柿の葉日記

主にテレビドラマ「あばれはっちゃく」について語る個人ブログです。国際放映、テレビ朝日とは一切関係がありません。

長太郎の見た夢

 長太郎はよく夢を見ていた。そこにいつも登場するのはヒトミちゃんだった。長太郎が最初にヒトミちゃんの夢を見たのは第7話。痴漢が出没しヒトミちゃんの事が心配で心配でしかたがなかった長太郎が見た夢がヒトミちゃんが痴漢に襲われる夢だった。その夢の事を次の日にヒトミちゃんに話すと、

「それで長太郎君、私を助けてくれたんでしょうね」
「え、そ、それは」
「冷たい長太郎君!行きましょ」

 この時の夢はてるほが痴漢に襲われて長太郎がその痴漢を逃がしてしまった後に見たせいか、夢の中で長太郎はヒトミちゃんを助けてあげる事が出来なかったのだ。夢の内容なんて本人にしか分からないし確かめようがないのだから、いくらでも誤魔化す事が出来るのにそれが出来ない長太郎の正直さが面白い。夢の中の出来事で怒るヒトミちゃんも。

 次に長太郎が見た夢は七夕の第23話。この時は長太郎が彦星、ヒトミちゃんが織り姫だった。竹藪の幽霊騒動、竹を入手するためにその幽霊を退治する事になった長太郎が見た夢。

「七夕なんて女の子の祭りだ」

 なんて馬鹿にしていた長太郎が見た夢は、離ればれになった夫婦が一年に一回再会する2人を自分とヒトミちゃんに置き換えた、少しドラマチックな夢だった。第7話が現実的な心配から来た現実の続きからきた夢だったのが、第23話の夢もその現実の出来事からの引き続きであった夢ではあったものの少し本人の妄想が混じってきている。

 最後に長太郎が見た夢は第41話。長太郎が正義の王子様になって悪の王子様の正彦に捕らわれたヒトミ姫を救うというもので、かなり少女漫画的な内容の夢だった。もう、この頃になると完全に妄想の世界になっている。第52話で少女漫画を馬鹿にしていた長太郎がどうやったらそんな夢を見るのだろうか?と思ってしまうのだが、第52話でてるほが勉強の合間に少女漫画を読んでいる事を知っているのを見ると、長太郎はてるほの部屋に入って時々少女漫画を読んでいたりしたのかな?と思ったりする。確認してみたら枕元に漫画雑誌があったので、おそらくこの漫画の影響を受けたものだと思う。馬鹿にしながら長太郎も少女漫画読んでるじゃん。「け、下らねぇ」と言いながらも読んだ後で自分が正義の王子様になった夢を見ていたという事だろうか?この夢もやはりヒトミちゃんに話している。この時も長太郎はヒトミちゃんに文句を言われている。

「私、そういうの許せないわ」
「へ?」
「言っときますけどね、長太郎君。私、例え悪い王子でも正彦君なら喜んでさらわれていくわ」

 それにしてもヒトミちゃんはどうしてこういちいち長太郎の夢に文句をつけるのだろう?ヒトミちゃんは夢の内容を知ってまんざらでもない顔をしているのだが、多分、許せない部分は正彦を悪者にした部分だと思う。友人を悪者扱いするという発想がヒトミちゃんには許せない事だったんじゃないかな、と思う。

 過去に何度か書いたがヒトミちゃんは正義感が強く公平な性格をしている。そんなヒトミちゃんだからこそ、友人を悪者にするというのは許せない事で、例え夢とはいえ長太郎にそうした発想をして欲しくなかったんじゃないかな。ヒトミちゃんは長太郎に誰にでも優しい長太郎でいて欲しかったんだと思ったりする。だから、「私、そういうの許せないわ」という言葉になるんじゃないかなっと思った。

 ヒトミちゃんって最終回でもそうだったけど、意外と長太郎にこうあって欲しいという期待というか理想というものを持っていたんじゃないかと思う。長太郎には自分を助けて欲しいし、友人を悪者にして欲しくないし、泣いてばかりいて欲しくない。どんな時でも元気で優しくて行動力のある長太郎君でいて欲ししい。それがヒトミちゃんが求める長太郎だったような気がする。

「長太郎君は『あばれはっちゃく』でしょ?泣き言言ったり、涙を流すなんて、ちっとも似合わないわ!それに私、そんな『あばれはっちゃく』って大嫌い」

 最終回でヒトミちゃんが長太郎に言った言葉は、一年かけて「俺はあばれはっちゃく」で描かれた長太郎を見ていれば分かる言葉。「あばれはっちゃく」の意味は、冒頭で毎回「手におえない暴れん坊って意味さ」と長太郎が説明していたけれど、長太郎と一緒に過ごしてきたヒトミちゃんとそれを見てきた視聴者達は知っている。「あばれはっちゃく」は単なる暴れん坊ではなく、面倒見がよく、正義感があり、行動力があって、どんな時でも諦めず頑張ってきた、お人よしな人物である事を。

「ありがとう。あたし、こんど北海道へ引っ越しするんです。引っ越しても長太郎くんのことや、みんなのことわすれません。こんど会うときは、おとなになったときだと思いますけど、がんばります」

 これは、原作のヒトミちゃんの最後の言葉。大人になるって遠い未来の事だと思っていたけど今まさにその遠い未来の大人の時なんだなと思う。子供の頃にこの作品に出会えて良かったけれど、こうして大人になってからもう一度出会えて本当に良かったと思う。今年はあと数時間で終わってしまうけれど、原作のヒトミちゃんが言ったように、ドラマの長太郎がヒトミちゃんに約束したように「あばれはっちゃく」の精神でこれからも頑張っていけたらと思う。

 私の干支の寅年ももう終わり。今年もいろんな事があった。明日から始まる新しい年が私に関わり私を励ましてくれた人たちにとってより良い年である事を祈っています。では、よいお年を。