柿の葉日記

主にテレビドラマ「あばれはっちゃく」について語る個人ブログです。国際放映、テレビ朝日とは一切関係がありません。

『男!あばれはっちゃく』47話「あばれラーメン」感想

『男!あばれはっちゃく』47話より

1981年2月21日放送・脚本・安藤豊弘さん・松生秀二監督

ラーメンはあまり関係ないかな

今になって、このサブタイトル「あばれラーメン」を見ると、三宅直子さんが関わった「はっちゃくラーメン」のことを思い出してしまいます。この47話「あばれラーメン」の脚本は、三宅さんではなく、安藤豊弘さんですが。

さて、サブタイトルにあるラーメンに関しては、話を見てあまり話には関連していないなって思いました。今回の話に関わる人達と出会うきっかけにラーメン、屋台のラーメン屋は関わってはくるのですが、なんといか、出会いのきっかけの小道具になっているだけかなって思いました。

長太郎は同じ学校の上級生でサッカー部のキャプテン浜田が、部員に追いかけながら走ってきた時にみゆきちゃんを突き飛ばしてしまい、それを知った長太郎が浜田に掴みかかっていきます。長太郎が学校から帰ると、母ちゃんに父ちゃんへの届け物を頼まれ、帰りにラーメンでも食べておいでと言われ、長太郎は屋台のラーメンに寄ります。

この屋台のラーメンをやっているおじさんが浜田のお父さんで、そこで長太郎は浜田に会います。また、そこに浜田のお姉さんが来ていて長太郎はこの3人の親子関係を少し目にします。

この場面の前に浜田が学校から帰ってきて、家にある結納品に当たり散らしている場面があったり、屋台の手伝いにきた浜田のお姉さんがもうすぐお嫁に行くという会話があることから、それまで明るく元気だった浜田がサッカー部の活動をしなくなり、みゆきちゃんを突き飛ばしてもぶっきらぼうだった理由が、お姉さんの結婚にあることが分かってきます。

今回はラーメン屋の浜田家の問題に長太郎が関わっていく話で、ラーメンもこの話にはちょくちょく登場してくるのですが、特にラーメン屋ではなくても、お姉さんがもうすぐ嫁いでしまう寂しさから、ひねくれた弟の心を長太郎が立て直すという話の筋を見ると、取り立てて、ラーメン屋に拘る必要もなかったかな、と思いました。

それよりも、長太郎がその屋台のラーメン屋でラーメンを食べている時に流れていた小柳ルミ子さんの「瀬戸の花嫁」の歌の方が、今回の話とシンクロしているなって思いましたね。「瀬戸の花嫁」は嫁いでいく花嫁を歌った歌なので、今回の浜田姉弟の関係と重なります。丁度、長太郎がラーメンを受け取った場面で「幼い弟、行くなと泣いた」の歌詞が出てきますから、より一層そう感じます。

『男!あばれはっちゃく』47話より

横道にそれて

瀬戸の花嫁』はこの場面でしか流れていなくて、特に作品のBGMでもないのですが、今回の話とシンクロしていているので、今回の話は『瀬戸の花嫁』をモチーフにした話なのかなって、私は個人的に思っています。

さて、『瀬戸の花嫁』は小柳ルミ子さんが1972年に歌って長くヒットした曲ですが、この『瀬戸の花嫁』を歌った小柳ルミ子さんも、また宝塚歌劇団のOGの一人です。世間一般に広くヒットした歌で普段の町の中でも流れていて、ドラマの中でも屋台の店で流れていた一般的な歌、ドラマの些細なBGM、それも歌を少し使われただけですが、これも宝塚歌劇団のOGが『あばれはっちゃく』に出演した例の一つなのかもしれないなって思いました。

小柳ルミ子さん自身にとっては、自分の歌がドラマのBGMに少し使われた程度であり、出演者の名前もなく、本人の姿も登場していませんし、出演歴に数えることは、一般的にもないと思いますが、こんな形でドラマの話に関係してくるのは、面白いなって思いました。

小柳ルミ子さんは56期生で首席で宝塚歌劇団に入団しています。この56期生はスターを多く輩出した期であり、有名なところでは元雪組トップスターの麻実れいさん等がいます。現在の宝塚歌劇団は1学年で40人前後ですが、56期生は70名(宝塚音楽学校入学時は72名、一人中退、一人入団辞退)その中での首席であったこと、同期のスターの活躍を知ると、小柳さんの凄さを感じます。56期生の中に入団を辞退している人がいますが、この人はNHK朝ドラ『てるてる家族』の主役のモデルになったなかにし礼さんの奥さんの石田ゆりさんです。

小柳さんは芸能界デビューの為に宝塚音楽学校を首席で卒業することを目標にしていたので、すぐに宝塚を退団して、歌手デビューをしてしまいます。大雑把に分けて(違う人もいますが)、宝塚は宝塚の舞台に憧れて入団してくる方と、歌手や映像メディアの役者としてデビューするために入団されてくる方がいて、小柳ルミ子さんの場合は後者のタイプでした。

それでもラーメンで面白さ

ラーメンがあまり関係がないとは言っても、ラーメンの屋台で出来る面白いことも、この話では見せてくれました。それは、お釣を多くもらった長太郎がそれを返しに行った時に、足を怪我したおじさんの代わりに屋台をやったこと。浜田も誘いますが、断られ、長太郎と章の2人で屋台をすることに。そこに父ちゃんと寺山先生が来ての大騒動。

『男!あばれはっちゃく』47話より

長太郎が釣り銭を多くもらうとこも、その前に別の客でも釣り銭を間違えている場面があって、それがちゃんと伏線になっていたりしります。また、長太郎の狡くちゃっかりしている一面と、ちゃんと筋を通す男らしい一面が、釣り銭を使って両方表現されていて、この長太郎の真っすぐでくよくよしないさっぱりとした性格が、後でお姉さんがお嫁に行くことに対して、くよくよしていた浜田を一喝するのに説得力を持たせていると感じました。

長太郎が勝手に屋台をしたことは、衛生的にも問題で、そもそも小学生だけで屋台をすることがもっての他なんですけれども、潔く悪いことを認めて謝る姿、きっぱりとした態度、父ちゃんと寺山先生にばれた後での堂々とした姿は見ていて、気持ちの良い物でした。また、この時の長太郎と正反対の態度だったからこそ浜田の姿も印象に残りました。

『男!あばれはっちゃく』47話より

別れの寂しさ

長太郎を見習えと言われても、お姉さんの結婚には納得できない浜田は花嫁衣裳に当たり散らしたりして、父親と大喧嘩をしていまいます。そこへ長太郎がきて、浜田と取っ組み合いになり、浜田の性根を叩き直します。長太郎が浜田に言った言葉というのは、浜田自身にも分かっていることだとは、思うのですが、そこに気持ちが追い付いていないんじゃないかなって思いました。

頭で理解していても、感情がついていかないことってありますからね。それに、永遠の別れではないにしても、嫁ぐことで姉と離れてしまう別れの寂しさというのは、あるものですから。今はどうか分かりませんが、私自身、親戚で仲良くしていたお姉さんが結婚して、それからはそのお姉さんに親が嫁ぎ先に気兼ねしてからは、会わせてくれなくなった時は、とても寂しかったですからね。

今回の一件で、浜田親子と関りをもって、真剣に浜田と向き合って本気でぶつかった長太郎は、やっぱりいい奴だなって、そんなことを改めて思った話でした。

『男!あばれはっちゃく』47話より