柿の葉日記

主にテレビドラマ「あばれはっちゃく」について語る個人ブログです。国際放映、テレビ朝日とは一切関係がありません。

冷静で非情な新ちゃん

前回のお父さんっ子 - 柿の葉日記を書いた後にふと思ったのだが、『気まぐれ本格派』の新ちゃんは意外と冷たいのかもしれない。新ちゃんは今まで書いてきたように賢くて優しい物分かりのいい男の子だと思う。でも、新ちゃんは冷静で自分にとって大切な人とそうでない人を明確に区別していたように思う。

第25話ですみれ先生に意地悪したのも自分が一貫の甥らしく野蛮な子だと示すためだとしたら、その為だけにすみれ先生に水を浴びせたとしたら、自分が好きな人の為にそれが出来てしまうとするのなら、新ちゃんはある意味、物凄く非情かもしれない。

また、第33話で一貫の計らいで新ちゃんの実父である今井さんは最初で最後の望みであった自分の息子の新ちゃんとキャッチボールをすることが出来る。最初は、「新太君」と新ちゃんの事を呼び、他所の子として接していた今井さんだったが、最後には「新太」と新ちゃんの事を呼び捨てにした。前の日記にも書いたが、この時、今井さんは一瞬だけ新ちゃんの父親になったのだと思う。

でも、新ちゃんは最後まで今井さんの事を「お父さん」とは呼ばなかった。新ちゃんはその前に袖子さん、楓さん、一貫、小太郎の話を偶然聞いてしまい、今井さんが自分の本当のお父さんだと知っている。でも、決して終ぞ今井さんの事は「お父さん」とは言わなかった。今井さんがふと最後に気が緩んで新ちゃんの事を「新太」と呼んでも、それに流されることなく、最後まで「あの人」で「おじさん」だった。

新ちゃんは情にほだされる事もなく、しかしだからと言って今井さんの願いを拒否することなくキャッチボールをする。野球での活躍を褒められて笑顔で「ありがと、おじさん」と言ってくれる。だけど、「お父さん」とは呼んでくれない。これだけは決して叶えてもらえない、もしかしたら今井さんの最後の望みだったかもしれない。

キャッチボールをすることが出来ても「お父さん」と呼ばれないのは、袖子さんと新ちゃんを捨てた今井さんへの最大の罰なのだろう。正直、あれだけ紳士的で常識的な今井さんが袖子さんと新ちゃんを捨てたのが理解できないが、その裏にはドラマでは描かれなかった別のドラマがあったのだと思う。

新ちゃんは冷静な子だ。自分の実の父親の存在を知っても取りみだす事もなく、今井さんを恨む事もなく、しかし情に流されて今井さんを「お父さん」と呼ぶ事もなかった。新ちゃんは言っている。

「僕のお父さんは死んだお父さん一人なんだから」