柿の葉日記

主にテレビドラマ「あばれはっちゃく」について語る個人ブログです。国際放映、テレビ朝日とは一切関係がありません。

後を継いで

 私の中で『あばれはっちゃく』シリーズを比較をしないと以前書きましたが、2代目を再び見て、また3代目もDVD化されるにあたりやはりシリーズ全体を通して語りたくなってきたので、それをやめることにします。ただし、各代を尊重することは忘れないというのだけは決めておきます。

 『男!あばれはっちゃく』のDVDBOX1が今は手元にありません。ですから、まだ見る事が出来きた時の記憶で書いていきますので、細かいところで記憶違いがあることを先に断っておきます。ただ、受け取った感想や印象はそのままです。

 2代目をDVDで再び見ていて最初に思ったのは栗又さんの長太郎が吉田さんの長太郎と比べてみると弾けていないなというものです。栗又さん、単独で見れば充分ガキ大将(体格も含めて)に見えるのですが、吉田さんの長太郎を知っていると大人しいという印象を受けるのです。

 浮草さんのブログで栗又さんが本来は大人しく声も小さい内気な性格だったという事を先に知っていたのもあるかもしれませんが、それを考えると栗又さんはとても頑張って長太郎を演じていたのだろうなと思うのです。吉田さんもかなり無理をさせられて長太郎を演じ「病院といえば内科ではなくて外科でした」と答えていますし、吉田さん、栗又さんに限らず各代の長太郎役の皆さんが苦労したのは作品を見ていればよく分かります。

 そんな栗又さんが長太郎になってから、確か新任の先生をいたずらで驚かすのがクラスの儀式だという邦彦達の言葉にそそのかされて長太郎がいたずらをし、皆との約束で長太郎が邦彦達の事を話さず、一人責任をとってバケツを持って校庭に下校時まで立たされて、下校していく邦彦達に「仲間にしてくれるよな」と寄っていくと冷たくあしらわれてしまい、裏切られた長太郎が自転車で塾にいく邦彦に食って掛かり、自転車を破壊して長太郎一人が悪者になって、寺山先生にも父ちゃんにも否定された長太郎が群馬に帰ろうとする話が第4話にあったと思います。

 みゆきちゃんが長太郎を心配して寺山先生に全てを話し、長太郎を二人で探すとヒッチハイクをして群馬に帰ろうとする長太郎を見つけます。そこで、長太郎と寺山先生は口論になるのですが、その時に寺山先生が長太郎に対して

「このままお前は尻尾を巻いて群馬に逃げ帰るのか!」
(細部の台詞はしっかり覚えていないので正確ではないのですが、内容的には間違っていないと思います。もし、間違っていたら、ごめんなさい)

 この寺山先生の台詞を聞いた時に私はこれは長太郎に対して言った台詞というよりも長太郎を演じていた栗又さんに対して言った台詞だと思ったのです。人気のあった初代吉田さんの跡を継ぎ、吉田さんが作りあげ大きくなった看板をたった10歳で背負わされた栗又さん。本来は声が小さくて大人しい気の優しい栗又さんがそれとは正反対の長太郎を演じるのはかなり辛かったと思います。

 きっと、泣き出したくて逃げ出したいという気持ちになった事もあったかもしれません。でも、子役でもプロとしてお金を貰う以上はそうした泣き言を言わず仕事をしていかなければならない。それを作品の寺山先生の言葉を通して作品を作るスタッフの大人達は栗又さんに伝えたかったのではないか?と私は思うのです。そして、栗又さんはその期待に応え、見事に2代目長太郎を演じきり、2代目をシリーズの中で最長にしたのです。

 そして、吉田さんが演じた長太郎の期間を栗又さんが超え栗又さんの長太郎が定着した頃に、吉田さんが第71話で隼人さん役でゲスト出演します。その時に栗又さんの長太郎が第4話で寺山先生が言った言葉と同じ意味の言葉を今度は隼人さん(吉田さん)に言うのです。この頃は吉田さん自身が子役でも大人の役者でもない微妙な位置にいた時代です。栗又さん、吉田さんは同じ長太郎役を演じましたが、その後の人生はそれぞれに別の人生を選択していきました。(このことに関しては第97話にカヲル役でゲスト出演した島田さんもからめて以前に迷う時期 - 柿の葉日記書いてあります。)

 しかし、共通して言えるのは2人ともに長太郎を立派に演じきりしっかりと責任を果たしたということです。それは、勿論、二人だけでなく後の3代目の荒木さん、4代目の坂詰さん、5代目の酒井さんにも言えるのです。そして、彼らはその後もそれぞれの人生をしっかりと生きています。それは、主役を演じた5人だけではありません。

 以前にも続けるきっかけ - 柿の葉日記で書いてますが、4代目ヒロインの水澤さんが9歳の時に主演を務めた『おかあさんのつうしんぼ』が自分が女優を続けていくきっかけだったといいます。この時に役を演じる難しさ、面白さ、達成感を知ったと語っています。このドラマで厳しくも温かく指導してくれたのが、山際監督と自身のブログで語っています。

 私は作品や長太郎を演じた後の吉田さんや栗又さんの姿や水澤さんのブログを読んで『あばれはっちゃく』のスタッフの大人たち(特に山際監督)は子役の事を真剣に考え、子どもを人格を持つ一人の人間として(下手に子ども扱いしないで)向き合っていたのではないかと思うのです。私はそんな子役に関わった山際監督を始めとする大人達の仕事に対する姿勢を見て『あばれあばれはっちゃく』の子役の人たちはその姿勢を継いでいったのだと思うのです。

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