことが出来るのですが、正彦と正彦の父親とバッタリ出会って、作戦は脆くも崩れ去ります。
ヒトミちゃんは、正彦親子と美術館に行ってしまい、長太郎は父ちゃんに連れられて家に戻って、ロープでしっかり縛られてしまいます。
父ちゃんは仕事をする為に仲間に電話をしますが、中々人は集まらず、長太郎は父ちゃんの手伝いに借り出されます。

 小学生とはいえ、父ちゃんの大事な仕事に穴をあけて、仕事の大きな邪魔をした代償は大きく、この手伝っているところに正彦とヒトミちゃんが現れます。これは、辛いですね。
長太郎も怒りを込めてとんかちを振り下ろしています。
正彦の父親もかなり酷いことを言っていますが、上司の手前で父ちゃんも正彦の父親を持ち上げていて長太郎の悔しさはマックスです。

 今回は、急に仕事を入れた正彦の父親が悪いとは思うのですが、社会に出るとどうしても急な仕事というのは入ってしまって、これが独り者ならいいものの子どもがいる人の場合、子どもとの約束を破る結果になり、子どもに寂しい辛い思いを強いてしまうのだなってことがあるんだなって思いました。
父ちゃんも悔しかったでしょうね。
家族との生活の為に仕事を辞めるわけにもいかない。
ここが小学生の長太郎が自分の気持ちに真っ直ぐに感情を出せるのと出したくても出せない父ちゃんの大人の違いなんでしょうね。

 それでも、次の日のヒトミちゃんの言葉が救いですよね。
この回で、完全に正彦親子は敵役として存在を確かにしましたが、話が進むにつれて正彦親子の良さも出てきます。
『俺はあばれはっちゃく』は完全な善人も悪人もいない。
ごく普通の人達、愛すべきところ、ダメなところ、意地悪なところ、優しいところもある人間がいっぱい存在している作品なんだなって思います。
 
 この第4話で『俺はあばれはっちゃく』の放送も1ヶ月を終わりました。
まだ寒い日がありますが、3月になって少しずつ暖かくなっていくのかなってところでしょうか。

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女性がメインです

唯一の女性脚本家三宅さん登場

『俺はあばれはっちゃく』も第3話。
これまで1話、2話で山根優一郎さんが脚本を担当されていましたが、第3話で新たな脚本家三宅直子さんの登場です。
三宅直子さんは、この第3話からシリーズ最終作『逆転あばれはっちゃく』まで、脚本家として『あばれはっちゃく』シリーズに最後まで関われていきます。
初代『俺はあばれはっちゃく』に関わった5人の脚本家の中で、唯一の女性脚本家の方です。

 そのために、三宅直子さんが担当されるお話は、女性の人物達が話の中心になっていて、最初のメインは長太郎の姉、てるほです。
母ちゃんのおせっかいな面も出ていて、母ちゃんも少し目立っています。
父ちゃんが、てるほのことを「ちゃん」づけで呼んでいるのは、振り返ってみてみると、ちょっと珍しいですね。
1979年本放送の時は、まだ第3話だったので、そういうことを視聴者がまだ感じるところまではいってなかったと思いますが。

本編

 てるほの初恋がメインの話。
弟の長太郎が小学5年生で片思い恋愛中なので、中学2年生で初恋でラブレターを書いたけれども渡せていないてるほは、奥手だなって感じます。
この頃って、恵子ちゃんが長太郎を好きみたいな描写があって、これは1話、2話でもなんとなくそう感じる部分は少しあったんですけれども、第3話では明確になってます。
それで、長太郎はヒトミちゃんに誤解をされてその誤解を解くために手紙を書くのですが、誤解を解くために手紙を使うところが、今となっては古風な感じがします。

 長太郎なら手紙ではなく、直接言いそうな気もするんですけれども、ヒトミちゃんには直接言うのに少し怖いっていう感情があったりするのかなって思ってみたり。
第2話の長太郎の一張羅もそうなんですけど、第3話の長太郎の手紙を受け取ったヒトミちゃんもお琴の練習のために着物を着ているんですよね。学校から帰ってきて着物を着ているっていうのも、本放送の1979年当時でも珍しかったんじゃないでしょうか。

この回は、長太郎がてるほの初恋を実らせるために恋のキューピッドをかって出るのですが、これはてるほのためというよりは自分の為なんですよね。
この長太郎の行動のきっかけになったヒトミちゃんの言葉が私は好きなんです。

「心が傷ついているのよ、心が優しくなれば優しくなれるわ」

 で、姉てるほのために一肌脱ぐのですが、これって、喧嘩して人をとっちめてやろうって思うよりも、優しくして相手に心の余裕が出来たら、自分にも優しさが戻ってくるってことを暗に示していて、まさに「情けは人のためならず、巡りめぐって我が身の恩」という本来の言葉の意味を表現しているんだなって思います。
長太郎のキューピッドの影で、物語の冒頭から人間関係をややこしくするキュービッド役を勝手にしているのが公一です。
長太郎と恵子ちゃん、ヒトミちゃんと正彦のカップルを作って喜んでますね。

 恵子ちゃんは途中からこの恋愛関係から外れていくのですが、いよいよこの第3話で長太郎、ヒトミちゃん、正彦の三角関係が出来上がったって感じがします。
それにしても、この第3話の長太郎やヒトミちゃん、正彦も恵子ちゃんもマセていますよね。
中2のてるほの初恋、相手の高校生のヒデキさんはマザコンで、小学5年生の長太郎に言われっぱなしだし、恋愛関係や感情は長太郎達の方が上だなって思います。

 さらに恐ろしいのは、自分がモテている自覚のあるヒトミちゃんですね。
ヒトミちゃんは優しさもあるんですけど、ラブレターをコレクションしていて、その数を自慢している。
さらに数だけではなく、質まで求めているのは長太郎にラブレターの書き直しをしたことからも分かります。
うーん、長太郎もこのヒトミちゃんが初恋だとかなり先が思いやられるってことが伺える第3話でした。

 第3話では、アイキャッチやサブタイトル以外にも、場面転換にイラストが使われていて、これも全体を通してみると第3話だけなので、特徴的です。
サブタイトルのイラストが女の子同士が向かい合っている横顔だって言うのも面白いですね。
この向かい合っている女の子って誰なのかなあ。
普通に考えると、ヒトミちゃんとてるほってことでいいのでしょうか。

 頼りにならないヒデキさんのマザコンに失望したてるほがふる形で初恋は終わりましたが、頼もしいてるほが誕生し、長太郎の一筋縄ではいかない恋愛が始まりを告げた第3話です。女の子の強さと逞しさが出ている話だなって思います。

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