柿の葉日記

主にテレビドラマ「あばれはっちゃく」について語る個人ブログです。国際放映、テレビ朝日とは一切関係がありません。

『男!あばれはっちゃく』32話「伸びろ!竹の子」感想

f:id:kutsukakato:20211212105839j:plain

『男!あばれはっちゃく』32話より

1980年11月1日放送・脚本・安藤豊弘さん・監督・松生秀二監督

カヨちゃん可哀相

この話の前半は親友のヨウコさんに本当のことを話してもらえなかったカヨちゃんが可哀相に思いました。5万円を貸したことよりも、本当の話をしてもらえなかったことが私には可哀相に感じてしまって、それは5万円という大金に対してもショックではあるんですけれども、本当のことを話してくれなかった方が、信用されていなかったのかなとか、隠し事をされていたことの方が悲しいなって。

カヨちゃん、学校のことについてもヨウコさんが嘘を言っていたことを怒っていたし、自分を見て逃げ出したのを見てもショックな顔をしていたし、自分がヨウコさんに信用されていなかったと感じたことが悲しかったんじゃないかなって、私はそう感じたのですね。ヨウコさん後で、カヨちゃんに心配させないためって言ってたけれども、それでも、やっぱりヨウコさんを訪ねて行って、話と違っていたらカヨちゃんはショックだろうなって私はカヨちゃんの表情を見て思うわけです。

f:id:kutsukakato:20211212110807j:plain
f:id:kutsukakato:20211212110834j:plain
『男!あばれはっちゃく』32話より

この話の冒頭でカヨちゃんの高校時代の友人のヨウコさんが訪ねてきて、ヨウコさんが絵が得意でファッションデザイナーを目指していて、ヨウコさんのお兄さんが伊勢崎銘仙の織り手であることが分かります。

銘仙は平織した絣の絹織物の総称で、伊勢崎銘仙の他に埼玉の秩父銘仙、群馬の桐生銘仙、栃木の足利銘仙が有名です。伊勢崎銘仙の歴史も古く、「伊勢崎絣」の登録名で国の伝統工芸品の指定を受けています。後継者問題などはあるようですが、現在もファッションショーや小物、ぬいぐるみなどに使われて受け継がれているようです。

伝統の織物の兄と最先端のファッションデザイナーを目指す妹。群馬で伝統を守る兄と東京でファッションデザイナーを目指す妹の対比は、古い物と新しいものの対比になっています。

数日後にヨウコさんのお兄さんから電話が来て、ヨウコさんに連絡が取れるようにとお願いされて、カヨちゃんがヨウコさんのアパートを訪ね、通っている専門学校を訪ねたことで、ヨウコさんの嘘がカヨちゃんに分かって、先ほどの私のカヨちゃん可哀相の感想に繋がるわけですが、この話が親友に騙された可哀相なカヨちゃんの話で終わっていないのが、すごいなって見終わった後に思いました。

当時の流行りを取り入れながら

この32話のサブタイトル「伸びろ!竹の子」の「竹の子」というのは、放送当時に流行していた竹の子族からきていることは、カヨちゃんが長太郎と一緒にヨウコさんを探していた時に登場してきた若者やヨウコさんの姿を見れば一目瞭然です。

f:id:kutsukakato:20211212113741j:plain
f:id:kutsukakato:20211212185739j:plain
『男!あばれはっちゃく』32話より

当時の若者の流行りと伝統工芸の対比はとても分かりやすいのですが、この話はそこに新しいものと古いものを対立させるものではなく、互いに生かしあい融合して、次世代に繋がらせていくという展開になっていると私は感じて、そこに懐の広さと無限に未来に広がる可能性を感じることが出来て、それが素晴らしいと感じました。

ヨウコさんがカヨちゃんに5万円を借りたのは、専門学校をさぼって竹の子族で遊んでいる姿を見て遊ぶ金欲しさかなって思いましたが、後でヨウコさんが言った言葉では跡を継がせたいお兄さんの意見を押し切って上京してきて、バイトをしながら専門学校に通っていたもののバイト先がアルバイト代を出してくれなかったからとのことで、ヨウコさんがデザイナーになろうと必死なのは、ヨウコさんが専門学校に講師に来てくれた有名なデザイナーバロンフジヤマ先生に自分のデザインを見てもらおうとバロンフジヤマを訪ねていたことからも分かります。

ヨウコさんはバロンフジヤマのアシスタントにあしらわれデザインを見てもらうことはかなわないのですが、バロンフジヤマのところにヨウコさんのお兄さんの伊勢崎銘仙が届いている場面が出てきて、これを見ると、いずれ話の終わりでヨウコさんが伊勢崎銘仙の山川明さんの妹だと分かって、ヨウコさんがバロンフジヤマに認められるのかなって思ったりもしたのですが、そういう展開にはならず。

f:id:kutsukakato:20211212115457j:plain

『男!あばれはっちゃく』32話より

そんな簡単な話ではないのですね。それに、サブタイトルの「伸びろ」の方は長太郎の習字の授業での「伸びる力」の文字にあって、そこでの寺山先生の言葉がこの話の帰結にも繋がっていったんだと思いました。

お前たちには明日がある。もっと大きく伸びようとする力、自分自身の力でドーンとぶつかっていけば、自ずからチャンスは開かれていくもんなんだ。

多分、ヨウコさんも明日がある若者で、どんなに困難にぶつかって、憧れの人に拒絶されても、ドーンとぶつかっていけば道が開けるというのがあって、今度はその寺山先生の言葉を聞いて信じた長太郎と一緒にヨウコさんはバロンフジヤマ先生の所に行って、長太郎の熱意にフジヤマ先生がヨウコさんに会って、そのデザインを見てくれる展開に。そこで、ヨウコさんのお兄さんの伊勢崎銘仙が出てきて、それがヨウコさんだけが分かる話になるのですね。

ここで、ヨウコさんがそれが自分のお兄さんの作品であることを言わずにいて、それでいてフジヤマ先生のアシスタントが仕立てた服の縫製が不充分だったことでアシスタントが怒られる場面があって、フジヤマ先生が物作りに対する姿勢と考えをヨウコさんと長太郎に話していて、ヨウコさんのお兄さんの伊勢崎銘仙を見ながら、この伊勢崎銘仙の作りから自分のデザインの閃きを得ることを話されていて、それがヨウコさんの心に響く。

f:id:kutsukakato:20211212130426j:plain
f:id:kutsukakato:20211212130500j:plain
『男!あばれはっちゃく』32話より

このバロンフジヤマ先生の物作りに対しての考えを聞きながら、私は『あばれはっちゃく』を作り上げた人達の心にも通じていると感じました。なぜなら、こうしてブログで『あばれはっちゃく』シリーズを振り返りながら、見ていて思うのは、子どもの頃には気づかなかったドラマの作り手の人達の見えない部分の細かい拘りや細部までしっかりと世界観を生み出していることが分かってきたからです。

あばれはっちゃく』は架空の話であるんですけれども、その時代や小道具、人の心には嘘がないのですね。それは、見えないところやちょっと見ただけでは分からないところにまで気を配って、このドラマの世界を構築するもの全て、それが建物であったり、小道具であったり、人の感情であったり、その時代の風俗や文化を誤魔化すことなく、丁寧に作り上げているからこそ、時代を超えても、その時代を知らない子ども達にも受け入れらるし、何度見ても見飽きることがないんだなって思いました。

新しい物古い物

ヨウコさんがバロンフジヤマ先生の話を聞き、兄の明さんの仕事の偉大さ、その中で自分の夢を叶えようと考えを少し変えるという結末は、単純に兄の力を使ってバロンフジヤマ先生と懇意になって終わるのではない広がりと深さを感じました。新しい物の中に伝統を生かす、伝統の中に新しい文化を生かすことが、さらに次の時代へと続くものを生み出していくのではないか、そんなことを思いましたね。

折しも、私が現在(2021年)の流行についていけないと、ぼやいた後で見返したこの話が、私の流行についていけないことに対する気持ちへの一つの答えになっていて、なんか私の気持ち的にタイムリーだなって思いました。

それと調べてみると、伊勢崎銘仙は今も残っている一方で、新しい若者文化の顔としてこの話で登場した竹の子族は消えてしまったというのも、なんというか、象徴的に思いました。江戸時代から続く古い物でも現在に残り、1980年代に生まれてきた竹の子族はその当時を知っているものしか分からないという。でも、もしかしたら、私の知らない形で竹の子族も残っているかもしれないんだろうなって思ったりします。

カヨちゃんの部屋

以前、5代目で桜間家の長子が姉に戻って、長太郎とカオルの部屋が二つに分かれてセットが桜間家のセットが豪華になったなっていう記事を書きましたが、2代目の場合、カヨちゃんの部屋が長太郎と信一郎の部屋とは別にちゃんとあるので、何も5代目で部屋が増えたとは言えなかったなって思って、ちょっと訂正です。

f:id:kutsukakato:20211212132153j:plain

『男!あばれはっちゃく』32話より

栗又さんの誕生日

そういえば、今日は2代目長太郎役の栗又厚さんの誕生日ですね。昔、調べた時に栗又さんは1969年12月2日、もしくは12月12日生まれだって知ったんですが、日にちが2日と12日とあって、どっちかなって思ってはいるんですけど、多分、12月12日生まれではないかなって。とりあえずは、12月生まれということだけは間違いがないと思います。栗又さんは私の5歳年上だから、今年で52歳になるのですね。栗又さん、お誕生日おめでとうございます。