『俺はあばれはっちゃく』第44話で長太郎、てるほ、母ちゃんの3人が詐欺師に騙されてそれを父ちゃんに知らせないようにするものの結局ばれて大目玉を食らう。この時の3人を見ていると、余程父ちゃんが怖いと見える。すかさず、自分に父ちゃんの怒りが来ないように互いに責任をなすりつける。真っ先にそれをするのがてるほ。てるほはこの時に限らず、自分に矛先が向く前にそれを逸らす事が多い。これより前の第8話のおふでさんの時も同じように長太郎の方へ責任を持っていった。
この責任のボールを受け取った長太郎は素早くてるほに責任を投げ返す。しかし、そこは頭の回るてるほ、今度は父ちゃんに責任を持っていく。勿論、これには父ちゃんも反論するのだが、てるほは強気な態度で立ち向かう。
「姉ちゃんだって、鼻をぐずぐずさせながら母ちゃんに着物買え、着物買えって勧めていたくせに」
「だいたいお父さんが悪いのよ!」
「なんだと!」
「だってそうじゃない!母さんに着物一枚も買ってあげないからよ」
この正論に加え父ちゃんはてるほには弱いので、何も言えなくなってしまう。その尻馬に自分の責任が逸れた長太郎が加勢してくる。
「そうだ、そうだ!いい事言うな。元でべそ」
とにもかくにも長太郎もてるほも自分の責任でなくなればいいので必死だ。
まわり回って結局父ちゃんのせいになり(元はと言えばボーナスはないよ。なんて言った父ちゃんの会社の人が悪い気もするけれど)、挙句の果てに父ちゃんはてるほに反省を促される。
「お父さん、反省したら!」
「なにも反省する事なんてねえ!」
女の子の方が口が達者で、こうした口喧嘩になると男の人は勝つ事が出来ないと聞いた事があるが、まさにこの時は父ちゃんはてるほに言い負かされていた。
「お母さんに愛してると言ったら」
「釣った魚になんとやらだ!」
さらにてるほに言われて照れくさくなった父ちゃんの言葉から今度は夫婦喧嘩に発展してしまう。この喧嘩の時、母ちゃんの言った言葉は今聞くと、父ちゃんを演じた東野英心さんが本当に4人の俳優の中では一番に逝ってしまったので、なんとも言えない気持ちになった。
「父ちゃんと子供達に先立たれたら…」
気の毒な話に同情して騙されてしまう。エンディングの『はっちゃく音頭』で長太郎の事を「お人よし」と歌っているが、この長太郎のお人よしな性格は長太郎だけでなく桜間家の特徴なのだと思う。さて、父ちゃんと母ちゃんの喧嘩も長太郎とてるほのお蔭でなんとか治まる。子は鎹というが、この2人がいて本当に良かったなと思ったりする。