柿の葉日記

主にドラマ『あばれはっちゃく』について語る個人ブログです。国際放映、テレビ朝日とは一切関係がありません。

別れ 二人の反応

 第39話と第56話は共に同じ市川靖氏による脚本である。この2つの話ではヒトミちゃんが転校し長太郎と別れるかもしれない状況が訪れるのだが、この時の二人の反応はそれぞれに違う。第39話でモデルの仕事をする為に撮影現場に来たヒトミちゃんと長太郎。(長太郎はヒトミちゃんに頼まれて来たのだが、大人達に追い出されその後忍び込んでくる。)ここで、二人はヒトミちゃんが芸能活動の為に東京へ転校するかもしれないという話を聞く。この話を知った長太郎は意外な程あっさりと別れを受け入れている。

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「ヒトミちゃんとも、もうお別れだな。転校するんだろ。俺、聞いちゃったんだよ。今やヒトミちゃんは皆のアイドルだもんな。だけどよ、たまには思い出してくれよな。恵子や正彦や公一には俺が言っとくからさ。頑張ってくれよな。俺、応援してっからよ。へへ、それだけが言いたかったんだ。それだけ。じゃあな。ちょっと、キザみたいだけどよぉ。握手」

この間、聞いているヒトミちゃんの心の中には皆との思い出が蘇り、今にも目の前の長太郎にすがりつきたいような目で懇願して、皆と別れたくないと話す。

「長太郎君、わたしを連れて逃げて!」

 長太郎はその願いを聞いてヒトミちゃんを連れて逃げる。第56話ではヒトミちゃんのお父さんの仕事の都合でヒトミちゃんが北海道に転校することになる。佐々木先生からヒトミちゃんの転校を知った時、ヒトミちゃんとの思い出が長太郎の胸に蘇る。長太郎はヒトミちゃんとの別れを激しく拒み、そして、あの手この手で何とかヒトミちゃんの転校を阻止しようとする。その長太郎の行動を知ったヒトミちゃんは、こういうのである。

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「見損なったわ、私。長太郎君ってそんな人だったの。私、長太郎君なら笑ってさよなら言ってくれると思ったのに。私、出来るわ。だってそう教えてくれたのは長太郎君じゃないの。前の私だったら、皆と別れるなんてとても耐えられなかったのかもしれない。でも、そんな時泣いちゃいけいないって、教えてくれたのは長太郎君なのよ。長太郎君はあばれはっちゃくでしょ。泣きごと言ったり、涙流すなんてちっとも似合わないわ。それに私そんなあばれはっちゃくって大嫌い」

 これはヒトミちゃんが、今まで見てきて知っている長太郎が好きだったから、それに反した長太郎の行動が嫌だったのだと思う。きっと、ヒトミちゃんは第17話でのタマエや第41話でノリコちゃんとの別れを見ていて自分も長太郎とそうした別れが出来ると思っていたのかもしれない。だから、悪あがきをした長太郎に少し腹が立ったのだと思う。

 第39話でヒトミちゃんとの別れを受け入れて笑って別れようとした長太郎。転校したくないといったヒトミちゃん。(もっともヒトミちゃんは男の子達にチヤホヤされたのを恵子ちゃん達に非難され仲間外れにされた事で意地になり、モデルの仕事を引き受けたのだから、自分の予期しない方向へ本格的に動き出した事で戸惑ったのかもしれない)第56話で転校を受け入れ笑ってさよならしようとしたヒトミちゃん。別れを受け入れなくて悪あがきをした長太郎。比較すると二人の反応が正反対なのが分かる。

 第39話の時には長太郎にまだ現実感がなかったのかもしれない。だから、あんなかっこいい事を言えて別れを認める事が出来たのかもしれない。第56話では、そうした余裕がないほどに別れが現実で、だからこそみっともなく最後の悪あがきをしたのかもしれない。二人が最後、河原で会話する場面はそんな二人の互いの気持ちが伝わってきて、最後は少し笑えて…そして、別れが切なくて涙が出てくる。
ドラマにはないが原作にこんな台詞がある。

「長太郎君、おれたちは早くでかくなることだよ。(中略)おやじやおふくろのふろくだからな。(中略)おやじの会社なんてもんは、その子どものことなんか考えてなんかくれねえからなあ。子どもってのは、損なもんだよな」

 私事だが父親が転勤族で転校が多かった私にはよく分かる台詞だった。
原作の発表から40年。「俺はあばれはっちゃく」の放送終了から来週で30年、原作の長太郎も、ドラマの長太郎も、それを見て育った私も皆、でかくなった。大人になった。その間にたくさんの別れや出会いがあった。その間に別れを泣いて最後は笑って別れた人の幸せを願えるような強い心を持てただろうか。あの頃の子供を守っていた大人のように強くなっているのだろうか。

 長太郎の偽の手紙をみたヒトミちゃんのお父さんが、自分の娘がこれ程までに別れを惜しんでくれる友人を持った事を喜んでいるかのように言う。

「ヒトミはいい友達を持った」

と。