柿の葉日記

主にテレビドラマ「あばれはっちゃく」について語る個人ブログです。国際放映、テレビ朝日とは一切関係がありません。

智のけじめ

「お父さん、由香ちゃんがどっか行っちゃうって、本当?」
「いや、ほらご主人と一緒に暮らすことになったって言ったろ。それで由香ちゃんもお父さんのとこ行くんじゃないか?」

 朝食の席で智が父親の雄作さんに尋ね、雄作さんはちょっと渋い顔をした後に智に答える。それを聞いた智は物凄くがっかりした表情をし、体の力が抜けご飯をボトっと落とす。智はしばらく何か考え込む。この智の姿を見ると智が由香ちゃんと別れる事をとても残念に感じている事が良く分かる。

 智は由香ちゃんと仲良くなって由香ちゃんのお兄さんのつもりでよく面倒をみていた。由香ちゃんのお父さんだと知らず誘拐犯だと思って福太郎さんを追い払ったことも、傷だらけになって由香ちゃんをいじめっ子たちから守ったこともあった。

 末っ子で母親をあまり知らない智はもしかしたら、相馬家の中で一番お千代さんや由香ちゃんと家族になりたかったのかもしれない。でも、二人が本当の家族と一緒に暮らす事、由香ちゃんが本当のお父さんと暮らすことが一番いいという事も分かっていたのだと思う。

 だから、物凄く残念でがっかりはしたけど、それで喚く事も泣く事もなく智は自分の気持ちよりも由香ちゃんにとって一番いい事を優先したのだと思う。これで、由香ちゃんがお父さんがいないという事で、いじめられる事はないんだと思ったのかもしれない。

『すぐやる一家青春記』では子供の智のエピソードはあまり細かく描かれていないが、そうした小さい隙間で少しだけ語られる。智には智の人生や世界があり、子供ながらも智は智で自分の世界を生きている。ドラマの本流ではないが智にも智のドラマがある。

 智は自分の宝物を渡し由香ちゃんと別れる。まだ、幼い由香ちゃんがいつまで智を覚えていてくれるか分からない。でも、この時もらった智の宝物を見て時々は「ああ、こんなお兄ちゃんがいたな」と思い出してくれたらいいなって思う。