長太郎は結構、酷い徒名を女の子たちにつけている。まず、第1話で恵子ちゃんにつけたのが「メガネ豚」小百合には「髪長、おばけ」明子が「目玉のおばけ」で、第17話でゲスト出演したタマエが「アマゾンのゴリラ」である。
中でも本人に直接言った「アマゾンのゴリラ」は酷過ぎる。言われたタマエ自身がそれをさほど気にしない性格だとしても、やはり好きな男の子にそう言われたら傷つく。ましてや、もうすぐ別れるときに言われたら尚更切ない。長太郎に助けられて一目惚れして押し掛け女房みたいに長太郎の気持ちや迷惑を顧みず、やってきたタマエは長太郎にとってはやっかいな何物でもないしうんざりする気持ちは良く分かるのだが、タマエの引っ越しが決まり、見送りに対して捨て台詞をはいて走り去って行った長太郎の後ろ姿を見送ったタマエの切ない表情が堪らなく悲しい。
「誰が見送りなんかいくか!」
皆がタマエを見送った後で隠れたところから出てきた長太郎の額にタマエがしていたバンダナがあった。
それを見てドラマの中では描かれなかったけれど、長太郎とタマエはちゃんとお別れをしたんだろうなって想像することが出来た。
バンダナというたった一つのさりげない小道具なのだけど。
長太郎に暴言を吐かれたタマエが別れの時に笑顔だったのは、きっと長太郎とちゃんとした別れが出来たからなんだとバンダナが伝えてくれた。
「18歳になったら、長やん(長太郎の事)のお嫁さんになる為に戻ってくるさかいな」
別れの最後にタマエはそう言った。
長太郎が好きなった女の子も(ヒトミちゃん、ノリコちゃん)、長太郎を好きになった女の子も(タマエ)、みんな転校して長太郎の前から去って行った。あの世界は56回で幕を閉じ、それ以後が存在しない世界だけれども、最終回からもうすぐ30年。もし、私たちの見えない所であの世界が続いているのならば、タマエは18になった時に長太郎の元に戻ってきただろうか?そして長太郎と一緒になっただろうか?それとも長太郎は、ヒトミちゃんかノリコちゃんと再会してどちらかと一緒になっただろうか、はたまた全く違う女性と一緒になったか、それとも今も独り身のままだったりするのだろうか。と、続きのない世界の彼らのそれからに思いを馳せた。