柿の葉日記

主にテレビドラマ「あばれはっちゃく」について語る個人ブログです。国際放映、テレビ朝日とは一切関係がありません。

『男!あばれはっちゃく』20話「ユーレイ大好き」感想

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『男!あばれはっちゃく』20話より

1980年8月2日放送・脚本・山根優一郎さん、松生秀二監督

幽霊は好きですか?

皆さんは、幽霊が好きですか?私は幽霊が苦手です。怪談も嫌いでホラー映画もあんまり好きじゃありません。幽霊の話は、小さい頃からとっても苦手なのです。だから、夏になると怪奇特集とか怨霊の話を取り上げるテレビ番組が嫌で、いつも見ているアニメやドラマでも夏は幽霊を扱った話をしてくるので、ちょっと憂鬱に思う時がありました。

この『男!あばれはっちゃく』も夏にちなんだ幽霊が登場してくる話なんですが、この話には、あんまり怖さを感じませんでした。それは、長太郎が幽霊の女の子を全然、怖がっていないからなんですよね。最初に見た時は驚いてはいるんですけれども、怖がっていない。それどころか、その幽霊に会って、話してみたいと言っていて、実際に2回目に目撃した時は駆け寄って話しかけているんです。

あれ、長太郎は怖くないのか?他の人達は幽霊の女の子を見て、とても驚いて気を失っていたりもするのにって思いました。多分、長太郎はその幽霊の女の子がみゆきちゃんにそっくりだったから怖くなかったのかなって思いました。

反対に自分そっくりな女の子と対面したみゆきちゃんが気を失ってしまうのは仕方がないことだなって感じました。そこにいるはずのない、自分そっくりな人がいきなり現れた時のみゆきちゃんの気持ちを思うと、肝を冷やしただろうなって思います。

ヒロインのいとこ

今回は、みゆきちゃんのいとこのオカムラトシオが登場します。初代『俺はあばれはっちゃく』でも夏に祭り男としてヒロインのヒトミちゃんの従弟のサトル君が登場しました。今回のみゆきちゃんのいとこは、みゆきちゃんと同い年のいとこで親は横浜で貿易商をやっていることになっています。

サトル君はヒトミちゃんよりも年下の設定でしたが、トシオの場合は同い年。サトル君が長太郎に似ている人物であったのに対し、トシオはインテリでキザなタイプなところが、初代と違います。どちらかというと、トシオは正彦や邦彦タイプの人物ですね。そのせいか、今回は邦彦の出番があまりなく、トシオがその役割を担っていたなって感じました。

みゆきちゃんが淹れた紅茶を飲む場面なんかを見ても、カッコつけているなって思います。私は当時、同じ子どもなので感じなかったのですが、今、見直してみると小学生がこんなふうに紅茶を飲んでいると、生意気だなって感じたりもするんですが、当時の大人の人達にはどんな風に写っていたのでしょうかね。

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『男!あばれはっちゃく』20話より

肝試しで分かる本性

トシオと会って帰る途中で長太郎と洋一は古い洋館を見つけて、そこを探検した時に長太郎はみゆきちゃんそっくりな女の子を見つけます。すぐに消えてしまって、洋一は見ていないと答えて、長太郎は不思議な感覚を覚えます。家に帰ってきた長太郎は、隣のみゆきちゃんに声をかけて、洋館に行かなかったかと尋ねますが、みゆきちゃんはトシオと一緒にいたとのこと。

トシオとみゆきちゃんの仲良さを見せつけられた長太郎は、トシオをギャフンと言わせようと、町内会の肝試しを企画し、幽霊の女の子を見た洋館でやることを町内会長の洋一の父親に提案して、肝試しが行われます。

長太郎は洋一と組んで、驚かす側として洋館に忍び込んで、みゆきちゃんと来たトシオを驚かすのですが、長太郎達が驚かす前に幽霊の女の子が現れて、みゆきちゃんは気を失い、そのみゆきちゃんをほったらかしにしてトシオは逃げて行ってしまいます。

それまで、父ちゃんたちが扮装した幽霊に対して怖がらず、労いの言葉をかけて余裕を見せてみゆきちゃんのボディガードを気取っていただけに、一目散で逃げたトシオの姿に、それまで長太郎を馬鹿にしていただけに、土壇場で本性が出たなって感じました。

ま、父ちゃん達を呼びにいって、また、戻ってきただけマシだったかなって思ったりもするんですが、長太郎と洋一がみゆきちゃんに駆け寄ってあげたから良かったものの、夜の洋館に幽霊がいるかもしれない場所に女の子を独りぼっちにする行動は、それまでの自信満々のトシオを見ていると、どうなのよって思ったりもするんですが、幽霊が怖くて大嫌いな私は、逃げてしまう気持ちも分からなくはないので、おいおいって気持ちと、そうだよなあ、怖いよなあ、逃げるのも分かるって思う気持ちの両方を持ってしまうのですね。

みゆきちゃんとトシオの前に、邦彦と和美ちゃんと弘子ちゃんの3人が洋館の中に入っていくのですが、一番、怖がっているのが邦彦で、先頭きって蜘蛛の巣もはねのけていくのが弘子ちゃんで弘子ちゃんの頼もしさを感じました。和美ちゃんはそこについていく感じ。この3人がお化けに扮した父ちゃんとあったあたりで、場面転換して、みゆきちゃんとトシオの番になっていく流れが面白かったですね。

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『男!あばれはっちゃく』20話より

今回、邦彦の立場をトシオが担っていると書きましたが、邦彦が臆病で女の子に助けてもらっているのとは対照的にトシオがナイト気取りで余裕をかましている態度が邦彦とトシオの違いになっていて面白いなって思いました。

初代とは違って、長太郎と邦彦がトシオに痛い目を見せるために結託をせずに、邦彦がトシオに話を合わせているところも、初代との違いでした。邦彦がトシオに話を合わせながらも、トシオに馬鹿にされているように見えたり、トシオと対照的に描かれているところで、トシオが嫌味な奴で邦彦も大変だなって思わせているのかなって。

とにかく、ヒロインの異性のいとこっていうのは、ヒロインに恋心を抱いている長太郎や正彦、邦彦達にとっては嫌な相手なんですよね。それを違うタイプで初代と2代目で出しながらも、視聴者にちょっと気に食わない奴だと感じさせる描き方が、初代と2代目で別のやり方をしているところに、作品のバリエーションの豊かさを感じます。

人間の幽霊も感情を持つ人間

長太郎は念願の幽霊の女の子に会って、いろいろと質問をするのですが、女の子は微笑みながら消えてしまいます。急に現れてびっくりはしましたが、女の子に怖さとか恐ろしさは感じませんでした。可愛らしく微笑んだのと、長太郎の楽しそうに話しかける姿が怖さを感じさせなかったのだと思います。

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『男!あばれはっちゃく』20話より

この後、お寺の住職が登場して、幽霊の女の子の正体が分かります。幽霊の女の子は、12年前に井戸に落ちてしんだマリちゃんという女の子。マリちゃんの幽霊を見た父ちゃんはものすごく怯えていて、幽霊の祟りか、呪いかと言いますが、住職はマリちゃんはそんな子ではないから大丈夫と言います。肝試しが終わって、長太郎の家に来て住職は話すのですが、その日が2日で、それがマリちゃんの命日だと話、12年前に亡くなったのなら13回忌になるから、供養をしてあげてくださいと母ちゃんが住職にお願いをします。

ここでは、住職は何月かと話はしていないのですが、この20話が夏休みの話であることと、放送日が1980年8月2日であることから、マリちゃんの命日が8月2日であることが分かります。そして、マリちゃんは12年前に亡くなっているので、1980年の12年前、1968年8月2日に亡くなっていることになり、年齢は今の長太郎(小学5年生11歳)と同い年ぐらいなので、マリちゃんは1957年生まれなのかなって推測が出来ます。

そして、今年から考えるとマリちゃんが亡くなったのは、53年前になってくるので、井戸に落ちて死んだというのも、なんとなく無理がないように感じます。マリちゃんは寂しくて、楽しそうにしている長太郎達が羨ましくて出てきたんだろうなって住職は言っていて、女の子一人で洋館にいたら心細かっただろうな、寂しかっただろうな、長太郎が怖がらずに楽しそうに話しかけてくれたのは嬉しかったんだろうなって思ったのです。

この記事の冒頭でも書きましたが、この話は途中までは、幽霊を長太郎が怖がらずに無邪気に話しかけてきたのが不思議に思っていたのですが、住職が話す生前のマリちゃんのことを聞いて、幽霊もそもそもは同じ生きてきた人間で、寂しいとか嬉しいという感情、心を持つ人間でマリちゃんの人柄と危害を加える存在ではないことが分かった安心感から、逆に怖い存在から身近な存在に感じた事と、マリちゃんの可愛い微笑みがそれを裏付けしていて、ああ、そういえば怖い存在じゃなかった。ただ、そこにいてほほ笑んでいただけで、何もいたずらもしなかったなって思い出すことで、怖さを感じなかったことに納得できたのです。

これは、幽霊が何か危害を加える怖い存在だと思っていた私の認識を少し変えてくれました。幽霊を扱いながら、怖さではなく、幽霊の寂しさとか、怖がられて嫌われている幽霊を恐れずに受け入れる温かさを感じさせてくれた不思議で素敵な話でした。

母ちゃんの希望通りに、13回忌で供養をして、長太郎はマリちゃんがこれで天国に行けると喜ぶのですが、これにチャチャをいれたのが、トシオ。住職は仏教だから天国じゃなくて、極楽にいくのだと。ここでも、最後まで嫌味なキャラと貫き通すトシオ。最後まで、キャラクターを貫き通したのは一貫していていいなって思いました。

アバンタイトルの小ネタ

今回のアバンタイトルは江戸時代のような場所で、本を読んで勉強をする長太郎に様々な遊びを誘ういつものメンバー達が、長太郎が眼鏡をかけて真面目に本を読んでいることに不思議に感じて、どんな本を読んでいるかと覗いてみると、長太郎が読んでいたのが『ドラえもん』だったというオチなんですが、この長太郎が読んでいた『ドラえもん』の話はどの話がどの話でどのコミックスに収録されているか調べてみました。

ドラえもんが出した秘密道具が「風乗りヨット」だったので、これを手掛かりに調べてみると、1979年小学1年生9月号に掲載された「たいふうあそび」だと分かりました。収録コミックスを調べたら、てんとう虫コミックス・カラー作品集第4巻に収録されていたのが分かり、長太郎が読んでいたコミックスも判明しました。

当時「たいふうあそび」は、『ドラえもん』のコミックス未収録作品で、2001年に『てんとう虫コミックスカラー作品集第4巻』に収録されました。そのため、ドラマでは、初出の1979年『小学1年生9月号』ということになります。

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『男!あばれはっちゃく』20話より