柿の葉日記

主にテレビドラマ「あばれはっちゃく」について語る個人ブログです。国際放映、テレビ朝日とは一切関係がありません。

その姿を見ないでやってくれ

ルパン三世」で私が好きな話が「私が愛したルパン」です。死んだはずのルパンのかつての恋人が生きていて、その秘密を探ったルパンは彼女が父親の手によって蘇らせられた事を知ります。彼女はルパンを殺そうとした父親からルパンを庇って死んだのですが、生き返った彼女に父親はお前はルパンに殺されたと嘘を教えます。彼女の正しい記憶がよみがえった時、彼女は生きている事が難しくなって肉体が朽ちていきます。その時、父親はルパンに頼むのです。父親として、朽ちていく娘の姿を見ないでやってくれ…と。

彼女はルパンを愛していた。愛していた人にその朽ち果てる姿を見せるほど女として切ない事はないのだと、勝手な事をしてきた父親ではあったけれど、父親として娘の女の部分を分かっていたのだと、分からなくても思いやれていたのだと、この時思いました。ラストで、親子の使用人に「花をいっぱい植えてやってくれ、コーネリアが寂しくないようにな」というラストが印象的でした。

大原麗子さんが亡くなった時に見たテレビを見ていた時、その話を思い出しました。亡くなる少し前にインターフォン越しにインタビューを受けていた彼女のインタビューが紹介されていました。大原さんは「ちゃんとした格好が出来ないから、姿はうつさないで」とインタビュアーに答えました。大原さんはギラン・バレー症候群という難病と闘い続けていた方でした。この病気は体を思うように動かす事が難しくなる病気だと知り、恐らくこの時の大原さんはそうした身支度をするのも無理なほど、体が辛かったんじゃないのかなと思ったのです。

大原麗子さんは綺麗な女優さんでした。私の記憶の中では綺麗なままの大原麗子さんが今でもいます。CSで出演されたドラマを見れば綺麗な大原さんに今でも会えます。彼女は女優として、綺麗なままの大原麗子を彼女を知る全ての人に覚えていて欲しかったんだろうと私は思うのです。綺麗な姿を皆の記憶の中に残しながら、彼女は亡くなりました。綺麗な彼女の理想を壊す事なく。失望を与えるくらいなら、その姿を見せない。美しかった時代を留めたまま、去っていく。醜い姿を見せたくないというプライドもあったのかもしれませんが、本当の所はどうだったのか今となっては分かりません。私は大原麗子さんは最後までファンの夢を壊す事のなかった、女優としての誇りをもった女優さんだったのだなと思うのです。綺麗な姿のまま、元気な姿のまま、皆の記憶にある最高の状態を残したまま、表舞台から去る人。それが寂しく感じることもありますが、そこに美学も感じたりします。

ファンが勝手に抱く理想を壊さず保ち続ける。記憶の中の一番いい状態を残したままでいる事は難しい。それを維持できなくなった時、「その姿をみないでやってくれ」という思いを受け止めるのは、その世界で理想と夢と憧れをくれて心を楽しませてくれた人に対してのせめてもの思いやりなどではないか、と私は思うのです。

来月からチャンネルNECO大原麗子さんが出演した「雑居時代」が始まります。