柿の葉日記

主にテレビドラマ「あばれはっちゃく」について語る個人ブログです。国際放映、テレビ朝日とは一切関係がありません。

『男!あばれはっちゃく』17話「ボタン戦争」感想

 

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『男!あばれはっちゃく』17話より

1980年7月12日放送・脚本・安藤豊弘さん、川島啓志監督

 

 

遅刻から始まる初代18話と2代目17話

「くそう、まだ鳴っていてくれよ。間に合えよ。畜生」

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『男!あばれはっちゃく』17話より

遅刻しそうな長太郎の場面から始まった今回の話。この場面を見て思い出したのが、この17話の脚本を書いた安藤豊弘さんが、『あばれはっちゃく』シリーズに初参加した初代『俺はあばれはっちゃく』18話「友情と引っ越しソバ」の話の冒頭です。長太郎が遅刻しそうになったところだけでなく、テストの点数もクラスメイトに知られてしまうところまで似ています。

2代目長太郎が学校の敷地内に入っていないながらも、寺山先生が教室に来る前に教室に到着したのに対して、初代長太郎は既に校庭に入っていながらも、廊下で佐々木先生と激突して教室に入るのが間に合わなかったというのは、案外と面白い違いでした。ちなみに初代長太郎が走りながら叫んでいた言葉はこんな言葉でした。

「時間よ止まれ これは遅刻じゃねぇんだぞ あばれはっちゃくただいま参上だ」

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『俺はあばれはっちゃく』18話より

 2代目長太郎は、邦彦によってテストの答案用紙を黒板に貼りだされてしまって一人みんなの笑い者になってしまうのですが、初代長太郎の場合はテストの答案用紙を持った佐々木先生と衝突してテスト答案が飛び散ってしまって、それを回収した時に佐々木先生の言葉尻に乗って長太郎がクラスメイトを窘めた言葉に正彦が言い返したことで、長太郎が正彦の点数をみんなの前で公表した上で正彦に嫌味を言っています。それに対してヒトミちゃんが長太郎を諌めて、長太郎の点数も公表することで手打にして場を治めました。

 同じ安藤豊弘さんの脚本で、遅刻の流れからテストの点数がクラスメイトに知られる流れは同じなのですが、初代と2代目ではその後の対応が違っています。2代目では長太郎だけが恥をかいてしまったのが可哀相でした。

初代と違って2代目長太郎の方には非がなかっただけに、みゆきちゃんでさえも長太郎を庇ってくれなかったこと、また、邦彦が朝一番で長太郎の答案用紙を黒板に貼ったとかならともかく、そうでないとしたら、邦彦の行為を誰も咎めなかったのかなって思うと2代目のクラスメイトはちょっと冷たいなって感じました。

冒頭の出来事が話の中心になった初代ときっかけに過ぎなかった2代目

さらに面白いのは、初代の18話ではこのテストの点数の話が話の発端になり、話の中心になっていって発展していくのですが、2代目の17話ではこの冒頭の出来事は、次の話の展開のきっかけに過ぎず、この邦彦に恥をかかされて怒った長太郎と減らず口を言う邦彦の喧嘩に巻き込まれた和美ちゃんが怪我をしてしまうことによって、長太郎がクリーニング店を営む和美ちゃんの家の手伝いをしていくという展開になっていくことです。

さらには、和美ちゃんのお母さんが兄(和美ちゃんの伯父)が倒れた事により、伯父が住む名古屋にいく事になって、長太郎達の手伝いが必要になるという展開。そんな中で、大病院の仕事をかけてライバルのクリーニング店と競い合う事態が重なるということになり、巻き込んで怪我をさせた責任もあって面倒見の良い長太郎の親切心が出てきて活躍していくことになります。長太郎の前にみゆきちゃんや弘子ちゃんも既に和美ちゃんの為にクリーニング店の仕事を手伝っているので、そこはさすがに仲が良くて優しくしっかりしたみゆきちゃんと弘子ちゃんならではと思いました。

仕事に対する姿勢

2代目では、クリーニング店の仕事を通じて、仕事をすることに関しての心配りに重点を置いているように感じました。これは、仕事に対しての心配りやお客様に対して最善を尽くすということは、初代18話の後半の方にも出てくるのですが、2代目17話ではこちらの方を中心にして話が展開していると感じました。

今回2代目『男!あばれはっちゃく』では、菊池外科病院が和美ちゃんの家の秋山クリーニング店かホワイトクリーニング店にクリーニングの契約をするかのテストをすることにして、指定の時間までに仕上げて届けることをお願いします。その菊池外科病院に届けるのを長太郎が任されるのですが、長太郎はホワイトクリーニング車に邪魔をされて、自分の家に戻ってダメにされたのを洗い直し、その時に取れてしまったボタンを母ちゃんにつけてもらうように依頼します。

その後で、ドライヤーで乾かしたまでは良かったのですが、夕飯を食べてる途中で届けていないのに気が付いて、届けに行った時には既に約束の時間が過ぎていて、病院の事務局長さんはホワイトクリーニングに依頼をすることを決めたと長太郎に告げてしまいます。

母子家庭で小さいながらも懸命に仕事をしていて、病院の大口の仕事を取ることは和美ちゃんのお母さんにとっては大事な仕事が、長太郎がちょっと忘れただけで台無しになってしまっては、怒りが収まらないのは仕方がない事。長太郎としても、善意でやったことがダメになって、でも、自分が悪いという自覚もあって、どうしようもない感情が渦巻いたと思います。

このメインになる話と並行して、長太郎の父ちゃんの仕事の功績が認められて表彰されることになり、モーニングを秋山クリーニングに頼んで仕立ててもらうのですが、まだこの時は和美ちゃんのママが名古屋の倒れた伯父の家に行っているので、長太郎が変わりにアイロンがけをしていて、そこに同じように父親のモーニングを持ってきた邦彦が長太郎の手際を馬鹿にしたことで、邦彦が自分の父親のモーニングにアイロンをかけるも褒められて調子にのって火傷をして、その手当てをしている間に置いたままにしたアイロンで邦彦の父親のモーニングに穴をあけてしまうという失態をし、怒られることを恐れた邦彦を見て長太郎が自分のせいにすることにするという話も展開しています。

 クリーニングにしても、アイロンで穴をあけてしまったことに関しても長太郎は直接的には悪くないのですが、そういう悪い部分を引き受けてなんとかしようと行動する長太郎の心意気、責任の取り方はすごいと感じます。ただ、アイロンの件に関してはどうかと思いますし、邦彦も罰が悪そうな顔をしていて、そこは長太郎の自己満足になっているような気がしました。

菊池外科病院の事務局長は、初代『俺はあばれはっちゃく』1話と40話に登場してきた倉持さんを演じた石井富子さんで、『あばれはっちゃく』シリーズファンにはお馴染みの俳優です。

過去記事でも書いていて、また、改めて記事にしようと思いますが、前作の作品に出演した俳優が別の役柄や似たような役柄、前作を思わせる役柄で再び出演することを「スピンオフ」と呼びます。現在では、脇役を主役にした作品のことをスピンオフと呼ぶようになりましたが、本来のスピンオフにはそういう意味合いはありませんでした。過去のドラマ作品は『あばれはっちゃく』シリーズに限らず、前作品の俳優が次の作品に引き続き出演していくというのは当たり前にありました。

今回の石井富子さんの出演もスピンオフの1つだと私は思っています。また、役柄も初代を思い出させる役柄だったことと、それでいて、初代の倉持さんよりはもう少しだけ心が広くなっているように、微妙に前作の性格よりもずらした性格にしているところが見ていて面白いと感じました。

今回、石井富子さんが演じた病院の事務局長はクリーニングを依頼した白衣の中にワザと取れやすいボタンを入れたとありましたが、これはちょっと見ただけでは気づかない程度のもの。実際にホワイトクリーニングは気が付かず、秋山クリーニングでも長太郎が手洗いをしなければ分からなかった訳です。

この長太郎が手洗いをした時点では、長太郎の乱暴な洗い方のせいでボタンが取れてしまったと視聴者は思ったと思います。ホワイトクリーニングの車に泥をはねられて、転倒してクリーニングを台無しにされた長太郎が責任を感じて、一生懸命に手洗いをする流れは自然で、長太郎だからガサツに洗うのも納得で、それでボタンが取れたという流れは本当に上手いと思いました。

それが、こうした細かい部分に気が付いて、そこも丁寧に直してくるかどうかのテストに含まれていたという病院の事務局長の考えに仕事を通り一辺倒でやるのではなく、一つ一つ真心を込めてやることの大切さを感じました。これは、初代18話で父ちゃんはいい加減な仕事をしないと正彦の父親に抗議にいった長太郎の言葉とも通じています。

安藤さんにとっては、仕事と言うのは適当に一通り出来ているように見せかけるのではなく、細部まで手抜きをすることなく、隅々まで目を光らせて完璧に仕上げてこそ仕事が完結したことになるという考えなのだと、今回の見た2代目『男!あばれはっちゃく』17話とそれに付随して思い出した初代18話の話を思い出して思いました。

 ただ、ボタンに関しては瓢箪から駒というか、ホワイトクリーニングの妨害がなければ、長太郎が手洗いすることもなく、ボタンのことにも気づかなかったので、ある意味ラッキーだったかなって思うんですけどね。それでも、ほったらかしにしないで責任をもってなんとかしようとして、手洗いから取れたボタンをつけるまでしたのはやっぱり仕事に対する責任感からきたもので、それが評価されたんだなって思います。

邦彦の謝罪

今回の話で不自然だなって感じたのが、邦彦の謝罪です。邦彦が父親に正直に謝るのはいい場面ですし、最初はみゆきちゃんと洋一に促され、それでもダメで家で父親に長太郎は悪くない、自分がパパのモーニングをダメにしたことを話すのですが、このあたりの脈絡を感じませんでした。

もちろん、あのアイロンでの事件の時には、みゆきちゃん達がいて全員が目撃者であって隠しようもなく、邦彦も罰が悪いのは分かるのですが、冒頭で長太郎を笑い者にしたのと絡めて、そんな長太郎に恥をかかせて嫌な思いをさせながら、自分の身代わりになってくれた長太郎が悪者にされた挙句、父ちゃんまで楽しみにしていた表彰式も不参加にされた事に申し訳ないと感じているのも伝わりましたが、いまいち、邦彦が自分から謝ろうという気持ちが出てくるのが薄く、やや取ってつけたように思えたのがちょっと残念です。

 邦彦と長太郎の喧嘩、邦彦の反省に関しては、初代18話の正彦と長太郎の関係と決着のつけ方よりはやや弱かったように感じました。

どちらの脚本も安藤豊弘さんで、やや話の入りやエピソードが少し被っていたので、今回は初代『俺はあばれはっちゃく』18話と2代目『男!あばれはっちゃく』17話を比較した形での感想になりました。