柿の葉日記

主にテレビドラマ「あばれはっちゃく」について語る個人ブログです。国際放映、テレビ朝日とは一切関係がありません。

叩かれて

 智之、新太、長太郎3人の中で一番叩かれていたのは長太郎だった。叩かれていたというより張り倒されていた。主に父ちゃんに叩かれていたけど、時には佐々木先生や母ちゃんにも叩かれていた。勘違いで叩かれた事もあったけど、大体は長太郎の悪さや長太郎の事を思って叩いていた。

 新ちゃんも叩かれていたが大体は新ちゃんが一貫の揚げ足をとってからかった時で、前にも書いたように漫才の突っ込みみたいな叩き方だった。ただ一度だけ、一貫が本気で怒って新ちゃんを張り倒した事があった。それは『気まぐれ本格派』(1977年~1978年)第25話。テストでわざと0点を取った新ちゃんを怒り、新ちゃんがぶっきらぼうに答えた時に張り倒した。

「なんだこれは」
「見ればわかるだろ」
「なんだ!その言い草は!」

 一貫が新ちゃんをこんなふうに叩くのは珍しいし、叩いた後の一貫の動揺した顔は叩いた一貫の心も痛かったんじゃないか?と思うくらい震えていた。新ちゃんは母親の袖子さんにも叩かれた事があって、それは父親の利昌さんが死んで間もなくの頃、新ちゃんがまだ一貫を許してなかった頃。

「家の仕事を手伝うのは当然さ。叔父さんのせいでお父さんが死んだんじゃないか!」

そう言った時だった。普段、穏やかで優しい袖子さんが新ちゃんを叩いたのもこの時だけだった。

新ちゃんは基本的に悪戯をしない子なので、そうした事で叩かれた事は一度もなかったが、利昌さんの死の事、すみれ先生の件で一貫が余計な事をした時等、新ちゃん自身が心の整理がつかずに暴走した時に新ちゃんらしくない行動をした時に、新ちゃんは袖子さんと一貫に叩かれていた。この時の一貫と袖子さんの気持ちは『俺はあばれはっちゃく』(1979年~1980年)第33話で佐々木先生が長太郎を叩いた時の気持ちと同じかもしれない。3つの出来事は細かく見ていけば微妙に違うと思うが、3人の気持ちは近いものがあるのではないか。叩かれた人間も痛いが叩いた方の心も痛いという気持ちを感じてしまう。

『すぐやる一家青春記』(1977年)の智之も叩かれていた。智之を叩くのは殆どが上2人の兄だった。父親の雄作さんは智之を叩いた事はなかったかな。智之は長兄の一郎さんを起こすために蚊帳の中で寝ている一郎さんの所に鶏を放したり、金儲けの為にクラスメイトに手製の旗を押し売りしたり、鶏の事で苦情を出してきた紀子さんのせいで鶏を処分されたのを恨んで紀子さんの家の塀に落書きをしたり、紀子さんにむかって

「大ブス、小ブス、おかちめんこ!」

こんなことを言うので、その度ごとに一郎さんか瞳に叩かれていた。手製の旗を売りつけた時は瞳に叩かれて抗議をするものの、瞳に逆に言い返させられる。

「そんなに叩いたら成績が落ちちゃうよ」
「元々、ドン尻のくせに」

どうやら、智之は学校の成績はあまり良くない様子。

 長太郎も新ちゃんも智之も叩かれてはいたけど、決して一方的な暴力で叩かれていたものではなかった。時に勘違いや悪ふざけで叩かれた事もあったけど、叩いた人間達は叩いたものへの優しさと愛情があったと思う。人の為に叩くのは意外と難しいし勇気もいるものだと私は思う。