柿の葉日記

主にドラマ『あばれはっちゃく』について語る個人ブログです。国際放映、テレビ朝日とは一切関係がありません。

映画 『衝動殺人!息子よ』と『さまよう刃』

 『衝動殺人!息子よ』は1979年に公開された映画です。この作品は実在の話をモデルにした木下恵介監督の作品です。私が吉田友紀さんの過去の出演作を調べていた時に、この監督の事を知りました。吉田さんは1974年の木下恵介アワーの最終作『わが子は他人』や1977年の木下恵介プロダクション企画のドラマ『すぐやる一家青春記』等に出演されていました。
 それから、私は木下監督から発展して高峰秀子さんという女優さんを知り、たまたま出勤の車の中で彼女の事を話していたラジオを聞き、そのラジオで紹介された『高峰秀子の流儀』という本をそのラジオの話を忘れた頃に書店で見かけてその本を買って読み、高峰秀子さんに興味を持ち、彼女の最終作である『衝動殺人!息子よ』を買いました。(この作品にも吉田友紀さんが出演されているらしいのですが、どうも吉田さんが演じたと言われる役を見ても当人ではないような気がします

『衝動殺人!息子よ』はある日突然、未成年に自分の一人息子を無残に殺されてしまった町工場を経営する父親の復讐劇です。犯人は未成年が故に犯した罪とは対照的に軽い刑が科せられます。主人公である父親はこれに納得がいかず、また、同じように理不尽に身内が殺された遺族の人たちの所を訪ねて、法律を変えようと動き出します。復讐劇と書きましたが、それは未成年の犯人だけでなく、未成年を過剰に守る法律、理不尽に家族を殺された遺族を傷つける法律に対しての戦いでした。

 この雲を掴むような途方もない戦いは社会の意識や常識との戦いで、同じように理不尽に家族を奪われた人達を訪ね法律を見直そうと働きかけても全てが主人公と同じ考えではなく「中には選挙に出たいからか?」と言われてしまったり、家族の会を立ち上げても一枚岩とはならず、実質、主人公だけの活動に過ぎなかったりと苦難の道が続きます。テレビや新聞に取り上げてもらってその活動を知ってもらおうとしたり、主人公は経営する町工場を売りその年老いた体を引きずり、息子を失った悲しみに耐えて10年もの長い年月を法律改正の為に戦っていくのです。

 この主人公の活動を取り上げる新聞やテレビ記者には、正義感もありましたが、ある種悲しみをエンターテイナーとして捉えていて、主人公との気持ちとの落差に苛立ちを感じたりしました。父親思いで病気を持つ父親を心配し、工場を継ぐために一生懸命だった息子。主人公がその息子の幼い時を思い出す場面、自分が幼い時に親に早く死なれ、自分は自分の子供にそんな思いだけはさせないと思って生きてきた主人公が今度は親ではなく、息子に先たたれた無念。夫と違って悲しみを我慢して夫を支えてきた妻のついに耐えきれなくなって泣きだした場面を見ていくうちに、私の胸は詰まりました。主人公は志半ばで死んでしまいますが、主人公が蒔いた種は残された人達の手で育てられます。

 法律を改正していくにしても何をどうやっていいのか分からず、いろいろと回り道をして同じような体験をした人達を訪ね回り、その中でそうした法律を改正しようと同じように活動していた大学の先生の存在を知っていく主人公、そんな主人公の姿を見て新聞社や警察にその気持ちを訴える主人公の甥、主人公が訪ねた遺族に「子供が二人いるなら」と失言をしてしまい「子供がもう一人いるからといって、それが慰めになりますか?」と答えた娘を殺された父親の悲しみ。様々な人々の思いや主人公の気持ちや活動が中々実にならないやりきれなさに腹が立ったり、悲しかったり、静かに淡々と表現されていながらも、その怒りや悲しみは重く、深く、切なく残りました。

 私はこの作品を『さまよう刃』(2009年)を見る前に見ていて、題材が重なっていたということもあり、つい比較して『さまよう刃』を見てしまいましたが、『衝動殺人!息子よ』を見た後で『さまよう刃』を見てしまうと、どうしても話が軽く見えてしまうのです。『さまよう刃』も丁寧に作られていて、主人公である父親の悲しみも犯人に対する復讐心も分かるのですが、それでもなんというかあっさりしているように感じてしまいました。『衝動殺人!息子よ』はそれよりも、もうちょっとねちっこいというか泥臭いのです。

 2作品とも未成年にたった一人の子供を殺された父親の復讐劇の話でしたが、その復讐方法は対照的でその印象も作品に対する感想も私の中では対照的でした。どちらにせよ、未成年に対する犯罪やその法律について考えさせられる2作品でした。

木下惠介 DVD-BOX 第6集

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