柿の葉日記

主にテレビドラマ「あばれはっちゃく」について語る個人ブログです。国際放映、テレビ朝日とは一切関係がありません。

『男!あばれはっちゃく』第7話「逃げるな父ちゃん」感想

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『男!あばれはっちゃく』7話より

脚本・安藤豊弘さん・松生秀二監督

アバンタイトル

ロボットの格好をした長太郎がみゆきちゃん達を襲ってきて、返り討ちされてオチ。長太郎と洋一だけでなく、みゆきちゃん、邦彦、弘子ちゃん、和美ちゃんも揃ったアバンタイトル。金属のバケツでロボットになった長太郎の姿は西洋の鎧を着ているよう。本編と時期を考えると、なんとなく、五月の鎧武者のようにも見えますね。

本編との繋がりはありませんが、本編の最後の場面を見ると薄く本編を示唆するアバンタイトルです。

本編

長太郎の教室の掃除の風景から、長太郎が洋一から雑巾を投げてもらい、水の入ったバケツの近くにいる長太郎が、雑巾を水にぬらして洋一に返却。

この時に絞りが甘くて洋一がびしょ濡れ。今度は、みゆきちゃんから頼まれると長太郎はバケツを持ってみゆきちゃんの近くに行き、雑巾を受け取ってバケツの水で雑巾をしっかり絞ってみゆきちゃんに渡します。

洋一の時との違いに弘子ちゃんと和美ちゃんが冷ややかな目。それを見ていた邦彦が長太郎を目がけて雑巾を投げつけます。

怒る長太郎に「手が滑った」という邦彦。洋一と弘子ちゃん、和美ちゃんは満足気。長太郎は足を滑らせ、ひっくり返ったバケツの水に全身びしょ濡れ。服を棒掲げて家に帰ります。

長太郎の格好に母ちゃんが理由を聞き、邦彦とのいざこざがあったと話すと、邦彦は父ちゃんの上役の佐藤部長の息子だから、邦彦と喧嘩をするな、と窘められます。

父ちゃんが邦彦の父親に世話になっていても、自分達は関係ないという長太郎。

確かに親同士の人間関係を持ち込まれても、子どもは子どもで困るし関係ないけど、そうだと切り離せないのが辛いところ。

一方、父ちゃんの職場では松越デパートのショーウインドウのディスプレイの仕事がきていて、父ちゃんは邦彦の父親から大口の仕事になるからと、大きく期待されて仕事を任せれます。

父ちゃんの大工の腕を見込んで、群馬から東京へ呼んだのが邦彦の父親の佐藤部長。父ちゃんは張り切って仕事をして、夜中まで設計図をひいていました。

私、柿の葉の父は建築士でしたので、父ちゃんが設計図を描いていたような道具や紙が家にありましたから、なんとなく父ちゃんが設計図を描いている場面は、個人的にちょっと懐かしかったですね。

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『男!あばれはっちゃく』7話より

長太郎は父ちゃんにNケージを買って欲しいとねだります。父ちゃんは長太郎がテストで100点をとったら買ってあげると約束。長太郎には無理なことなんですが、この後に長太郎がちゃんと勉強をしていて、途中で寝てしまいますが、100点をとろうと勉強しているのがいじらしい。

結果、一眠りして1階に降りてくると、父ちゃんがまだ仕事をしていて、父ちゃんの仕事に賭ける意気込みも長太郎のNゲージを買ってもらう為に勉強する意気込みと重なりました。

父ちゃんは次の日に早速、仕事にかかるのですが、様子を見に来た佐藤部長から、ダメ出しをされてしまいます。父ちゃんが佐藤部長の設計図通りのものではなく、父ちゃん独自のアイディアを入れたのが気に入らなかったようで、注文をくれた松越デパートの宣伝部長のアイディアのままのディスプレイを作っていないことが佐藤部長には気に入らなかった様子。しかし、佐藤部長はどうして職場に息子の邦彦を連れてきたのでしょう。長太郎は母ちゃんに頼まれて父ちゃんの忘れ物を届けに来たので、その場にいるんですが。しかも、邦彦、大きなNゲージの箱を持って来ている、なぜ?

邦彦が父ちゃんの作品を「やぼったい」と言ったところから、長太郎が激怒。作りかけのディプレイがこの喧嘩で壊れてしまいます。

すぐに父親に助けを求める邦彦。父ちゃんは長太郎を叱りますが、「壊れてちょうどいいから作り直したまえ」という佐藤部長。都会の松越デパートに相応しいディスプレイが必要だと、父ちゃんのノコギリを持って力説。続けて、父ちゃんのノコギリを床に叩きつけます。その衝撃で、父ちゃんのノコギリが刃こぼれしてしまい、今度は父ちゃんが佐藤部長に激怒。会社を辞めると啖呵を切ります。

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『男!あばれはっちゃく』7話より

家に戻り、それを知った母ちゃんが父ちゃんに会社を辞めてどうするのか、と尋ねると、父ちゃんは群馬に戻るといいます。4話では長太郎が邦彦のやり方に耐えかねて、群馬に帰る事を決意しますが、今回は父ちゃんが邦彦の父親、佐藤部長のやり方、というか命より大事な大工道具をダメにされたことが許せなくて、群馬に帰ることを決めます。

4話の時の長太郎なら、父ちゃんに賛同していたと思いますが、この時の長太郎は違います。今度は父ちゃんが嫌な事や辛い事があっても、群馬に逃げ帰らずに東京で踏ん張る番になりました。今回の脚本は安藤豊弘さんで、監督は松生秀二監督。この組み合わせは、4話と同じです。だから、単純に考えて、これは4話の大人版と言えるかもしれません。

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邦彦の父親は松越デパートの宣伝部長のデザイン通りのディスプレイを作り、満足していたものの、松越デパートの宣伝部長が自分のアイディアをそのまま引き写しただけのディスプレイに怒り、佐藤部長の会社ならではアイディアやデザイン、独創性がない事を指摘して、佐藤部長にダメ出しをします。

父ちゃんにダメ出しをした佐藤部長が自分がダメ出しをして修正した部分でクライアントからダメ出しをされる皮肉。

父ちゃんがやめて他の仕事仲間のゲンさん達になんとか、アイディアを出してもらおうとしますが、父ちゃんなら出来るだろうけど、自分達は出来ないとゲンさん達は渋い顔。

そんな中、父ちゃんのダメになったノコギリを持って、長太郎が佐藤部長に怒鳴り込みに来ます。

父ちゃんの大切なノコギリをダメにしたなら、それを戻せ、出来ないのなら、父ちゃんをクビにするなと。

ここのくだりを見て思い出したのは、初代『俺はあばれはっちゃく』26話「モヤシも男だ」の回です。この時は長太郎が公一と喧嘩をした時に、父ちゃんが割れた皿を元通りにしろ、と長太郎に言い、割れた皿は元に戻らない、友情も一度、壊れたら戻らないのだから、割れる前にちゃんと相手に謝れ、と長太郎を諭しました。

その話を刃こぼれしたノコギリを元に戻せと佐藤部長に迫った長太郎を見た時に思い出したのです。

ちなみに初代26話の脚本を書いたのも、今回と同じ安藤豊弘さんでした。(初代26話の監督は山際永三監督です)

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長太郎が来たタイミングが松越デパートの宣伝部長が帰った後だったのが、良かったのか、佐藤部長は素直に長太郎の言葉に従い、父ちゃんに謝りに桜間家に来ます。

最初は臍を曲げていた父ちゃんですが、長太郎の言葉に奮起して、仕事場に戻ります。

翌日の納期に間に合わせるために、急ピッチで仕事を勧める父ちゃん達。そこへ、お弁当の夜食を持って、佐藤部長の娘で邦彦の姉、ゆかりさんが駆けつけます。

邦彦の姉、ゆかりさんの初登場です。人数分のお弁当を作って持ってきて、長太郎にも優しく接するゆかりさん。長太郎の事は邦彦から聞いて知っているというゆかりさんの言葉に、邦彦が家で長太郎の話をしていることが伺い知れます。

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『男!あばれはっちゃく』7話より

邦彦の事ですから、長太郎をいいように言っているとは思いませんが、ゆかりさんの態度からすると、弟の性格を分かった上で話を聞いていて、邦彦の長太郎に対する悪印象を差し引いて弟の話を聞いているんじゃないかなって思います。ゆかりさんは優しい人だということは、後々、分かっていきますから。それにしても、人数分の弁当を作って持ってくるゆかりさん。ゆかりさんも学生で、佐藤家は父子家庭なので、長女のゆかりさんが家事もしていると思うんですが、嫌な顔一つしないで明るく丁寧に振舞っている姿が素敵です。

父ちゃん達の仕事は深夜まで及び、家で待つ母ちゃんも不安そう。

長太郎が途中で寝てしまった時に、佐藤部長が長太郎に声かけ、宿直室に寝る事を言うんですが、この時の佐藤部長がとても優しいんです。傲慢で意地悪な上司だと思っていた佐藤部長が長太郎を心配するところに、ゆかりさんの優しさは佐藤部長のこうした優しさから生まれているのかなって思いました。多分、それは、まだ意地悪な面しか見えていない弟の邦彦にもあるものだと思います。次の8話も邦彦の意地悪な面が前面に出てきますが、後々に邦彦の優しさが出てくる話もありますから。

結局、佐藤部長は長太郎と一緒になって寝てしまうところも、微笑ましいです。

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『男!あばれはっちゃく』7話より

終に完成させて、後は松越デパートに運んで組み立てるだけ。父ちゃんの作品は松越デパートのショーウインドウに飾られます。大勢の人だかり、長太郎はみゆきちゃん達を連れてディスプレイを見に来ます。満足な出来にご機嫌の松越デパートの宣伝部長が父ちゃんと佐藤部長を褒め、次の仕事もお願いすることになり仕事は大成功。映像を見ると、松越デパートは西武百貨店のようです。

恐らく西武百貨店の渋谷店だと思われます。違ったら、池袋本店かな。

ディスプレイは5月人形。アバンタイトルのロボット姿の長太郎と少しだけ重なって見えました。

追記

グーグルマップの航空写真で確認しましたが、交差点、横断歩道の位置、7話ラストの長太郎の後ろに見える住友銀行(現・三井住友銀行)の位置などから、西武百貨店渋谷店だと分かりました。

今は便利な世の中ですね。

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『男!あばれはっちゃく』7話より

長太郎は父ちゃん達のとこへ行くと、父ちゃんが長太郎に褒美としてNゲージを渡します。喜ぶ長太郎に良かったという佐藤部長。1つだけと不満という長太郎に父ちゃんが調子に乗るなって言って、「今日もあばれるぞ」で締め。

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『男!あばれはっちゃく』7話より

まとめ

先にも書きましたが、今回は4話の大人版。長太郎が試されたのと同じ試しが父ちゃんに降りかかった回でした。自分よりも立場が低い相手を馬鹿にすること、立場をかさに着て相手の大事なものを壊すことの愚かさ、物を壊すことも大変な事だけど、相手の大事にしているもの、信頼を壊すことがいかに大変な事で、それを修復する事が難しいかというのが伝わってきた話でした。話は父ちゃんにとって、良い方向へ転がり、なんにしても、松越デパートの宣伝部長の考えが父ちゃんに近かったという幸運もあり、佐藤部長が素直に自分の非を認めて父ちゃんに謝罪したのが良かったと思います。

松越デパートの宣伝部長の事もありましたが、長太郎の言葉を対等な人間の言葉として受け取り、我が身を振り返った佐藤部長の大人としての懐の大きさも問題の解決に一役かったと思います。これは、初代の正彦の父親、吉井部長も同じで、吉井部長も家の改装を父ちゃんに頼んだ時に父ちゃんと喧嘩をして父ちゃんが会社を辞める話に発展するんですが、長太郎の直訴を聞いて、いったんは追い返すものの長太郎の手紙を読んで、吉井部長は翌日の会社で父ちゃんに謝るんですね。これが初代『俺はあばれはっちゃく』の18話「友情と引っ越しソバ」の話です。この初代18話は、今回、脚本を書いた安藤豊弘さんが初めて、「あばれはっちゃく」に参加した話です。

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安藤さんが正彦の父親、邦彦の父親が一見、意地悪な上司に見えるようでも、相手が子どもでもちゃんと耳を傾け、自分の非を認めて謝罪する人間として書いていることが分かります。子どもを大人と対等な人間として扱う、自分の非を認めるというのは、プライドが高いほど難しいと思いますが、それが出来る正彦の父親と邦彦の父親はすごいと思います。

また、安藤さんは人の心、信頼を破壊することが、どれだけ罪深いかということも、初代26話と今回の7話でも書いていて、これはその後も書かれていたので、安藤さんが大人が子どもと対応する在り方、人の心を傷つける罪深さをテーマにして『あばれはっちゃく』の脚本を書かれていたのではないか、と個人的に感じました。

それにしても、初代長太郎も欲しがりましたが、2代目もNゲージって人気がありますね。

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