柿の葉日記

主にテレビドラマ「あばれはっちゃく」について語る個人ブログです。国際放映、テレビ朝日とは一切関係がありません。

映画『学校』(1993年)

オグリキャップ」と書ける喜び

俳優の田中邦衛さんが老衰のため、88歳でお亡くなりになりました。

私の両親の世代ならば、加山雄三さん主演の映画『若大将シリーズ』(1961年~1981年)の青大将としてお馴染みですが、子である私の代になるとやはり、小学生の時から見ていた『北の国から』(1981年~2002年)の印象の強い俳優さんでした。

北の国から』も好きなドラマではあるのですが、私が田中邦衛さんの作品で思い出すのが、山田洋次監督の映画『学校』(1993年)で演じた生徒役です。

『学校』は夜間中学が舞台の映画で、様々な事情で全日制の高校に進学できなかった老若男女の生徒と先生達の関係を描いた映画でした。

当時、映画の中の生徒と同じように、進学した全日制を退学し、通信制高校に通っていた私は映画の中の生徒と自分自身を照らし合わせて、映画館でこの作品を見ました。

田中邦衛さんが演じたイノさんは、読み書きが出来ませんでしたが、学校で文字を覚えて大好きな競馬の馬の名前が書けるようになります。

黒板に大きく、不揃いでバランスの悪い字で『オグリキャップ』と満足気に嬉しそうに書くのです。

文字を書ける喜びにあふれていて、微笑ましく、見ているだけでこちらも嬉しくなる場面でした。

そのイノさんが亡くなってしまい、その後でその死を知らせれた生徒達が悲しみにくれている時に、イノさんが嬉しそうに文字を書いていたのを思い出しながら、死んでしまった悲しみを吐き出す同級生のみどりの姿がイノさんが亡くなった悲しみを増幅させました。

みどりを演じたのは、裕木奈江さん。

私は裕木奈江さんのラジオ番組ANNを聴いていて好きな女優さんの1人で、この映画で更に好きになりました。その裕木奈江さんが田中邦衛さんの死に対してお悔やみのツイートをされたのを見て、イノさんが亡くなった時の『学校』の教室の雰囲気を思い出しました。

家庭の事情で学べなかった分、大人になってから学び、字を覚えてとても嬉しくてはしゃいでいたイノさん。

通信制の高校とはいえ、土日には学校に来て授業を受けていた私は、そんなイノさんと同じく大人になってから高校に通って熱心に勉強していた同級生達を見ていたので、学べる喜びや覚える楽しみを表現する田中邦衛さんの演技が深く印象に残りました。

『学校』は不登校になったえり子(演・中江有里さん)が母親と一緒に職員室で担任になる黒井先生と話すところから始まったと記憶しているのですが、それも私自身の姿と重なっていて、『学校』という映画は自分の現実にとても近い映画として心に刻み込まれています。

好きな映画は数多くありますが、私にとって現実的で身近で、登場人物達の気持ちに強く共感出来る映画は、この映画以外にはなく、私自身にとって一番思い出深い映画です。

『学校』はその後、シリーズ化されましたが、私にとってはこの第一作になる作品が一番忘れ難く、そこで生き生きとイノさんを演じた田中邦衛さんを忘れることは出来ません。

様々な映画やドラマで活躍された田中邦衛さん。

とても悲しく、残念です。

ご冥福を心よりお祈りします。 

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