柿の葉日記

主にテレビドラマ「あばれはっちゃく」について語る個人ブログです。国際放映、テレビ朝日とは一切関係がありません。

ガキ大将

『俺はあばれはっちゃく』のイメージと言えば長太郎がとんでもないことをしでかして、父ちゃんが「てめぇの馬鹿さ加減には父ちゃん情けなくて涙出てくらぁ!」と怒り、皆が呆れると言うパターン。桜間家では母ちゃんとてるほが父ちゃんに怒られる長太郎をやれやれというような目で見ていたりする、という印象が強くある。(話の後半にいくと長太郎より父ちゃんの方が家族達からやれやれという感じに見られていたように思うけど…)

 長太郎は父ちゃんに歯向かっていた印象が強かったが、改めてDVDを見てみると意外と長太郎は素直に父ちゃんの言う事を聞いている子だった。特に第1話では大人しく聞いている。佐々木先生に怒れた時も、その怒りが自分に非があるために怒られたと分かればやはりちゃんと素直にそれを聞いていた。(第7話、第34話など)長太郎は大人に逆らっている印象が強いが、実はとても(大人にも自分の心にも)素直な子だったと思う。自分の中の正義に照らし合わせて納得がいかない時、明らかに父ちゃんの勘違いの時は俄然と歯向かっていたが、長太郎は自分が悪いと分かれば素直に反省をする。やたらめったらと自分が正しいと思いこみ闇雲に大人に歯向かったりはしない。

 長太郎が父ちゃんの言う事を聞かず自分の我儘を通したなと思ったのは第4話。これは、明らかに長太郎の方が悪いと思うのだが、長太郎の気持ちとしては約束していた動物園に行けなかったという思いの方が強かったのかもしれない。(急な仕事を入れる吉井部長も吉井部長なのだが、原作にあるこの言葉のように「おやじの会社なんてもんは、その子どものことなんか考えてなんかくれねえからなあ」会社なんてのは家庭のことなんて考えてはくれない)逆に父ちゃんの勘違いで自分が正しいと思った時はしっかりと反論をしていた(第32話)。

 長太郎が単なる乱暴者に見えないのはそうした素直さと自分の中にあるしっかりとした道徳観に基づく正義感があるからで、やたらと自分の意志だけを押し通す我儘な所がなかったからだと思う。また、そのひらめきや行動力、面倒見の良さで損をする事もあったりしたが、それが頼もしさに繋がっていたのだと思う。だからこそ、長太郎はガキ大将だったのだ。ガキ大将は暴力で人を支配する人ではなく、その力で周りを守る人なのだと思う。第5話でてるほが言っているがその通りだと思う。

「本当に強い者はね、むやみに暴力なんか振るわないのよ」

 また、第27話に登場したてるほのスカートを捲った悪ガキの兄のような人もガキ大将に相応しいのだと思う。

 以前にも書いたが『鉄人タイガーセブン』の第6話で吉田友紀さん演じる次郎が主人公の剛に言われる場面があるが、それから6年後に吉田友紀さんが演じた桜間長太郎という人物はこの剛が言うように「本当に強い人」だったのかもしれない。

「本当に強いって人とは正しいと信じることを勇気を持って実行する人の事なんだ。誰にどんな事を言われても絶対にくじけない人の事を言うんだ。分かるか?」

 長太郎は次郎ではない。そして、次郎も長太郎ではない。この2作品は全く関係のない作品なのだが、例によって私は吉田友紀さんが演じているという唯一の共通点だけで、この2作品を結びつけてしまう。「強く生きる」という事は力だけだはなく心もそうでなければ生きられない。そして、それは口で言うほど容易いことではない。だからこそ、そうして生きられる人は本当に強い人なのだと思う。