柿の葉日記

主にテレビドラマ「あばれはっちゃく」について語る個人ブログです。国際放映、テレビ朝日とは一切関係がありません。

『男!あばれはっちゃく』57話「富士が笑うぜ」感想

『男!あばれはっちゃく』57話より

1981年5月2日放送・脚本・市川靖さん・松生秀二監督

スラップスティックハチャメチャコメディ

今回はゴールデンウィークということで、長太郎達が父ちゃんの勤め先ちとせ美工の接待仕事を兼ねて、富士急行日本ランド(現・ぐりんぱ静岡県裾野市)に行って騒動を起こす話。

最初は長太郎は日本ランドに誘われなかったこともあって、ゴールデンウイークの休みに寺山先生にたくさんの宿題を出してもらうことで、克彦達のゴールデンウイークを台無しにしようとしたものの、結局はそれは長太郎自身の首を絞めることに。

なぜか、ちとせ美工の父ちゃんと克彦の父親の仕事なのに、長太郎や克彦、みゆきちゃん、マリ子ちゃん、悦子ちゃん、章、信一郎に洋子さん、カヨちゃんに寺山先生までバスを貸し切って日本ランドに行くことに。

あれ、これってちとせ美工が吉岡トーイの社長の接待の仕事なのに、父ちゃんと克彦の父親以外にちとせ美工の社員がいないんですけれど、それでいいの?長太郎達が泊まるホテルには「ちとせ美工御一行様」ってあるけれど、長太郎達もちとせ美工御一行様でいいの?なんて思ってしまいました。

『男!あばれはっちゃく』57話より

ま、いいんだろうな。とりあえず、みゆきちゃん達が克彦に誘われた日本ランドに長太郎も父ちゃん経由で参加することに、首を絞めた膨大な宿題は寺山先生に見てもらいながらやることになって、長太郎の宿題も大丈夫かと思いきや、宿題が終わらない長太郎と置いて、寺山先生もみんなと一緒に遊園地に行ってしまうという。

吉岡トーイの社長を接待ゴルフでもてなそうとした父ちゃんと克彦の父親は時間になっても来ない社長にイライラ。父ちゃんを置いて克彦の父親はゴルフ場に行ってしまい、寺山先生の置手紙を見た長太郎は怒って手紙を破いて遊園地に行ってしまいます。

でも、長太郎は遊園地の入場料を買うお金がない、長太郎と同じように現金で入場料を払えないおじいさんが係員と言い争っている姿を長太郎は目撃します。ここで、この現金の代わりにおじいさんが出したのが小切手、次に出したのがカード。このカードの名義をよく見ると、おじいさんの正体が分かるようになっています。

『男!あばれはっちゃく』57話より

長太郎とおじいさんは何とか遊園地に入ろうと様子を伺っていると、車から降りた係員がジャケットを脱いでボンネットに置いたのを見て、2人同時にそのジャケットを着て係員に成りすますことを閃きます。けれども、すぐにばれてしまって、係員に追いかけられることに、次々と係員を巻き込んで、壮大な追いかけっこが始まるのです。

『男!あばれはっちゃく』57話より

ハチャメチャ壮大な追いかけっこ

その奔走ぶりはとても痛快で愉快で面白く、おじいさんがピンチになった時は、迷惑な顔をしながらも長太郎がおじいさんを助け、長太郎がピンチになった時は今度はおじいさんが楽しそうに助けていきます。

長太郎とおじいさん、次々と巻き込まれて長太郎達を追いかける係員が増えていく過程も面白いのですが、その途中で洋子さんと一緒にいて自動販売機のジュースを買っていた信一郎が巻き込まれてしまったとこです。

景色を見ている洋子さんと自分の分のジュースを買おうと自販機のボタンを押した後で洋子さんに話しかけられて気を取られている隙に来た長太郎が落ちてきたジュースを取ってしまう。

続いてきたおじいさんにも同じようにもう一本取られた挙句、追いかけてきた係員に倒されてしまう信一郎。後ろで騒動が起きているのに、信一郎が倒れるまで気づかない洋子さんなど、私の文章で読むよりDVDの映像の動きで見た方が、そのコミカルな面白さが伝わると思います。

逃げ回った長太郎達でしたが、終に捕まります。一方、父ちゃんの方は吉岡トーイの人が来て先に行った社長がまだ来ないのに、克彦の父親がゴルフに行ったことを怒っていて、父ちゃんも叱れていて、そこに長太郎達が帰ってきます。

ちょっと感じた不自然さ

前半は長太郎とおじいさんが巻き起こす騒動が面白い話でしたが、後半の話の展開がとても不自然に感じました。長太郎が日本ランドに行くことになった経緯は父ちゃんが吉岡トーイの社長の接待に同行することになったからで、それは父ちゃんの台詞から分かります。

また、おじいさんが遊園地の入場料の代わりに見せていたカードの名義「吉岡哲夫」を見れば、このおじいさんが父ちゃん達が待っていた社長であることも分かるわけです。

長太郎がそのおじいさんと一緒にホテルに帰ってきたら、いきなり父ちゃんが長太郎をはった倒しています。なんで、いきなりはった倒しているのか意味が分かりません。おじいさん、吉岡社長は長太郎に迷惑をかけられたと父ちゃんに怒っていないし、寧ろ長太郎とおじいさんは寺山先生に迷惑をかけたことを謝っていたとこ。

それに父ちゃんはこの時点では、吉岡社長の正体を知らない状態で、いきなり長太郎が悪いと長太郎を殴っているのです。これが、長太郎が宿題をサボって出ていったことを知っていればまだ分かるのですが、そうでもない。

それに父ちゃんと克彦の父親が吉岡トーイの社員に怒られたのは、社長が来ていないのに克彦の父親がゴルフをしていたからで、そこには長太郎は関与していないわけで、父ちゃんが長太郎に怒る理由はないんですよね。

『男!あばれはっちゃく』57話より

それなのに長太郎を父ちゃんが叩いて怒ったのは、八つ当たりにしか見えない。吉岡トーイの社員の人が吉岡社長に気づいて駆けつけ、父ちゃんと克彦の父親も慌てて吉岡社長に挨拶。

それまでは、父ちゃんは長太郎を庇う社長に悪態をつき、そんな父ちゃんを見て吉岡社長に失礼な発言をして、吉岡トーイの社員の対応を父ちゃんに迫る克彦の父親と2人で醜態を晒しています。

吉岡社長に醜態を見せた父ちゃんと克彦の父親は、なんとそれを全部長太郎のせいにしてしまうという暴挙に。

うーん、長太郎がホテルに来て商談をしようとした社長を一緒に遊園地に行って連れまわしたならともかく、そうではないし、長太郎が怒られる要素がまるでなくて、父ちゃんと克彦の父親の行動が不可解で自分勝手に見えてしまいます。

もしかして、これ実は台本が実際のドラマと違うのではないかしら。本来は宿題をほったらかして抜け出した長太郎が吉岡社長と会って、父ちゃん達と合流する前に遊園地に連れていき、それを目撃した吉岡トーイの社員の人が父ちゃん達に話して、その連れて行った子どもの風貌を聞いて、もしかしたら長太郎が……っていう話の流れだったのかなって思ったりもしました。

だって、そう考えないといくら何でも、父ちゃんの行動が理不尽すぎて……。結局は長太郎と苦楽を共にして、すっかり長太郎を気に入った吉岡社長の一言で長太郎は助かり、父ちゃん達の仕事も無事に終わったのだけど、なんかこのラストへ向かう過程がすっきりしなくて、前半が爽快だった分、モヤモヤが残ってしまいました。

破天荒な話

昔、山際監督にお話を伺った時に、スラップスティックな話を市川靖さんが書いてきたことを褒められたことがあって、今回の脚本を書いた市川さんは『あばれはっちゃく』に自由で奔放な話を書くことを一つの目標にされていたのではないかなって思いました。

今回は日本ランドとのタイアップもあって、その魅力を楽しく伝えるということもあったと思うのですが、それ以上に見て楽しい破天荒な話を目指していたように感じました。ただ、父ちゃんの理不尽な言動で、ちぐはぐな話になってしまったのだけが残念です。

『男!あばれはっちゃく』57話より