柿の葉日記

主にテレビドラマ「あばれはっちゃく」について語る個人ブログです。国際放映、テレビ朝日とは一切関係がありません。

『男!あばれはっちゃく』23話「花嫁カヨちゃん」感想

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『男!あばれはっちゃく』23話より

1980年8月23日放送・脚本・三宅直子さん・川島啓志監督

現実逃避

今回の話は、少し理容師見習いのカヨちゃんと私自身を重ねてみてしまいました。子どもの頃は、カヨちゃんと似たような境遇ではなかったので、重ねてみることはありませんでしたが、今は違います。

私自身の恥を晒しますが、私は栄養士資格を得て短大を卒業後給食委託会社に入社し、病院の給食調理に従事、管理栄養士の資格(当時、実務を2年経験)を得て、働きながら国家試験の管理栄養士試験の勉強をしていました。

就職先は初めて住む土地で親元を離れた独り暮らしでした。2回受験しましたが、不合格。その後、転職し有料老人ホームで同じ職種につきましたが、受験をする機会に恵まれず、現在に至ります。

働きながら国家試験の勉強をするのは、私には難しく、また短大卒の場合は4年制の大学よりも受験科目が多いのもあり、さらには勉強が身に入らず、やる気を出して勉強をしても続けることが出来ず、完全に私の勉強不足とやる気のなさが結果に出たのだと思います。

また、書類手続きをする面倒さや、仕事のシフトを作る身として、自分の休みや受験日の為の休業を取ることに対する抵抗もありました。これも試験の勉強不足による自信のなさからくる、言い訳の逃げ口上です。

そんな経験を大人になってした私には、一人部屋で理容師の国家試験の勉強をしながらも、身が入らず、雑誌の結婚特集を見て現実逃避をしているカヨちゃんが自分自身と重なってしまいました。

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『男!あばれはっちゃく』23話より

母ちゃんのカヨちゃんへの思い

そこへ母ちゃんが来て、カヨちゃんが誤魔化したものの、カヨちゃんが見ていたであろう雑誌を見つけて、微妙な顔をしています。この母ちゃんのカヨちゃんに対して見せていく感情は、この話のポイントというか、主軸になっていたと感じました。

カヨちゃんが理容師になろうとしているのは、母ちゃんの勧めによるものだということが、話の後半で分かってきますが、それゆえに母ちゃんはカヨちゃんが理容師の国家試験の勉強がはかどらず、花嫁になろうかなって悩んでいるカヨちゃんに対して、とても責任を感じているのですね。

本当なら、カヨちゃんは他にやりたいことがあるのに、自分が良かれと思って勧めた道でカヨちゃんが悩んで苦しんでいるのではないか、と。カヨちゃんは母ちゃんにとっては、血の繋がった姪ですから、やはり実の娘のような存在なのかなって思います。

カヨちゃんが後で、長太郎と父ちゃんが喧嘩をしている時に、長太郎を庇って、人には向き不向きがあるんだから、長太郎に勉強を押し付けるのは良くないって言うんですが、これを一緒に聞いた母ちゃんとしては、カヨちゃんが自分は理容師に向いていないのに、無理をしているという言葉にも聞こえていたのではないかって思ってしまうのですね。

カヨちゃんはこの話ではっきり19歳って分かるんですけども、以前も過去記事に書いたと思いますが、カヨちゃんは中学を卒業してから、母ちゃんの仕事を手伝いつつ受験資格を得て、働きながら理容師の国家試験の勉強をしているとこの話から推測できます。

1997年(平成7年)までは、理容師になるには専門学校に1年間通い必要な科目を修めた後、実務経験を1年間(インターン)をしてから受験資格を得て、都道府県知事行う実施試験に合格しなければ、理容師になれませんでした。1997年に理容師法及び美容師法が改正され、専門学校に2年通い、インターン制が廃止されています。

『男!あばれはっちゃく』は1980年の話なので、この法改正の前にカヨちゃんは当て嵌まり、カヨちゃんが19歳という年齢であることから、中卒で理容師の専門学校に進学したと考えられるのです。

カヨちゃんの高校時代の友人が32話で登場してくるので、カヨちゃんは高卒だったので、上記の文章を訂正します。詳しくは下記のリンク先の記事にて。

kakinoha.hatenadiary.com

 

追記・解説書にある企画段階での登場人物設定にはカヨちゃんの設定として以下のように書かれていました。

17才。桜間理容店の見習い店員。中学卒業後、田舎の理容学校を終え、遠縁の愛子の店にいたが、東京に憧れ一緒に上京してきた。(男!あばれはっちゃくDVDBOX解説書より引用)

「愛子」というのは、企画設定段階での母ちゃんの名前です。実際には母ちゃんの名前は原作、初代と同じ「和子」になっています。

母ちゃんからしてみれば長男の信一郎を東大に進学させると意気込んでいるのに対して、カヨちゃんを中卒で自分と同じ道に誘い、かつ本人が無理して苦しんでいる姿を見て、申し訳なく思ったのではないか、女の子でも腕に職があれば食べていけるという考え方があり、自身も同じように理容師の腕で社会に貢献して充実している母ちゃんにしてみれば、カヨちゃんにも同じ気持ちを味わって欲しいという思いが強くあって、勧めた道だけど、それは違っていたのではないかと母ちゃんは感じていたのではと思ってしまったのです。

kakinoha.hatenadiary.com

長太郎の早合点

今回は、このカヨちゃんと母ちゃんの出来事の前に、冒頭で長太郎がプールの帰りに教会での結婚式を見て、それに、みゆきちゃん、和美ちゃん、弘子ちゃんが花嫁さんに憧れて、和美ちゃんのお母さんがそれを見て、お見合いにちょうど良い人を探していたところから、長太郎がカヨちゃんが適任と考え、また、勉強に身が入らず、理容師の国家試験に消極的なカヨちゃんが花嫁になっちゃおうかなって長太郎に話したことで、長太郎が和美ちゃんのお母さんに話を通して、トントン拍子でお見合いの話が大きくなっていきます。

それは、母ちゃんやカヨちゃんの知らないところで大きくなっていき、桜間家で大問題になって、長太郎は例のごとく、父ちゃんに怒鳴られてしまうのですが、長太郎はカヨちゃんに自分に話した気持ちが嘘だったのかと問いただし、父ちゃんに対しても反論します。

長太郎に問いただされた時のカヨちゃんの複雑な顔には、確かに長太郎に言い訳したように花嫁になりたい気持ちに少しの冗談が入っていたにしても、決して嘘ではなかったと思いましたし、それは私自身がカヨちゃんと同じような苦しみを経験したからこそ、冗談(嘘)と本音が入り混じった気持ちだということが、とても実感できたので、とても心に刺さりました。

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『男!あばれはっちゃく』23話より

また、その時の母ちゃんの厳しい顔とカヨちゃんを気遣う表情、父ちゃんにカヨちゃんについて語る言葉の声のトーンには、母ちゃんのカヨちゃんへの温かい思いを感じられて、それをちゃんと静かに聞いて、母ちゃんの考えを尊重した父ちゃんの優しさに胸を打たれました。

お見合い

カヨちゃんはお見合いをすることになり、そのお見合いの相手のカズヤさんは母一人に育てれた人。母親はとても気さくな雰囲気の良い人で、カズヤさんはかなり緊張している様子。カズヤさんの母親を演じた佐々木すみ江さんは、声優としても活躍されていた方でしたので、声がとても懐かしかったです。

残念ながら、2年前の2019年に90歳でお亡くなりになってしまいました。話を戻して、このお見合いが心配で見に来た長太郎は隠れて見守っていたのですが、その隠れていたところから見合いの席に飛び出した格好になり、カヨちゃんを猛烈アピール。

ここで長太郎がカヨちゃんのフルネームを言うので、カヨちゃんの本名が「中村カヨ子」だと判明します。「カヨ子」表記はオープニングテロップから、「中村」表記はDVDBOX付属の解説書からです。解説書にはカヨちゃんの年齢は企画段階では17歳とありますが、この23話で19歳だとしているので、年齢設定が変化したことが分かります。

また、カヨちゃんは母ちゃんの姪(長太郎の母方の従姉)なので、母ちゃんの旧姓が「中村」という可能性もあるのです。これは、カヨちゃんの父親が母ちゃんの兄か弟の場合で、カヨちゃんの母親と母ちゃんが姉妹、カヨちゃんの母親が母ちゃんの姉か妹の場合は違います。

ただ、13話で登場した長太郎の母方のおじいちゃんが、サノ ゲンノスケだったので、カヨちゃんの母親が母ちゃんと姉妹の可能性が高いですね。

お仕事への意義と女性の影

カヨちゃんは相手、特に相手の母親に気に入られ、お付き合いをすることに。そんな時、ある一人の女性が登場します。恐らく、その女性はカズヤさんを好きな女性な感じがして、事実その通り。この時点では、その女性の片思いなのかなっていう感じでした。カヨちゃんは、母ちゃんと一緒に老人の散髪に出かけます。

そこで、老人は母ちゃん達に出向いてもらい無料で散髪してもらうことに対して感謝の言葉を述べます。母ちゃんはそれを笑顔で聞いて、無料では儲からないことを詫びる老人に、こうして社会に貢献できること、自分の仕事が役に立っていること、仕事はお客様がいてこそ出来るから、お客様に感謝していることを語ります。

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『男!あばれはっちゃく』23話より

母ちゃんと老人のやり取りは、それぞれがお互いに対して感謝をして、相手の事を尊重していて、仕事とは、お客とは、相手を思いやることがどんなに大切かということ。それは、この母ちゃんと老人の関係だけにとどまらず、全ての人間関係でも大切な心構えだなんだと感じました。そんな母ちゃんと老人のやり取りを見て、カヨちゃんの心に大きな変化が訪れます。

カヨちゃんは、理容師になる気持ちを固め、カズヤさんにお断りを伝えることにします。カヨちゃんは長太郎とカズヤさんとの待ち合わせの場所に行き、途中でその姿をカズヤさんのお母さんが見かけて、こっそり後をついていきます。

待ち合わせの場所でカヨちゃんはカズヤさんにお断りをいれるのですが、カズヤさんはお見合いする気もなかったのに、お見合いするなんて酷いと言い、長太郎は自分が先走ったからこんなことになったと土下座、カヨちゃんも膝をついて謝ります。

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『男!あばれはっちゃく』23話より

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『男!あばれはっちゃく』23話より

それぞれの居場所へ

しかし、そんなに簡単には許せないカズヤさん。母親の為にお見合いをしたのにと口に出しカヨちゃんを責めます。長太郎はそんなカヨちゃんを庇ってカヨちゃんが少しカズヤが母親に頼りすぎているところも断る理由だと道すがら聞いていたので、それを口走ってしまいます。

ボートの乗り場ですったもんだがあり、カズヤさんは足を滑らせ、水の中に落ちてしまいます。そのやり取りを見ていたカズヤさんの母親とある一人の女性。女性は不安そうにカズヤさん達を見ていましたが、カズヤさんが水の中で覚えていると真っ先に駆けつけます。遅れて長太郎も。

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『男!あばれはっちゃく』23話より
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『男!あばれはっちゃく』23話より

この女性がカズヤさんとお互い思いあっていたことが分かり、カヨちゃんのお見合いはなかったことになりました。女性がカズヤさんを思う気持ちを見たこと、カヨちゃんの気持ちを聞いたことで、自分を思っての行動が息子や息子の好きな人、自分が気に入ったお見合い相手のお嬢さん(カヨちゃん)を苦しませていたことを知ったカズヤさんのお母さんは、ちゃんと息子と息子を思う女性の気持ちを歓迎したのだと思います。

最後に

母ちゃんもそうなんですが、カズヤさんのお母さんも自分よりも自分の息子や娘同然の姪の事を一番に考えていて、考えた末に自分自身の経験から、良いと思う道を示し、提案して導いてきたんだなって思えて、それが自分の独りよがりになって、カヨちゃんやカズヤさんに自分の気持ち、本来やりたいこと、したいことを制御させて生きづらくしてしまったのではないかと心を痛めていたんだな、そのカヨちゃんやカズヤさんの自発的な気持ちを知った時の対応が温かくて優しくていいなって思いました。

今回も他に小ネタやキャストに関しても書きたいことがあるのですが、長くなったので、また後日書きたいと思います。