柿の葉日記

主にテレビドラマ「あばれはっちゃく」について語る個人ブログです。国際放映、テレビ朝日とは一切関係がありません。

誘拐されたゾ

『俺はあばれはっちゃく』第22話で長太郎が正彦と間違えられて誘拐される。最初は被害者だった長太郎も犯人に加担をし誘拐の主謀者として犯人に色々とアドバイスをしはじめる。それにしても長太郎は見事に縛られているが、抵抗とかしなかったのだろうか?長太郎があっさりと縛られる訳ないと思うのだが…。犯人が怪我をしている様子はないし…。

ヒトミちゃんが長太郎が誘拐犯の車に乗せられるのを見て、父ちゃんや公一、正彦に報告するが誰一人として信じない。父ちゃんもひょっとしたらと少し心配したのだと思うが、うちの長太郎に限ってそんな事ありはしない、と即座にその心配を打ち消している。しかし、自分の目で目撃したヒトミちゃんは帰ろうとする公一と正彦を引き留めて抗議する。

「それでも長太郎君の友達なの!誘拐されて殺されたらどうするのよ!」

3人にとっては現実味のない話で心配のしようがないのだが、ヒトミちゃんからしてみれば現実の出来事で、心配で心配で仕方がない。犯人に酷い事をされたらどうしよう?殺されたらどうしよう?と不安だったと思う。

だから、長太郎が無事に帰ってきた時に言ったんだろう。

「長太郎君!昨日、私、本当に心配したんだから!でも、私、あなたみたいな人嫌い!」

嫌いなのは自分の事を心配させた長太郎。心配だったのは友人である長太郎。こんなに心配させて!という気持ちが「嫌い」って言葉になったんだろうなと思う。

長太郎が誘拐なんてされる訳がないと心配を吹き飛ばした父ちゃんも本当に誘拐されたのが分かると少し慌てる。もっとも長太郎もこの誘拐に加担していた事を知ると、やはり怒るのだけど。長太郎の場合、正彦の父親に嫌な思いをさせれたのもあって半分その腹いせと面白半分で犯人に付き合うのだが、半分は犯人の話に同情してもいる。誘拐された人間が誘拐犯と一緒にいると誘拐犯と共感する事をストックホルム症候群と言うが、長太郎も少しだけそれになっていたか、なりかけていたのだろうと思う。

誘拐騒動と言えば『気まぐれ本格派』の新ちゃんの時もあった。この時は無遅刻無欠席の新ちゃんが学校に行ってないという連絡を受けて一貫は誘拐されたと思い込み滅茶苦茶に心配する。

「ああ、新太、頼むから生きていてくれよ。にっこり笑って『ただいま!』って元気よく帰ってきてくれよ。新太」

ここでは誰一人一貫の心配を行き過ぎた心配として受け止めてはおらず、可能性の一つとして心配している。『俺はあばれはっちゃく』の父ちゃんも心配してなかった訳ではないが、その心配よりも大丈夫という気持ちの方が強かったのに対して、一貫の場合は大丈夫と言う気持ちよりも心配の気持ちの方が勝っていた。

新ちゃんは長太郎と違って暴れん坊で喧嘩が強いという訳ではないが、しっかりもので警戒心が強い所がある。実の父親の今井さんがこっそりと自分の後をつけてきた時に今井さんに気付いて言う。

「おじさん、僕を誘拐しても駄目だよ。僕んちお金ないから」

こうした面で新ちゃんが誘拐されるという心配はあまりしなくてもいいと思ったりするのだが、やはり皆勤賞を楽しみにして学校へ行っていたあの新ちゃんが学校へ行っていないというのは一貫にとっては青天の霹靂であったに違いない。

新ちゃんの場合はさぼりで実際には誘拐されてなかったのだから、一貫の心配は杞憂だった訳だが、実際に誘拐された長太郎の方が父ちゃんにあまり心配されなかったのは、一貫と父ちゃんのキャラクターの違いだけでなく、新ちゃんと長太郎のキャラクターの違いも大きいのかもしれない。

学校をさぼってこれだけ心配された新ちゃん。学校をさぼったといえば『鉄人タイガーセブン』の次郎もそうだが、この時は姉のジュンは心配したものの剛は笑って心配しなかった。

「学校をさぼるようになれば次郎も一人前さ」

7歳の男の子がどこへ行ったか分からないと言うのになんで笑っていられるのだろう?次郎なら大丈夫と言う安心感か?父ちゃんより能天気過ぎだぞ、剛!だから、ジュンに責められるんだ。実際にムー原人に襲われて危なかったし。明るく笑ってないで少しは次郎の心配をしてくれ、剛!とちょっとばかし思ってしまった。

『すぐやる一家青春記』の智之は自身が誘拐されたり、行方不明になって心配させたことはなかったけれど逆に由香ちゃんに心配させられた。
由香ちゃんが離れて暮らしているお父さんが由香ちゃんに会いに来た時に、お父さんを「知らない人」と答えた由香ちゃんの言葉を聞いて、誘拐犯だと思い大声でバケツを鳴らして周りに知らせたり、由香ちゃんとデパートにいってはぐれた時は、散々探して見つからなくて、不安で泣きそうな顔をして父親の雄作さんのいる「すぐやる一課」に電話をして懇願して言った。

「早く、皆で由香ちゃんを捜して!」

智之は探しても探しても探し人が見つからない不安で切ない孤独な気持ちの焦りを感じていただろうなと思う。いるべき人がいないという不安感は心をかき乱される思いで、それはその人の無事な姿を見なければ消える事はない。ヒトミちゃんも一貫も、ジュンも同じように心配していたと思う。この心の消耗は肉体の消耗に匹敵する、いや、それ以上のものだと私は思う。そういう点で誘拐は憎むべき犯罪だ。こうした心配した側の気持ちを考えると、ヒトミちゃんの「嫌い!」と言う言葉も当然だと感じる。

心配されていると言う事は大事にされていると言う事。長太郎はそんなヒトミちゃんの言葉を受けて「感じるな」って喜んでいたけれど、もう少しヒトミちゃんの気持ちも考えてあげて欲しいなと思った。