原作の長太郎はドラマの長太郎と比較すると、それ程までにヒトミちゃんを好きだというのがありません。勿論、原作の長太郎もヒトミちゃんが好きなのですが、他の女の子や女性にも関心があって、優しくて綺麗で可愛い女性に弱いのです。
原作にはこのように書かれています。
長太郎もそうだが、父はかわい子ちゃんいめっぽうよわいのである。
原作の長太郎も父ちゃんも綺麗な女性に弱いのです。原作の長太郎はてるほの友人で美人で優しい相倉マユミさんが好きで、そのマユミさんと仲良くしているのをヒトミちゃんに見られても、こんなことを言ったりしています。
「へっ、やきもち妬いてら」
また、朝比奈のじいさんの孫娘の写真を見てはこんな発言。
「ふうーん!美人だな。こんなガールフレンドをつれて、みんなに見せつけてやりたいな」
さらにはこんなことも考えます。
ーーーふふふ、いっしょにプールへ行ってやろうかな?ぼんおどりにさそってやらなくちゃ。それからねえちゃんや、ヒトミちゃんに見せびらかしてやるんだ。ウシシシーーー
原作の長太郎もヒトミちゃんが好きでヒトミちゃんが他の男の子とあてつけがましく仲良くしていると面白くなくてやきもちを妬いたりするのですが、どちらかというと長太郎の方がヒトミちゃんを(他の事が気になって)相手にしてなかったり、他の女の子に興味をもってしまったりして、その結果、ヒトミちゃんが長太郎に対して当てつけがましい態度を取ってしまうので、長太郎よりもヒトミちゃんの方が長太郎を好きなんじゃないかなと思う事が多いのです。
ドラマの第41話の時のような長太郎とヒトミちゃんの関係が、原作の長太郎とヒトミちゃんの関係に近いかもしれません。
ドラマの長太郎は堂々とヒトミちゃんへの気持ちを示していますが、原作ではヒトミちゃんの方が堂々と長太郎への気持ちを示しています。原作の長太郎には好きな女の子を素直に好きというには少し照れがあるようです。原作では半年前に転校してきたヒトミちゃんと仲良くなりたいけれど、素直にそれが出来ないのが原作の長太郎です。
一年生や二年生のときなら、転校してきた女の子とでも、きやすく口をきくようになるが、五年生にもなるとちょっと照れくさいのである。
原作の長太郎は男として好きな人を素直のに好きというのに照れ臭さを持っています。ヒトミちゃんを好きな気持ちはあって、それが態度に出る事もありますが、時とそしてそれに意地をはって逆の態度を取ってしまう事が多いのです。それでも、ヒトミちゃんの為にムキになって必死になります。ドラマの長太郎ほどではありませんが、原作の長太郎もヒトミちゃんの北海道転校の為に必死になります。
長太郎はヒトミちゃんの知り合いの中学生苫村清治からヒトミちゃんの転校のことを知り、ヒトミちゃんの真意を知って息をのみ、涙を流します。原作の長太郎はドラマの長太郎ほどにヒトミちゃんへの気持ちを示してはいませんでしたが、最後の最後でクラスの皆の前で告白をするのです。
「あのよ。おれなあ、宮村ヒトミが好きだった。いまも好きだぞ。どこが好きなのか、よくわからねえけれど……おれ、ヒトミちゃんのために学校へ来ていたみてえなもんだったなあ」
と。長太郎は皆に冷やかされますが、びくともしません。それまで、そうした態度をあまり出してこなかった原作の長太郎だからこそ、この最後の最後で言う告白の言葉が重く感じるのです。だからと言って、ドラマの長太郎のヒトミちゃんへの思いが軽いとは思いませんけれど、ドラマはドラマでドラマの長太郎のヒトミちゃんへの一途な思いを一年かけて描いてきて、その思いは見ている私たちに伝わってきました。どちらの長太郎もヒトミちゃんへの思いの示し方は違いますが、ヒトミちゃんを大切にしていたのだけは変わらないんだなと思います。