柿の葉日記

主にドラマ『あばれはっちゃく』について語る個人ブログです。

父ちゃんの親友は詐欺師?

アバンタイトル

今回も空を目指す長太郎。大きなパラソルとアルミの風船で空を飛びます。しかし、これは、授業中に見ていた長太郎の夢。久しぶりの長太郎だけのアバンタイトルだと思いましたが、夢から覚めるといつもの教室で、佐々木先生も、公一も、正彦もヒトミちゃんも明子も小百合も揃ってます。恵子ちゃんだけ姿を確認出来ませんが、位置的に佐々木先生の影になっているようですね。

本編

今回の脚本は田口成光さん、監督は山際永三監督です。

父ちゃんが紙の筒を片手に自転車をこいでいます。ふと、質屋近江屋(おおみや)に大きな風呂敷に包んだ男性の姿を見つけて、父ちゃんの動きが止まります。

もしかして、田中……?な、わけないよな。 

 どうやら、父ちゃんの知り合いに似ているようです。父ちゃんが首を傾げていると、画面奥から長太郎がドンペイと模型飛行機を片手に持ってきて、父ちゃんに声をかけて走り去っていきます。その後、父ちゃんは確信をもって、質屋の前にいた男性を知り間と確信して、にっこりと笑います。

場面は変わって、長太郎は川原で佐々木先生や、ヒトミちゃん、公一、正彦、明子、小百合達が模型飛行機を飛ばしているところにいって、長太郎も持ってきた模型飛行機でその仲間に入ろうとするのですが、一緒に連れてきたドンペイが正彦の模型飛行機を壊してしまいます。もちろん、長太郎はドンペイが壊すのを止めるのですが、阻止することが出来ませんでした。

ヒトミちゃんと公一は、長太郎に正彦に謝るように言いますが、長太郎は自分が壊したのではないと反論してきます。それでも、ヒトミちゃんは、

だけど、ドンペイはあなたの犬でしょ?謝りなさいよ。

 しかし、その謝り方がいい加減なので、ヒトミちゃんはその謝り方に怒ります。そこへ佐々木先生がやってきて、公一がことの経緯を話します。当の模型飛行機を壊された正彦は、

もう、いいよ 。また、新しいの作るから。

 と言って壊された模型飛行機を捨てて走り去っていきます。この時の正彦の気持ちを考えるとどんな気持ちだったのかなって思います。公一は、正彦が模型飛行機を作るまでに1週間もかかったと言っています。それだけ、苦心して作った模型飛行機が見るも無残に壊れてしまったのだから、いつもは長太郎の味方である公一だって、長太郎にヒトミちゃんと一緒に謝るようにと強く言うのです。

しかし、ヒトミちゃんに言われても、公一に言われても、長太郎が悪いのはドンペイで自分は悪くないという態度を変えないままでいるのを見て、正彦は、今、どんなことを言っても無駄だと感じて、諦めてしまったのではないか?と思います。

それでも、一生懸命作った模型飛行機を壊された悔しさがあり、既に壊れてしまったこともあって、模型飛行機を投げ捨てて走り去ってしまったのかな?って思うと、正彦のの長太郎やヒトミちゃん、公一、恵子ちゃん、明子、小百合、佐々木先生の前での冷静な言葉とその場を離れなければ収まらない怒りと悲しさを感じると、正彦のやり切れない気持ちを感じてしまいます。

「長太郎、早く謝れ」

「でも、もう、いいって、言ってるじゃん」

「長太郎!正彦はお前の友達じゃないのか?みんなもよく聞きなさい。いいか?友達というものはな、そうは簡単に出来るものじゃないんだ。正彦に頭下げて謝れ。飛行機もちゃんと修理して返すんだぞ。いいな」 

 正彦が走り去った後、佐々木先生は長太郎も含めて、そこに残ったみんなにも、友達の大切さを語っています。

家に帰り、長太郎が正彦の飛行機を修復していたところに、父ちゃんが質屋で見かけた田中さんを連れて帰宅してきます。田中さんは、父ちゃんの中学生時代の親友。父ちゃんと田中さんは、15年振りの再会です。

父ちゃんと田中さんの関係と、長太郎と正彦の関係が今回の話は少しシンクロしていきます。

田中さんは、父ちゃん曰く、スポーツも勉強も何でも出来た優等生だったとのこと。それを聞いた長太郎は、「正彦みたい」だと納得します。 

さて、父ちゃんは質屋で田中さんが抱えていたものが気になり、その中身を尋ねてあけてみると、立派な壷が出てきます。田中さんは工場を経営しており、新しいシステムをいれるのに、お金がいるから、壷を売りたいといい、それを聞いた長太郎は骨董品が好きな正彦の父親、父ちゃんの上司の部長に売ることを提案します。

夜中、長太郎がトイレに起きると、田中さんが壷の箱を抱えながら、何やら悩んでいる姿を見つけます。この時と、冒頭で質屋で悩んでいる田中さんの姿が、今回の話の事件に発展する一つの振りになっています。

翌日、父ちゃんは会社に壷を持っていき、正彦の父親は壷を見て、値打ちものだと喜んで、300万するものを50万で買える事で大喜びします。

学校へ行った長太郎は、正彦の飛行機の修理のことを聞かれ、昨日は父ちゃんの親友がきたので、まだ、修理が終わってないことを伝えて、走り去っていきます。

家に帰り、飛行機の修理の続きをしている長太郎の所に田中さんが来て、長太郎の飛行機の修理を手伝います。この時に、マッチを取り出して、長太郎に飛行機の修理のコツを教えながら、飛行機を直します。田中さんの器用さに感心する長太郎。直った飛行機を手に持って上に上げて動かしながら、田中さんは羨望の目をして呟きます。

飛行機はいいな。どこにでも自由にいけるんだから。

 この言葉は、その後の田中さんの胸中を知ると、じんわりとしてきます。翌日、直した飛行機を持って学校に行き、正彦に謝って手渡した長太郎に向かって、正彦が怒りを示します。正彦の父親が父ちゃんから買った壷が、元々、壊れていて、それを売りつけた長太郎と父ちゃんに対して、自分の父親を騙してお金を取り、恥をかかせたことを正彦は怒っているのです。

正彦の家は父子家庭です。自分のことでは、怒りを抑えた正彦が父親が騙されたことに関しては、クラスメイトのみんながいる前で、怒りを抑えなかったのは、正彦の父親思いの優しさを感じることが出来ます。正彦の中では、自分のことよりも母親が死んでから男手一つで育ててくれた父親が一番、大事な存在であることが分かるのです。

正彦に自分だけでなく、父ちゃんまで詐欺師扱いされた長太郎は、何がなんだか分からず、父ちゃんを詐欺師扱いした正彦に怒りを示します。長太郎にとっても、父ちゃんは大好きで大事な存在だからです。

長太郎と正彦。それぞれが、大事な父親の名誉の為に喧嘩をしてしまいます。全ては、田中さんの持ってきた壷のせいなのです。

父ちゃんの方でも、会社で正彦の父親から、壷が最近壊れていて、接着剤で直したもので、価値がないと言われたことを説明されて、父ちゃんは田中さんの言っていることと、上司でもある正彦の父親が鑑定を頼んでもらった結果の相違に戸惑います。

家に帰り、母ちゃんとてるほに事情を話し、50万円を直ぐに一括で出せない正彦の父親の足りない額を桜間家の預金から出したことを母ちゃんが言って、困っていると、てるほが今月の生活金の心配をして、壷を売るアイディアを出した長太郎を責めます。でも、その長太郎のアイディアはみんなが賛成したんですけどね。

田中さんの姿が消えて、父ちゃんは田中さんの経営する工場へ行き、田中さんの現在置かれている立場を知ります。今回の件で、長太郎も家族から責められますが、父ちゃんの親友の田中さんが起こした事件なので、やはり父ちゃんも責められます。田中さんを探す手がかりとして、飛行機を直してくれた時に使ったマッチの箱に書かれているお店から、田中さんの居場所を突き止めて、長太郎と父ちゃんは田中さんが戻ってくるのを待ちます。

父ちゃんは、こんな目にあいながらも田中さんを信じています。そんな父ちゃんの気持ちを聞きながら、長太郎はそういうものかな?というような顔をして聞いています。そこへ、田中さんが戻ってきて、父ちゃんは一瞬、笑顔を田中さんに見せるのですが、田中さんの申し訳ないような、悲しいような、なんとも言えない表情を見て、顔が少しだけ険しくなっていきます。父ちゃんと、田中さんの顔を見比べる長太郎。

少しの静かな時間の後、田中さんは、父ちゃんと長太郎の前から走り去っていきます。

追いかける長太郎。ついていく父ちゃん。お寺で水を飲んでいる田中さんを見つけて長太郎がつかみかかってきます。

よくも、父ちゃんを騙したな。俺の父ちゃんはな、今までおじさんが親友だからって、おじさんのことを信じていたんだぞ!この野郎!父ちゃんを裏切りやがって!

そこへ、父ちゃんが追いつき、田中さんに馬乗りになって責めていた長太郎をとめます。

「やめろ!長太郎!」

「父ちゃん!悔しくねぇのかよ!」

「もう、いいんだい」 

 田中さんは、起き上がり土下座して、父ちゃんに謝ります。壷を売る気はなかったことを、結果的に親友の父ちゃんを騙したことを。長太郎はそれを否定しますが、田中さんの壷を割ろうとしたという言葉を聞いて、長太郎は夜に壷を抱えていた田中さんの姿を思い出して、田中さんの言葉を信じます。

田中さんが工場が潰れたことを言わなかったことを父ちゃんは田中さんに言いますが、田中さんがその理由を言うと、父ちゃんは何も言わずに去っていきます。

田中さんの言葉を聞くと、父ちゃんが田中さんを親友だから、田中さんのことが分かると言ったのと同じように、田中さんも父ちゃんのことを理解していることが分かります。

それでも、だからこそ、田中さんのしたことは許せないことなのです。言葉では、田中さんは、

俺が全て悪いんだ 

 と言っても。その後で、田中さんはお金の整理がついて、父ちゃんに謝りにきて、お金を返しにきました。これで、一件落着となります。

26話との整合性がない

今回の話の落ち着き方に私は、首を傾げます。

それは、26話の話があるからです。26話の脚本が安藤豊弘さんで、今回が田口成光さんと脚本家が違うせいもあるかもしれませんが、同一の作品内で同一人物の言動、考えの違いを感じてしまうのは、どうなのだろうか?と思います。ちなみに、監督はどちらも山際監督です。

作品の人物の性格を5人の脚本家がいても、ずれることが殆どない『俺はあばれはっちゃく』だけに、今回の父ちゃんの友情に関しての僅かなズレは、小さいながらも敏感に感じ取れてしまいました。

26話で、長太郎と公一が喧嘩をした時に、父ちゃんが割れたお皿を例えに出して、友情の大切さを長太郎に話しましたが、それと同じように割れた壷と田中さんの気持ちがどうであれ、父ちゃんの信用を失わせた田中さんの裏切りが、割れた壷が完全に元通りにならなくても、友情は元通りになったという結果になったのに整合性を感じないからです。

父ちゃんは公一との友情が割れた皿と同じになる前に仲直りをしろといい、割れてしまうかもしれないところのギリギリのところで、友情を壊さなかった26話の長太郎と公一の時とは違い、今回の父ちゃんと田中さんの場合は、正彦の父親をも巻き込んで、実際の被害と裏切りをしています。

父ちゃんは、田中さんが謝り、お金が戻ってきたことで、元通りと笑っていましたが、本当にそうでしょうか。これで、正彦の父親も納得するのでしょうか。

話のラストでは長太郎が直した正彦の飛行機を持ってきて、みんなで川原で飛ばし、正彦も笑って長太郎を許しているように見えて終わっていますが、正彦の父親の気持ちは最後に出てくることありません。そこで、正彦の態度で推測するしかないのですが、最初に飛行機を壊された正彦の態度から見ても、これまでの正彦という人物を見ても、正彦の寛大な心があって許されたと思うしかないのです。

これは、父ちゃんにも同じことが言えて、親友の田中さんの置かれている状況や気持ちを知った上で、父ちゃんが田中さんがした裏切り行為を許した寛大な気持ちがこの事件を円満に解決したと私は思ってしまいます。

佐々木先生の言うように、友達は簡単には出来ません。信用を築き信頼を得るよりも、一度の裏切りで信頼を失うほうが簡単です。

今回、田中さんはちゃんと謝ってきましたが、それでも、信用を取り戻すことは難しく、相手が中学生時代からの親友の父ちゃんだからこそ、田中さんは許されたのだと思います。これが、巻き込まれて騙された正彦の父親だったら、田中さんのことは許さなかったと思います。

父ちゃんは上司の正彦の父親と常に会社で顔を合わせながら、田中さんのしたことを詫びて、何も知らんずとも自分が持ちかけたことで迷惑をかけたことを必死で謝ったと思うのです。父ちゃんが田中さんを笑って許した裏で、父ちゃんが会社で必死になって田中さんを庇いながら、上司の正彦の父親に詫びたのも、その後お咎めがなく、正彦が長太郎を受け入れたのも、全て父ちゃんの見えない責任感と優しさがあったと私は思います。

父ちゃんも被害者ですが、それでも父ちゃんはそれに対しては何も言わない。それは、きっと、田中さんが父ちゃんにとって、大切な親友にかわりはないからだと思うのです。

親友とは、そんなに簡単に出来ないし、切り捨てることも出来ない、大事な存在なのだということをこの話を通して感じました。